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私を救ったもの

                                   ・



 首から下、体幹・四肢の自由を失った私にも視覚と聴覚は残されていた。

それ程長い時を経ることなく周囲は私にTVやネットの視聴を可能としてくれた。

一方的な情報の受容ではあったがそれは私の存在証明的な作業でもあった。

いや、何を読み何を観るかの選択が唯一私に残された能動性だったと言える。


 ある意味私を救ってくれたのはそれらメディアだったと言えるかもしれない。

無尽蔵の電子コンテンツ無しには私の闘病生活は陰鬱を極めていただろうからだ。


 両親の計らいで放送もネットも電子書籍も望むまま視聴可能な私だったのだが

唯一どうにもならないメディアが存在した。

ゲームである。

家の自室には最新のCS機が一通り揃っていたものだが病室には一基も無かった。

コントローラが操作できないのだからプレイするのが不可能なのは当然だ。

私は『ゲームが遊びたい』 などと表明したりはしなかった。

それは『専用のインタフェイスを開発して欲しい』 と強請るのと同じ事だ。

莫大な費用が掛かるのは疑いない。

現状でも箆棒な金額が費やされているのに。

それに仮にそんな物が出来たとしても健常者と互角に競うのは困難だろう。

・・・そう考えていた私であったのだが。



 ある日、私の主治医と父親が連れ立って私の病室を訪れた。

何事か良くない報せを聞かされるのか。 私は心構えを整えたものだ。

( 余命宣告か ? )

治療経過が芳しくなくて先行きの見通しが厳しくなっているのかもしれない。

元よりこんな状態で長く生きる事は難しいかもしれないとは思っていたのだが。


 ・・いや。

それにしては二人の表情が明るいように感じる。

どう見ても悲報を告げに来たような雰囲気では無い。


「丈、今日は先生からお前に提案があるそうだ」

ベッドサイドに立った父が屈み込むようにして私に囁き掛けて来た。

「悪い話ではないと思う。 よく伺いなさい」


( やはり、余命宣告では無いようだ )

内心でほっとした俺は父の隣に立つ主治医に視線を移した。

『・・どんなお話でしょうか?』

声は出せないので目で語り掛ける。

人と人のコミュニケーションというものは無言でもかなり成り立つものなのだ。


 私のアイコンタクトを受けた主治医は真顔(・・)で私に語り掛けて来た。


「丈君どうだろう、ゲームをやってみないか?」




                                   ・

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