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89.お客様からの脱却とクエストクリア

「みんな早いな!まだ集合かけてから5分も経ってないやろ」

「ははは。そりゃ農業ギルドはウチのお得意さんだろ。転移クリスタル登録済みだしビューンとひとっ飛びだよ」

「ずるいな〜。やっぱり俺も買うか?」

「それがいいだろうな」


必死に走って向かった俺よりも先に到着していたユサタク達に不平を言うと、苦笑いしながらその理由を語るユサタク。

そんな俺達を尻目に、ゼロはアレンに何やら質問をしている様子。気になった俺は、こちらは戻ってきたゼロに何を質問してたのか尋ねた。


「2人で何話してたん?」

「ソーイチさん。アレンさんに今回の納品分は昨日の(シークレット)クエストの功績になるか確認してました」

「ああ〜。全部合わせて1000個の納品はデカいもんな。それでどうやったん?」


シークレットクエストを受ける前に受注していたクエストが反映されるか、確かに大事な疑問だ。

その当然の疑問を、思いつきもしなかった自分の駄目さにこっそり凹むが、その姿はゼロに見せずに答えがどうだったか聞き出す。


「クランクエストの納品でも反映されるそうなんですが、個人の功績は納品数をクランの人数で割った分になるようです」

「まあ妥当な方法やと思うわ。誰がどうしたとか詳しく宣言するの面倒くさいしな」

「でも今回の納品の1/4はソーイチさんの手柄なのに反映されないのは辛くないですか?」

「その代わり戦闘系や魔物系アイテム納品ではおこぼれ貰う側やしな。ギブ&テイクでええやん」


俺を気遣ってくれてるゼロだが、俺自身は個人よりクラン全体での勝利の方に興味がある。

なので、ゼロにはWinWinの関係だとフォローの言葉を投げかける事で安心させようとする。ただ、


(前から思ってたけどちょっと気遣いが丁寧すぎるな。これは俺がスポット参戦のお客様のせいか?普通のメンバーなら『ありがとう』の一言くらいで終わるやろうし)


少し残念な考えが頭に浮かんでしまい、少しブルーな気分になってしまう。

ただ、向こうもわざとしている訳ではないのもわかっている為、時間をかけて馴染んでいこうと気を取り直す。


(このゲーム(MJO)は1年で8年分遊べるんや。そんだけあったら俺もクランに馴染めるやろ)

そんな自問自答を会話の合間にしていると、ユサタクがこちらへ歩いてきた。


「珍しい組み合わせだな。ゼロが言ってた確認作業の件か?」

「ええ、今回の依頼も反映されるそうです。ただ・・・」

「何か問題があったのか?」

「反映こそされるけど、成果はクランメンバー全員で割った数になるっぽくてな。今回貢献しまくってた俺に対して気にしてるみたいなんや」


「ゼロは真面目だな。そんなのクラン同士の助け合いの範疇だろ。と言うか気遣いが過ぎてるせいかソーイチ若干凹んでるぞ」

「ええ!?そうだったんですか!?」


やはり10年来の親友ともなれば俺のナイーブな心の動きに、すぐ気付くらしい。だがゼロは、今の言葉に驚きのあまり目を見張る。


「出会ってリアルで1日しか経ってないとはいえ、仲間やのに若干のお客様感を感じて寂しくはあったな」

「そうだったんですか」

「まあ、これからなが〜い付き合いになるんやし、ちょっとずつ慣れていってや」


「そうそう。ソーイチに恩義を感じたら気遣いの詰め合わせより酒を1杯奢る方がよっぽど喜ぶから」

「ははは、そうですね。今後の参考にするのでよろしくソ、ソーイチ」

「!!おお、よろしくな」


辿々しくも敬称抜きでの呼びかけに、俺も吃りながら答える。その様子をユサタクや他のメンバー達は生暖かい視線で見守っていた。


「ゼロやるっすね!一番最初に打ち解けるとは思ってなかったっす!」

「おめでとう。でも抜け駆けずるいですよ!リーダー除けば私が一番付き合い長いのに〜」


セキライとモチョが祝福8割嫉妬2割くらいの感情で揶揄ってくる。それに他のメンバーも乗っかり収拾が付かなくなる直前で、ユサタクは大きく手を叩き流れを変える。


「楽しんでる所申し訳ないが、ここギルド内だから。ギルドの人も他の渡り人もニヤニヤして見てるぞ」

「うぉ!マジか」

辺りを見回すとプレイヤー(特に女性)やギルド職員が微笑ましそうに、やり取りを見守っていたようだ。


『ぶっちゃけ、ウチのファンスレで祭りが起きてる』

『特にゼロとソーイチの絡みが大人気っすね』

『『・・・』』

情報化社会の闇か、拡散までされてるのを知り、俺とゼロは恥ずかしさのあまり完全に黙り込んでしまう。ユサタクはそれを敢えて無視し、本来の目的である依頼達成の報告の為受付へ歩いて行った。


「ウチのメンバーがお騒がせしてすいません」

「いや〜、青春ですね〜。こう甘酸っぱい仲間達の一時。眼福でしたよ」

「確かに。リーダーから見てもいい物でしたよ」

「わかったからこれ以上揶揄わんといてくれ・・・」

「そうですよ・・・」


「まあ、続きは今日の宴会時にするとして本題に入りましょうか」

「そうですね。今回は特別クランクエストの納品でしたね。既にカゴは用意しておりますので、種類ごとに規定数の作物を入れて下さい」


ニヤニヤモードからお仕事モードに切り替えたアレンは、テキパキと納品手続きを進めていく。俺達も指示通りに収穫物を間違えないようカゴへ入れていく。

全てを入れ終えたのを確認したアレンは、他の職員に集計を任せた後、事務手続きの準備を始めた。


「間も無く集計は終わると思いますので、先に準備だけしちゃいましょうか」

「信頼してくれるのはええけど、それアリなん?」

「今更誤魔化すとも思えませんしね。なので今の内に2人分のギルドカードのご提出お願いします」

「2人だけでええの?」


「ええ、2名以上の立ち合いで大丈夫なんです」

「ソーイチさんは他クエのクリアに立ち会ってなかったし、知らなくてもしょうがないっすよ」

「色々な所で活躍してましたしね」

「確かにそうやな」


そんな雑談と手続きを進めていた中、集計担当が完了した旨をアレンに報告する。それを聞いたアレンは、ゴールドとユサタクのギルドカードをトレイに乗せて差し出してきた。


「お待たせしました!【作物の納品依頼】の完了です。クリア報酬として、250,000ゴールドと500ECP。更にCGPチケット(農)を10枚お渡し致します」

その言葉と共にクリアを告げるシステムアナウンスが頭に鳴り響いたのだった。


tips

クランクエストの手続き

クランメンバー2人以上で受注及び納品が可能。

報酬の受け渡し方法はクエスト受注時に、手渡し以外に、【超大型保管庫】と【クラン貯金箱】を所持していればそこへ直接転送する事も出来る。

引き続き繁忙期に為、次回も4日後の5月21日(火)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

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