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絶望を拒んで

                                   ・



 私の病室は贅沢な個室だった。

裕福な我が両親は 私に高額な障害保険を掛けてくれてもいたのだ。

だが、それらのことは何の慰めにもならなかった。

想像してみて欲しい。

己が体幹と四肢の感覚を、"痛み"さえも奪われたその状態を。

叫ぶ事さえできないのだ。



 勿論、身体的に不可能であっても周囲に当たり散らすようなことはしなかった。

私は自分を理性的な人間であると自負してはいないがそうありたいと思っている。

意思の疎通が可能になってから私が最初に伝えたのは両親への謝罪だった。

彼等の期待を裏切り、大きな負担になってしまった事を詫びた。


 ・・・その辺りの事は我が家の内輪の事なので詳細は省かせて頂く。


 再生医療を含む最先端の治療が直ちに始められた。

そしてそれは現在も継続されている筈だ。 費用の懸念は無いのだという。

医学は日進月歩だ。 今日不可能なことも明日は可能になるかもしれない。

肝心な事は当事者である私自身が希望を失わないことだ。

両親と主治医は私にそう告げて励ましてくれた。

私は生き続ける意志を失わずに済んだ。



 そう。

私はまだ敗北を認めていない。 人生を諦めた訳ではない。

今も闘病の最中にこの身を置いているのだ。

何時の日か

自らの脚で地を踏み締めて立ち、

自らの腕で愛する者を抱き、

自らの声で高らかに勝利を謳うその日まで

闘いは終わらない。



 ・・・・筈だったのだが。

その "勝利" の一部と言って良いものか、類似した状況が意外と早く訪れた。

それがやって来たのは思いも掛けない方面からだった。




                                   ・

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