82.解放クエストの説明①魔素濃度の低下
一部、説明の描写を変更しました。
「さて、これから町解放についての説明を始めていこうと思います」
「「「よろしくお願いします」」」
説明用の部屋へ到着し、全員が着席したのを確認した後、フレンが説明開始の口上を述べる。
「既にこの世界の現状についてお話ししたと思いますが、覚えていらっしゃいますでしょうか?」
「この町は以前の大戦から人類が生き残るために、元の世界から独立した次元に隔離されてるんやっけ?」
「ええ。特別な転送方法を使用しないと来れないように隔離してますね」
「後は、町の結界魔道具の維持を長期間行えるように、元の世界の町の住民達は石化した上で、町を真空化して魔素の流入を防いでるって事であってるやんな?」
「その通りです。後はあちらの世界は魔素濃度が非常に高く、出現する魔物も強敵なのも重要ポイントですね」
町を解放していくにあたって、重要なポイントを再確認していく。俺達がしっかり理解しているのを確認したフレンは、いよいよ具体的な町解放について話し始めた。
「町を解放する際に必要なのは、町の機能を回復させる為の魔道具の準備・復興の為の大量の素材や薬・そして現地の魔素濃度を低下させて、出現する魔物の強さを抑えるの合計3点ですね」
「素材と魔道具はわかるんやけど、魔素濃度下げるってのは現地で魔物を倒しまくるって事でええの?」
「部分的には合っているのですが、高濃度の魔素から生まれた魔物と戦うのは、渡り人様ではまだ厳しいかと思います」
「まだここに来て4日目やしな〜」
「ただ魔素濃度の低下作業は解放計画の中でも最終段階なので、皆様が充分な戦力に育っている可能性もあります」
「それなら・・・」
「でも、今回は別のアプローチで行こうと考えてます」
「別のアプローチ?」
「はい。それはノアのフィールドにあちら側の魔素を流し込むという方法です」
「ええ!?そんな事が出来るんですか?」
フレンの言う方法を聞きモチョが驚きの声をあげる。
「ノアと他の町を繋ぐ転移ゲートがあるのですが、それを少しだけ開放した上で、空気を操る魔道具で魔素をこちらへ流し込むんですよ」
「へえ〜、そんな魔道具があるんですね」
「ちなみに町の中に魔素が入り込まないのも、規模は違いますが同じ魔道具で空気を制御しているからなんですよ」
「なるほどな〜。それで魔素をこっちに流し込んで向こうの魔素濃度を低下させるのが目的なんやな」
「その通りです!」
「ちょっと待ってくれ。その手法には2つの問題点があると思うんだが」
話を聞いていたユサタクが、この手法に待ったをかける。
「それは魔素濃度の低下は新たに出現する魔物の強さにしか影響しない点と、ノア周辺の魔物の強さが上昇する点ですよね」
「やはり、気づいてましたか」
「もちろんですよ。こっちは生まれた頃から魔素のある世界で過ごしてますからね」
「ははは、どうやら釈迦に説法だったみたいですね」
己の懸念についてとっくの昔に把握していたフレンを見て、恥ずかしそうに後頭部を掻くユサタク。
「2つの問題は把握してるって話やけど、それについての解決法は準備してるん?」
「完璧とは言えないかもしれませんが、対策は既に用意しております。」
「その対策って?」
「まず1つ目の問題点である魔素濃度を下げても、既に出現している魔物は強さは変わらない点から説明します。と言ってもやり方は簡単なんですけどね」
「そうなん?」
「ええ、ゲートを開放している間、向こうの町付近で普段から行なっている間引き業務を行うだけですから」
「ははは、確かに簡単やな。強い魔物が存在するのが問題なんやったら倒す。シンプルな方法や」
シンプル過ぎる解決法に思わず笑ってしまう。
「うん?間引き業務って初めて聞いたと思うんだが、そんなのやってたんですか?」
「ええ。少しでも向こうの世界の魔素濃度を低下させる為に、当ギルドのトップクランが交代で魔物の間引きを行っているんですよ」
「なるほど。いきなり話の腰を折ってすまなかった。続きをよろしく頼む」
「わかりました。ノアの町へ魔素を送りつつ、向こう側で間引き作業を繰り返すことで、魔素濃度を低下させて、渡り人の方達でも対応できるくらいに魔物の強さを抑える事が出来るでしょう」
「なるほど。でもそれって完璧に出来るもんなん?」
「正直に申しますと、完璧な間引きは無理だと思います。主要な道路の周辺の間引きは完璧に行えると思いますが、深い森の中や山中などを含めた奥地は流石に無理でしょう」
「そりゃそうやな」
広大な土地の中から、一匹残らず退治する大変さを思い浮かべため息を吐いてしまう。
「ただ町解放後も間引き担当が周辺を捜索するので、そう言うイレギュラーには滅多に出会わないとは思いますよ」
「それはありがたいな」
『これってVRMMO小説にありがちな、ユニークモンスター的なあれかな』
『ああ〜。通常フィールドにいる激強個体、ありがちな設定だけどロマンだよな』
『せやな。こういうロマン系なモンスターが出るのにちゃんと設定が作られてんの、俺好みやわ』
『ははは、それはよかった』
フレンの話を【メモ】しながらも、その内容についての考察をクランチャットで共有していく。
「以上が1つ目の問題点に対する対処法になります。何か質問はありますか?」
「その間引きってやっぱり俺達には回って来ないっすよね」
「そうですね。向こうの魔素濃度がある程度下がってきたタイミングならお願いする事はあるかもしれませんが、当分の間はこちらで行う予定です」
「それは残念っすね」
自分達が弱いと改めて知り、残念がるセキライ。その様子を見たフレンはフォローするように新たな情報を話す。
「ただ、渡り人の方達にも活躍の場はちゃんとご用意しておりますので、気になさらないでください」
「活躍の場?」
「ええ。それが2つ目の問題点、ノア周辺の魔物の強さ上昇についての対抗策です」
tips
間引き作業隊
A〜Sランク冒険者で構成された、冒険者ギルドが誇る最強部隊。
町の結界の動作確認と補修、さらには周辺の魔物の間引きなど様々な業務を各町ごとに日替わりで行っている。
次回は4月29日(月)午前6時に更新予定です。
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