旅人達 2
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「あ ごめんなさい! 私のことなんです!」
我に返った風に女性剣士が私に頭を下げて詫びた。
「私は殆ど観光目的で歩いているようなものなので」
そう言って何度も頭を下げる。
( やはり そうだったのか )
「…私も同じですよ?」
私は最大限のシンパシーを込めて彼女に語り掛けた。
「闘う為ではなく 散策を楽しむために此方に来ているのですから」
女性剣士の表情がパッと明るくなった。
「貴方もそうなんですか!? 私は本当に剣を使うのが下手糞で・・」
一気にそこまで喋ってからまた慌てて両手で口を塞いだ。
「し 失礼しました! 剣が下手なのは私だけです。 VRだとどうにも・・」
私を 自分と同類のバトル音痴と見做した訳ではないと言いたいのだろう。
「いや、良く分かりますよ」
私は低頭する女性剣士を宥める様に声を掛けた。
「モニタを視ながら戦うのと自分自身の身体で闘うのは全く違いますからね!」
だからこそKFは私にとって単なるゲーム以上の物になった訳だが。
「VRだとは分かっていても実際に襲われると身が竦んでしまうんです」
女性剣士は自嘲気味に自分の剣の柄に手を掛けた。
「最初に襲われた時はこの剣を鞘から抜く事さえできませんでした」
魔獣に襲われるのは恐怖でこそあれ 激しい苦痛等は感じなかったらしい。
始めたばかりで知識に乏しい頃は何度も起点のドームに戻されていたそうだ。
ログオフ(オン)マウンドを知ってからは行程を順調に伸ばせているという。
( 私はログオンタイム管理の為にマウンドについては調べて知っていた )
「それでも最近は最初の一匹ならゴブリンを倒せるようになったんですよ!」
ショートソードの鞘を左手で撫でながら女剣士が言った。
表情が明るい。
全くの ”戦闘忌避者” という訳でも無いようだ。
やがて只の街道散策者から一端のゴブリンハンターへ成長するのかもしれない。
「それはなによりですね。 どうぞ頑張ってください」
女性剣士に励ましの言葉を掛けて手を振ると私は再び歩き出した。
そこはかとない微笑ましさを感じさせられるプレイヤーであった。
( 私も初級武器くらいは手に入れておいても良かったかもしれないな )
街道を辿る私の脳裏にそのような考えが過る。
( 次の基点都市に着いたらギルド巡りでもしてみることにしますかね )
広大なデルモニアの風景の中で私は一介の旅人になりきっていた。
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