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拳神の闘い 3

                                   ・



 ダメージを負ってしまった。

背後から棍棒で打たれた私はHPの二割程を失っていた。

( レベル1からアップしていないので私のHPは 10 しかない )

腰を据えた両手持ちのフルスイングだったらこの程度では済まなかったろう。

( 片手持ちでも剣で切られていたらやはり重傷となったに違いない )


 ゴブリンと言えば最下級魔獣の代名詞的存在だが 全く侮れない。

躯体は小柄だがその存在感は圧倒的だ。 

濃厚な殺意と噎せ返る程の”生き物”としてのリアリティを纏っている。

『初回遭遇時は抜剣できなかった』

と 旅の途上で会った女性剣士が話していた事も頷ける。

動きも素早い。

KFで最上級ファイターやAI アバター達と鍛錬して来た私だから対処可能ではあったものの、初心者が単独で レベリングの対象とするのは難しいだろう。


( やっかいな事になった )


 挑発を受けて剣士に向かったゴブリンの4匹を背後から奇襲できたのだが、

一匹も仕留める事ができなかった。

私に攻撃された4匹は既にターゲットを剣士から私に変更している。

結局私の参戦は 剣士の負担をゴブリン4体分減らしただけに留まっていた。

そして もう "不意打ち" は使えない。



( この4匹を何とかしないといけないな )


 今私を囲むゴブリン達を可及的速やかに倒して剣士の傍に駆け付けたい。

それも可能であるか定かでないが ( 剣士は『素手では無理だ』と言っていた )

それでもせめて自分の傍に引き留めて置かなければ。


( ・・このゴブリンから倒す! )

私は二撃目を撃ち込んで来たゴブリンの棍棒を躱して背後に回り込んだ。

( 他のゴブリンは武器を持っていないので脅威度はかなり落ちる )

「シシッ!」

ゴブリンが振り返るより早く両側のテンプルに左右のフックを連打した。

左右の拳の間でゴブリンの頭部がパンチングボールのように跳ね返る。

棍棒がゴブリンの手から落ちた。

「シシッ!」

動きを止めたゴブリンが倒れる前にもう一度左右のテンプルをフックで連打。

「シッ!!」

更に落ち始めたゴブリンの左テンプルに渾身の左フックを叩き込んだ。

糸の切れた人形のようにゴブリンがその場に崩れ落ちる。

何故か "仕留めた" という確信があった。

だが気は緩めない。

( 倒し切るのに如何程の攻撃が必要か見極める為に追撃は控えておく )

倒したゴブリンが起き上がって来る気配は無かった。



 次の標的を探りながら 私は自分のHPが完全回復しているのに気が付いた。





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