忍び寄る拳神 ★
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尾根道を駆け戻った私は山賊達との邂逅場所へ向けて慎重に進んだ。
相手に気付かれてしまっては弓で狙い撃つ事はできない。
私は登り道を尾根へと逃走した訳だがその道を戻れば発見される可能性が高い。
私は道を大きく外れ岩陰を縫って斜面を下った。
賊が同じ場所に留まっているとすれば峠道とは反対側からの接近となるように。
起伏に富む岩山なので身を隠して動くのは難しくなかった。
件の山賊は元の位置に留まっていた。
賊に襲われた時に周辺の凡その地形は把握していた私だが、ほぼ想定した通りに
賊の背後上方に位置取りすることができた。
( 此処からなら大丈夫だな )
眼下に四人目の山賊が見える。
先刻と同様に岩棚の上から麓から続く峠道を見張っている。
復活した私がリベンジの為に再び登って来るのを待ち構えているのだろうか。
頭目を含む仲間三人を失ったというのに殊勝な事だ。
それとも戻るべきアジトなど存在しないのか。
敵役NPCとはそんなものかもしれない。
( 恨みっこはナシで! )
致死性の毒矢で人を射た下手人は成敗されて当然だ。
岩陰に半身を隠したまま下方を見降ろす形で私は弓を構えた。
山賊の頭頂部にポインタが点灯する。
直線距離では50m以上あるがかなり高低差があるのでレンジ内であるようだ。
( レンジ外であってもポインタが収束するまで照準を保ち続けるだけのことだが )
鍛錬を兼ねて三十秒程照準をホールドしてから矢を放った。
山賊の頭部が消滅する。
痛みを感じる暇もなかっただろう。
アクションスペクタクル映画の主人公になったような気分だ。
徒手格闘に明け暮れていた私が山岳地帯でゲリラ戦闘をすることになるとは。
山賊が岩棚の上に倒れる様を見降ろして 私は妙な感慨に捕らわれていた。
( ・・・これが Final Quest か ! )
拳神として感慨に浸る自分をFQプレイヤ―としての私が現実に引き戻した|。
賊の使用していたクロスボウを回収しなければならない。
( アレは役に立つ ! )
私は手にしていた弓を収納すると険しい岩の斜面を駆け降りた。
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