渚にて
・
波音で目が覚めた。
「 ? 」
右頬、のみならず胸・腹・両下肢まで体表の下面が白砂に埋もれている。
「 ! 」
私は全裸だった。
どうやら海難事故の漂着者のように 砂浜に伏倒れていたようだ。
体を起こして周囲を見渡すと自分が長大な砂浜の中程にいることが分かった。
一片のゴミも落ちていない綺麗な砂浜だ。
空は晴れ渡り大気は澄み切っている。
遠くまで見通せるがお馴染みの江の島は見えない。
反対側を眺めても富士山や伊豆半島の影も形も無かった。
此処が湘南ではないのは明らかだ。
九十九里でもないし勿論三浦の金田湾でもない。
私の知っている海岸ではない。
・・いや、それは正確な表現ではないな。
私の知っているリアルの海岸ではない、というのが正しい。
何故かと言えば私はこの海岸の名前を知っているのだから。
水平線と反対側の方向を眺めてみて分かった。
石灰岩の丘陵の上に白亜の教会が聳えている。
コスタ・ブランカ。
そうか。 籤を引き当てたのは私だったのか。
覚醒時より意識が明瞭になり 全てが脳裏に蘇って来た。
此処はデルモニア。
そして今 私がいるのはその中央を占めるブラン大陸の東南縁だ。
・