80.【MJO農業協同組合】
「初めまして、【MJO農業協同組合】クランリーダーの田吾作だべ。よろしくだべ」
麦わら帽子を被った小麦色の肌の男性プレイヤーが、農民ロールなのか個性的な語尾で自己紹介と挨拶をする。
「同じ農家仲間のソーイチや。よろしくな」
「おお!ソーイチさんだべ!【農家】への転職おめでとうだべ!」
「わぁ!初めて生で見た!」
挨拶を返すと、興奮した様子で田吾作や他のメンバーが詰め寄ってきた。
「凄い歓迎っぷりやな!?」
「そりゃあオラ達農民プレイヤーの憧れだべ!」
「そうそう!それに僕たち物部先生の大ファンだもんね」
「そーだもんね!ヤンヤン」
田吾作の後からヒョッコリと同じ顔の2人が現れて田吾作に同調する。
「えっと、2人は?」
「僕の名前はヤンヤンだよ!」
「ボクの名前はマーボーだよ。ヤンヤンとは双子なんだ!」
そう言って何やらポーズを決める双子達。その面白そうなキャラクターにネタ集めの為に、色々と話を聞こうかとしたタイミングで、
「ストップ!1時間半しかないから、自己紹介はひとまず終了で頼む」
「ああ、時間も詰まってるん忘れてたわ」
「オラたちもソーイチさんに会えて興奮し過ぎちゃったべ」
「「ごめんなさい」」」
自分達だけで盛り上がっていた面々がそれぞれ謝罪をする。
「すまん、こっちも言い過ぎたな。それは兎も角、これより【MJO農業協同組合】との同盟理由について発表する」
「そういえば、いきなり同盟って言われたけど理由聞いてなかったっすね」
「というかリーダーって基本相談無しで決めすぎなんですよね〜」
「その点はすまなかった。どうも発表はサプライズでしたくなるんだよな。って話外れたが理由は彼等は俺の知る限り唯一のメインジョブに【見習い農家】を選択したプレイヤー達だからだ」
「まあ、クラン名的にそうなんでしょうけど、それだけなんですか?って農協のみなさんすいません」
「いや、オラ達もそこは不思議に思ってたんで大丈夫だべ」
「そーだよね。ウチってレベルも低いし、貧乏でクラン設立も出来ないくらいだったのに、MJOでトップのクランと同盟って聞いてビックリしたもん」
「ね〜。驚いたよね」
簡潔すぎるユサタクの説明にクラン内外から疑問が湧き出る。
「いや、農家含めて生産系クランとは絶対同盟を組みたいと思ってたんだ。それはMJOを勝ち抜く為に必要不可欠だしな」
「復興がテーマやしな、今回の同盟には俺も賛成や」
「だろ?しかも明日には農民系情報を売るんだが、その時農民プレイヤーの価値は大幅に上がるはずなんだ」
「オ、オラ達の価値が上がる!?」
ユサタクの持論を聞き、田吾作が驚きの声を上げる。
「ああ。情報販売後、購入したプレイヤーは称号獲得の為にも農地を買い漁る動きになる。その時に絶対出てくるのが農地管理問題だ」
「ああ〜。出てきそうっていうかウチも一気に100地区も購入したせいで、その問題出る直前っぽいしな」
「上位クランは戦闘などに多くのリソースを費やしてるから管理や維持は難しい。そして農地を管理せずに放置するのは、土地が勿体無いだけじゃなくNPCの好感度にも関わってくると思う」
「ああ、復興の鍵の一つである農地を作物作りもせずに放置とか住民はブチギレ案件っぽいしな」
「だろ?だから【MJO農業協同組合】と同盟を組む事で、ウチは農地の管理の一部を委託出来るし、更に他クランに農民プレイヤーが流出するのを防げる。一方の農協側は経験値稼ぎの場所の提供と資金援助やソーイチからの情報提供のメリットがあるんだ」
「こうして聞くとお互いにWin-Winって思えるな」
「そーだね。僕たち農民プレイヤーは農地ないと何も出来ないし、実際この数日何も出来なかったもんね」
「そうだよね〜」
ユサタクの説得に俺や双子など両クランから納得の声が上がってくる。
「以上が同盟をする理由になるが、納得して貰えただろうか?」
「俺らはオッケーやで」
「オラ達ももちろん異存は無いべ」
「そう言ってくれると助かる。それじゃあ田吾作さん、これから同盟クランの申請を送るから了承してくれないか」
「わかったべ」
こうして2人がシステムを操作する動作を行うと、
『【MJO農業協同組合】とクラン同盟が成立しました』
との、アナウンスが頭の中に鳴り響く。
「じゃあ無事に組めたみたいだな。農協の皆さん、これからもよろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくだべ」
その言葉と共にユサタクと田吾作は固い握手を交わした。俺達もそれに倣い農協のメンバー達と握手を交わしていく。
「お堅い話はこれくらいにして、これから同盟クラン内外の歓迎立食パーティーを行う。見ての通り料理はテーブルいっぱいにあるから、たっぷり食べていってくれ」
「わーい、見た時から気になってたんだよね〜」
「僕も〜」
「2人とも、いきなり料理にかぶりつくのは失礼だべ!」
双子達が料理に向かって突撃していくのを、田吾作が慌てて止めようとする。
俺達はその光景を微笑ましく眺めながらも、他のメンバーたちとジュース片手に農協のメンバーとの自己紹介や雑談など交流を深めていった。
tips
人物紹介【MJO農業協同組合】
田吾作
【MJO農業協同組合】のクランリーダー。
農家系雑談スレで集まった本チームの代表を決める際、書き込みが誰よりも農民っぽいという理由でリーダーに決まる。
「〜だべ」の話し方はロールプレイなので、本当に驚いた時は素の言動になってしまう。
ヤンヤン&マーボー
【MJO農業協同組合】のムード&トラブルメイカー
現実でも双子である。
喋り方が幼い感じであるが、当ゲームの参加条件が18歳以上なので、イメージより年齢が上だったりする。
次回は4月23日(火)午前6時に更新予定です。
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今後とも本作をよろしくお願いします。