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峠にて 4

                                   ・



 ポイズンアラートの点滅と共に私のHPゲージは減り続けていた。

尾根の頂上に到達したものの、既にバーの長さは半分を切っている。

四人目の賊が追撃してくる気配は無かった。

バトル表示は既に消えている。

戦闘領域からの離脱は成功したようだ。

だが私は脚を止めることなく走り続けた。

HPが尽きてしまう前に何とか次のマウンドまで辿り着きたかったのだ。



 "疾駆"の効果は目覚ましい。

初期のスキルレベルでも五輪アスリート並みの走りが可能となる。

しかし持続時間に限りがあり5秒程のインターバルの間は通常の走りに戻る。

今正にそのインターバルの間にいる私はジョギング並みの速度で走っていた。

尾根の上を岬とは反対方向に走りながらログオフマウンドを探す。

路の右前方、尾根の東側にはもう帝国の西南端の港湾都市アルツが見えている。



( ・・もうそろそろだと思うのだが )

本道を選んでいればまだ二か所以上のマウンドを経ねばならなかっただろう。

だが一つ前のマウンドからの距離と目に映る都市(アルツ)までの距離を勘案すれば

最期のマウンドがこの近辺に存在する筈なのだ。

( それとも枝道にはマウンドは存在しないのか ? )


 インターバルが終わった。

”疾駆” で駆ける最期の20秒だ。

脳裏に浮かぶ懸念を振り払って私は全力でダッシュした。

稜線上の路を風のように疾走する。


( ・・・最初からこの速度で走っていれば ! )

山賊達と絡む事もなくとっくに尾根を越えることが出来ていただろうに。

素晴らしいスキルを獲得していながら有効に活用することができなかった。

拳神の称号と初戦闘で魔獣に勝利した事で増長してしまっていた。

『経験値を求めず徒歩旅に専念する』 などと云いながら心に驕りがあった。

それは否めない。

デルモニアの風景を愛でているようでいてこの世界を知ろうとしなかった。

反省しなければならない。




 HPが残り少なくなって来ている。

まだ”疾駆”は効いている筈なのに走るスピードが半分に落ちた。

HP残量が一割を切ったのだ。

5%を切ると動けなくなる。


( ・・このまま終わるのか? )

反省と悔恨の念が湧き上がるが私は走るのを止めない。

()()()()()()()()()()()()()

これまでは真剣に取り組んで来なかった。 "KFの息抜き" くらいに思っていた。

これからは()()()()()全力を尽くす。 搾り尽くす。

他の人々から浅ましく思われても構わない。

力尽きるまで足掻き続けよう。



 1/2となった能力値で私は走り続けた。

KFでも此れ程全力を振り絞った事は絶えて久しい。

路上に倒れる時が迫っても 何故か私は心が晴れていくのを感じていた。



                                   ・

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