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拳神の闘い 9

                                   ・



 母指を失ったオーガは暫し残った指で鉄棒を握り直そうと試みていたようだ。

しかしそれをのんびりと見守る余裕は私には無かった。

オーガの機動性と攻撃力を大きく削る事は出来たがまだ勝利は確定していない。

いや、まだ私が優位となったとさえ言えるかどうか。

如何に私が技巧を尽くそうとも素手ではこのオーガに致命傷を与えられない。

そしてゴブリンを一撃で屠れる剣を以てしても腕や脚を切断することは不可能。

背中側からでは首を切断したり頭蓋を割ることも出来ないだろう。

対してオーガは平手の一撃で私を倒せるのだ。


(  ()()()()()()  )


 その思いが形を成した時 既に私は剣を逆手に持ち替えていた。

オーガの頭部方向にジャンプする。 空中で左手でも剣の柄を掴んだ。

眼下でオーガが巨大な鉄棒を手放して立ち上がろうとしている。

だが、これまでのダメージが蓄積しているせいかその動作は緩慢だ。

この強大な敵に挑み散って行った数多の戦士(プレイヤー)達に感謝を。

( オーガが十全なコンディションであったら勝ち目は殆ど無かったろう )


  私はジャンプの頂点で大きく背を反らせ 頭上高く剣を掲げた。

下に向けた切っ先に落下エネルギーの全てを載せてオーガの背中に突き立てる。

垂直に刺さった剣は鍔までオーガの体内に沈み込んだ。

肋骨と肋骨の間に並行に刺さる剣の柄を握った倒立状態から脚を下ろすと

オーガの全身痙攣が足裏に感じられた。

背骨と左側の肩甲骨との間に生えた柄だけが震えている。


( まだ気を抜く訳にはいかないな )


 私はオーガの背に刺さる剣の柄を思い切り肩甲骨側に向かって蹴った。

鈍い感触と共に柄がオーガの体側に向かって傾く。

( 刃先は背骨の前側へと振れることになる )

オーガが今一度幽かに身を震わせた。


「・・・・・」


 私は無言でオーガの背から剣を引き抜くと一振りして付着した血を払った。 

更に別の肋間にも突き立てて止めを刺すべきかもしれないけれど辞めておこう。


( これ以上やると "死体蹴り" になってしまう懸念がある )



 私は投げ捨てた鞘を拾う為にオーガの背中を降りた。




                                   ・

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