帝国を行く
どれ程有効かは分からないが、一応 "お願い" はしておいた。
大勢が集まるイベントなどに此方から出張って行く事は今後も稀だろうし、
それなりの装備を着けてログインすればそれと分かる事はまず無いと思われるが
先程のように 『旅人さんですか?』 などと声を掛けられるのは勘弁して欲しい。
( そもそも私の自意識過剰だろうか? )
人目の無い路地裏でログアウトしながらそんな事を思った。
私はKF では多くのプレイヤーに顔を知られている。
拳神という存在を知らぬプレイヤーは殆どいないと言って良いだろう。
FQ ではそうはなりたくなかった。
とはいってもそれは杞憂に過ぎないのかも知れない。
今後も攻略組のレベルは上がり続け 装備も更に強力な物が出て来るのは確かだ。
レイド等で怪獣レベルのモンスターと戦うようにもなるだろう。
少しばかり対人戦闘の技量に秀でた者など皆の記憶から薄れて行くのではないか。
・・などという淡い期待を抱いたりもする私であった。
アルツでの夜を最後に私はFQにビギナー装備でログインするのを辞めた。
『FQ世界では悪目立ちしたくない』
という私の意図からすればビギナーコスチュームは逆効果だと分ったからだ。
当初から 『此方では武威を誇示したりすまい』 と非武装でいた訳だが、
それが却ってあざとい演出のように見られてしまう場合も有り得ると思い至った。
クレルモン近郊の一件も私の装備がそれなりだったなら話題にならなかったろう。
寧ろ盗賊やPK等の無用なトラブルを招き寄せる要因とすらなっていた訳で。
( もっと早くこうしておけば良かったな )
帝国領の街道を行く私に好奇の目を向ける者は誰もいない。
PK達から奪った物を含め手持ちの品々の大半を市場で処分して金に換えた。
その金で私はコモン(市販)品から適当と思われる物を選び装備を整えたのだ。
今の私の外観はソロの剣士として違和感のないものとなっている。
私は再び "気楽な街道旅" を手に入れたのだった。




