拳神とPK 4
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「はい。 丁度 頂戴しましたよ」
1000ルド金貨を収納した私はそう言うと男に毒消草を渡した。
彼の犠牲者は言われた額を出しても無事に解放されたりしなかっただろうが、
同じ事をしたら私も外道に堕ちてしまう。
何方にしろこの男のFQライフは終わってしまったようなものだ。
PKタグが表示されていては他プレイヤー達の前に出る事はできまい。
「では 私はこれで失礼します」
夢中で毒消草を頬張る男に声を掛ける。
立ち去れ、と指示しても私に背を向けるのは不安だろう。
予定外の現金収入を得た事に免じて私は自分から男に背を向けて歩き出した。
(これで背後から切り掛かって来るようなら今度は容赦しない )
まだ何も無いと思われた旧市街の裏通りにもこんな出来事が起こるのだな。
市場の方角へ戻りながら私はある種の感慨に耽っていた。
やがてこれらの建物の夫々に看板や内装や住民NPC等が設定・配置されて
イベントマップを賑やかに彩るようになっていくのだろう。
その中の何処かに彼等PKは居場所を見つけられるのだろうか?
「・・・・・」
男が無言のまま立ち上がる気配がした。
殺気は消えている。
私と反対側、旧市街の更に辺縁部へ向かって歩き出したようだ。
五感が全て機能していたなら場末の酒場を巡って時を過ごす、という
FQライフもあり得るかもしれない。
人によってはそれは寧ろバトルよりも望ましいコンテンツとなり得るだろう。
・・・いや。
それは正に私自身がFQに求めている事なのだと今気が付いた。
PK達がFQに求めた物が殺人を含む悪事に手を染めることなのと同様に
私はこの世界で嘗ての様に飲み、食らい、触れ合いたいのだと。
街道を歩き、海や山や市街を眺め、モンスターや賊達と闘うことは出来た。
多くのプレイヤーにとってはそれがFQに求める主たる要素なのかもしれない。
オフでは生命活動の一環として飲食し、家族や同僚と共に過ごす健常人には。
"当たり前の事" の中にある大きな価値について理解するのは難しいだろう。
『咎人として討伐される』
”当たり前ではない”事、FKならではの体験、という意味では彼等PKは願っていた物を得たのかもしれないが。
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