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拳神の旅

                                   ・



 郊外の丘から王都を見降ろした処で私の Final Quest の初日は終わった。

システムのアラームがアクセスタイムの終了が近い事を告げて来たからである。


 私がKnuckle Fighterに於いて6時間のプレイを許されていた事は以前述べた。

FQのアカウントを得てもKFと併せてのアクセス時間は変わらなかった事も。

当日直ぐにFQにログインした私には15分程の時間しか残されていなかったのだ。

初回ログオンを翌日まで待てばまた違ったスタートを切れたかもしれない。

キャラメイクやチュートリアル確認にもっと時間を掛けることも可能だったろう。

私はそれらを殆ど省略してフィールドに出てしまった訳だが、

『ゲームをプレイする』

という意識に欠けていた私にはそのことを悔やむ意識は無かった。


 ほぼ全てがシビアなバトル要素で占められるKFの頂点に位する私である。

雑魚モンスターや悪役NPCとの闘いで経験値を得ることなど眼中に無かった、

・・と言えば語弊があるだろうか。


『レベルなど上がらなくてもよい』 

と考えていた。

『この世界を自由に歩き回れるだけで十分だ』

と。


 私はデルモニア( Final Quest の舞台世界 )の ”旅人” になった。






 デルモニアの街道は日中は安全だ。 

盗賊や野獣・魔獣の類に襲撃される事は無い。

( 夜間は安全は保障されない。脅威の度合いは夜が更ける程上がる )

戦闘を避けるために私は日照時間帯のみFQにログオンするようにしていた。

日々闘いに明け暮れていた私がそのように振舞うのは可笑しいことだろうか。

KFでの戦いはあくまでも "試合(マッチ)" である。

”殺し合い” ではない。

現実(リアル)とほぼ判別不能なFQの世界で殺意を抱いた襲撃を受けるのは嫌だった、

というのがまずある。

学生時代にそれなりのゲームは遊んだが "血飛沫を浴びる" 類の物は無かった。

そう。

"殺される" のは嫌だったが "殺す" こともそれに劣らず嫌だったのだ。

( FQに於いてヒューマンのグロ表現は強力に抑制されている事は後に知る )






 FQ世界の一日は48分である。

名目上一日は24時間となっているが時計は2秒で一分進む ( 一時間は120秒だ )。

6時丁度に日が昇り、18時に日が沈む。

私は日の出の時刻にFQにログインし日没まで街道を歩いた。

24分の散歩である。


 それは私にとって至福の時間だった。



 MMORPGであるFQのアクセス時間は他プレイヤーと同じ2時間ではあったが、

その2時間をフルに過ごす事は控えるようにした。

私の "ホーム" はあくまでKFである。

FQの世界に長くいると()()が怪しくなってしまうのを懸念したからだ。

日に5回もログオンしたら貴重な "時" の価値が薄れてしまうような気もした。


 デルモニアは実際の地球程広くない。

只管歩き続ければ徒歩で世界を一周することも不可能事ではない。

だが武器も持たず初期装備のまま歩いている私をプレイヤー達は奇異の目で見た。

出発地であった王都から遠く離れる程に彼等の装備は重厚になっていたからだ。


 そして、ソロで街道を行く者を目にする事が少なくなって来た。

多くのプレイヤーがパーティを組んで移動するようになっていたのである。

だが私は気付いていた。


 私同様に、単独で且つ初期装備に近い状態で歩いている者も一定数いることに。






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