81.交流パーティーとこの日最後の予定
「へえ!フェイクグラスのドロップが種なんは本で見たけど、マジで種類はランダムなんやな」
「ええ、ソーイチさんが依頼書作成でのAGP稼ぎが広がる前は、みんなで沢山倒したんだべ」
「はえ〜。それって店売り以外の種も出るん?」
「ミルキーアップルって種が一粒だけ出たけど、レベルが足りないのか種蒔き出来なかったよ!」
「レベルか設備が必要なんやね。でも、【農家】になったら種増やせるスキルあるっぽいし、レア種を単発で終わらんかった分良かったんちゃう?」
「本当だべか!?こりゃあレベル上げいっぱいしなきゃだべな」
「ああ、俺達の農地管理含めていっぱい頑張ってちょーだい」
テレビやクランメンバー以外での他プレイヤーとの初交流に、ドンドンと話が盛り上がる。
特にフィールドでの収集も経験している田吾作達の情報は、引きこもっている俺には大きな実りのある雑談となっている。
「それにしても、いっぱい情報教えてくれたけど良かったの?」
「そーだよね。明日には売り出す情報なんでしょ?」
「そりゃ良いに決まってるやろ。そこ隠すとか何の為の同盟やって話やからな」
「ソーイチの言う通りだ。俺達の躍進には、農協の協力も必要不可欠だから気にしないでくれ」
「そう言ってくれると嬉しいべ」
どこか引け目を感じているように見える農協のメンバー達だがパーティーで親交を深めていく内に、多少は打ち解けることが出来てきた。
「宴もたけなわではあるが、そろそろ時間なんでパーティーを終了しようと思う」
「「「ええ〜〜」」」
ユサタクの閉会宣言に両ギルドから不平の声が聞こえてくる。
「大変仲良くなれたみたいで喜ばしいが、向こうも待ってるしな。今後もパーティーはいくらでも出来るし終了だ。という訳で開会宣言は俺だったし、閉会は田吾作頼んだ」
「オ、オラだべか!?」
ユサタクからの急な無茶振りに狼狽える田吾作。しかし狼狽えても仕方が無いと悟ったのか、緊張しながらも閉会の挨拶を始める。
「今回はオラ達【MJO農業協同組合】と同盟を組んでくれてありがとだべ。パーティーで新たなフレンドも増えて最高の時間だったべよ。両クランの親交と躍進が続いていくよう頑張っていくべ」
そして最後に深呼吸を1つ行い、
「改めて、歓迎パーティーを開いてくれてありがとうございましたべ!」
田吾作は全員に感謝の言葉を伝える。俺達もその言葉に対し、拍手で応えたのだった。
「じゃあ、これから俺達は冒険者ギルドに行くが農地の設定で同盟ギルドも使用可能に設定しておいてくれ」
「「「はい」」」
ユサタクの指示に従いメンバー全員が農地の設定を変更する。
「農協のみんな、これで俺らの農地を耕す事が出来るように設定したから、負担にならないレベルで使っていってくれ」
「お気遣いありがとうだべ。これで見習いを卒業出来そうだべな。」
「「うんうん」」
嬉しそうに語り合う農協のメンバー達。
「よし。これから冒険者ギルドに転移する。転移クリスタル持ちは前に出て、残りは彼等とパーティを組んでくれ」
「オッケー。ユサタクは第1パーティで行ってもらうとして、俺は誰と組もうかな」
「それなら私と行きましょう」
転移クリスタルを使用する為に、加入するパーティを悩んでいると、アマネが誘ってくる。
「おお。アマネも転移出来るんや?」
「もちろんです。これがあれば露店の在庫が切れてもすぐに農地に補充できますしね」
「なるほどな〜」
俺はアマネの言葉に納得しつつ、パーティ申請を送り了承される。パーティメンバーを見るとどうやらサポートチームで固まっているようだった。
「俺よく考えたら悩む意味なかったな」
「まあ、第1と第2は固定パーティですからね。残りはサポート2班ですし、ソーイチさんと交流のあるアマネさんや私のパーティになりますよ」
俺の呟きに笑いながら答えるモチョ。少しの雑談をしている間に全員がパーティを組み終えたので、ユサタクは出発の号令をかける。
「よし!準備も出来たしこれより冒険者ギルドへ向かう。フレンから色々情報が聞けるだろうし、ソーイチは書記係を頼む」
「任せていて。しっかり書き上げた上で、人数分コピーもするから」
「頼んだ。では出発する!」
4人が転移クリスタルを使用する。俺はシステムの同伴するかの問いに、はいを選択すると既に見慣れた光が俺達を包み込む。数秒瞑った目を開くと、冒険者ギルドのカウンター前に全員が転移していた。
「【ユーザータクティクス】の皆様、お待ちしておりました。本日、諸々の説明を担当しますフレンです。改めてよろしくお願いします」
既に準備万端で待ち構えていたフレンは、俺達の顔を一通り見回した後に挨拶を行う。
「閉館後にお時間を作って下さり、ありがとうございます。おかげでクランメンバー全員が参加する事が出来ました」
「それなら良かったです。それじゃあ説明の為にいつもの部屋へまずは移動しましょうか」
「ですね」
そう言って先導するフレンに従い、俺達は既に慣れ親しんだ小部屋へと向かっていった。
tips
【MJO農業協同組合】について
メンバーは事前にチームを組んでいたのではなく、全員が農業系雑談スレッドの住人である。
彼等はスローライフを目指す為にこのゲームに参加した為、賞金レースへの興味は薄い。
体調を崩してしまったので、次回は少し遠目に4月27日(土)午前6時に更新予定です。
ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。