拳神の報償
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ステージのタイムアップが迫り拳聖君は軽い会釈と共に去って行った。
彼はKFでのランクアップを諦めて FQ に移るのだという。
拳神に次ぐ高位ランクである拳聖の中でも彼は間違いなく最有望株の一人だろう。
それは私が保証する。
そんな彼がたった一度の対戦で頂点への挑戦を諦めてしまうとは。
最近Cエントリが減って来ている原因は私にもあるのだろうか?
・・それともFQの魅力が余程大きいのか。
KFと同じエキップであるDSで体験可能であるなら一度試してみたいものだ、
・・そう思わないでもなかったが周囲に伝える事はしなかった。
単純にそれを要求する事が憚られたというのが第一の理由だが、
私自身ハンティング系のソフトにそれ程魅力を感じていなかったのが大きい。
集団で巨大なモンスターを討伐するよりも1on1の対人戦が私の性に合っていた。
それに当時はKFの演練に私なりのテーマが浮かんで来ていたこともある。
( これについては後述する )
私はその後も変わらずKFで鍛錬と対戦に邁進した。
一時は殆ど100%に近かった勝率が90%* 程に落ちる(落としたとも言える)と
対戦待ちに並ぶプレイヤーの数は再び増加して来た。
*( ラウンドベースでの話。マッチで負ける事は無かった )
やがてFQからKFに戻って来るプレイヤーもちらほら現れ始めた。
FQに嫌気がさしたという訳ではない。 FQを貶す者は一人も居なかった。
彼等によれば同じVRとは言ってもFQはKFとは全く異なるのだそうだ。
中にはボスモンスターと戦うよりも私と闘う方がアガる、という者も居た。
そういう言葉を聞くたびに私のモチベーションはアップするのだった。
怪我によって多くを失った私だが、怪我によって得たものもある。
"拳神"の座が正にそれだ。
それを手放すつもりは私にはなかった。
最早私が生きて行く主たる理由となっていたと言っても過言ではない。
”執着” と言い変えても良いだろう。
件の拳聖君との対戦から数か月後に催されたKFの世界大会で優勝した筆頭挑戦者と対戦した私は三連勝で彼を下し"拳神"のタイトルを防衛した。
( 挑戦者はFQへと移っていった拳聖君とほぼ同等の強さだった )
拳神のタイトル獲得者には賞品が与えられる。
初回の賞品は ”拳神コスチューム” 。
二度目の時は全てのコスチュームの無償利用権。
三度目の時はKFの永代無料アクセス権だった。
( 代を重ねる毎に内容のグレードはアップしていくように見えた )
そして四度目の"拳神"タイトルを獲った私にTechno Frontier が与えてくれたのは Final Questの無期限無料垢だった。
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