力尽きる拳神 ★
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葛籠折りの尾根道の岩陰から見慣れたマウンドが現れた。
ほんの7~8メートル先だ。 ( 間に合うか? )
各能力が半減したとはいえ疾駆が効いているのでジョギング程度には走れていた。
しかし もう時間が無い。
私は "走り幅跳び" の要領で思い切りジャンプした。
マウンドはもう目の前だ。 なんとか辿り着きたかった。
着地態勢をとろうとしたが体が動かない。
もう残りのHPが5%を切ってしまったようだ。
HPバーの幅がマッチ棒くらい細くなってしまっている。
リアルの私と同様に四肢の自由を失った状態で私は地面に叩き付けられた。
一瞬の疑似痛覚が顔面を始め私の体表前面を奔る。
岩場の尾根道を走って身を投げるなどリアルだったら絶対にお断りする案件だ。
当然若干のダメージは入ってしまうだろう。
そのダメージが僅かに残っていた私のHPを掻き消した。
気が付くと私は最後に訪れた都市の聖堂にいた。
目の前には左手で盾を持ち右手で剣を掲げる女神イスマイラの像が屹立している。
此処が現在私がホームとして登録している復活ポイントだ。
女神像に向かって立っている私は裸だった。
裸、とはいっても腰部は白いスイムスーツ状のもので覆われている。
脱着不能なのでウェアと言えるか疑問だが女子は胸部も被覆される。
戦闘で死亡した者は皆この状態で現れるので格別に周囲の目を惹くことは無い。
( ・・これが復活か )
初めての死亡体験としては中々ユニークだったかもしれない。
「ありがとうございます」
私は女神像に向かって頭を垂れ手を合わせた。
死亡からの復活は "イスマイラの恩恵" という設定になっているらしい。
( さてどうしますかね )
いつまでも裸のままでいる訳には行かない。
チュニックやブーツなどのビギナー装備一式はあの峠に残してきてしまった。
取りに戻るべきだろう。
問題は 『取りに戻れるかどうか』 だが。
聖堂で復活したら"行脚"により最後に訪れたマウンドまでは戻れるという。
・・・"初めて" ついでだ。
この行脚と云うスキルを試してみるべきだろう。
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