79.紹介する者とされる者
「おお!?もう皆おるんやな」
「まあ、冒険者ギルドとここは全ての転移クリスタルに登録済みですからね〜」
農地へ到着すると、すでに転移で使用したクランメンバー全員が揃っていた。
「先程プレイヤークランを紹介するとコールで話したと思うが、その前に教会のシスターにみんなを紹介したいとソーイチが言ってな。バタバタして済まないが、収穫可能な農地を持つものは交換用の作物を持ってこっちに集まってくれ」
「了解っす」
ユサタクの呼び掛けに対して、既に収穫を進めていたのかタイムラグなく全員が集まる。
「じゃあ、私達は畑仕事とかしていますね」
「ああ、後歓迎用に簡単な料理も頼む」
「わかりました!」
本日転職したばかりのモチョ含めたメンバーは、他のメンバーの畑仕事や、紹介されるクランに対しての歓迎料理の準備に移っていった。
「教会に登録してるのリーダーだけですし、徒歩ですかね」
「ああ、紹介もしてないのに礼拝堂に転移じゃ失礼かもしれないからな」
「そやな。この後予定も詰まってるし早速行こか」
俺の呼び掛けがきっかけでとなり、教会へ向け歩き出す。その道中、俺が新たに手に入れたジョブの詳細や、他メンバーのフィールド狩りの話をしているとあっという間に教会に辿り着いた。
そして、すれ違う孤児やシスター達に挨拶をしながらクリスの待つ礼拝堂の扉を開く。
「あら、皆さん思ったより早かったんですね」
「ええ。みんな収穫を進めていたみたいなので、早速来ちゃいました」
そう言ってユサタクが頭を下げると、少し遅れてメンバー全員も頭を下げる。
「ご丁寧にありがとうございます。今回は皆様の農作物と聖水の交換で良かったかしら?」
「ええ、そのつもりなんですが、15人分150本って大丈夫なんですか?」
「ええ、前もって準備してたから大丈夫ですよ。ただ、瓶も限りがあるので、使い終わった瓶は返却お願いしますね」
「ああ、そうですね。今ある分だけでもお返しします。」
ユサタクはモチョが料理などで使用した分の瓶をクリスに差し出した。
「15本確かに受け取りました。じゃあ、聖水を持ってくるので手伝っていただけるかしら?」
「じゃあ俺が行くっす」
「僕も手伝います」
150本もの瓶を運ぶお手伝いにセキライ・ゼロコンビが率先して手を挙げ、先導するクリスの後をついていった。数分後、大きな木箱をクリスは1箱、残り2名は2箱ずつ持って戻ってきた。
「お客様なのに多めに持ってくれてありがとうございます」
「いえ、俺達は冒険者なんでどんどん頼ってください」
「そうそう、力仕事なら任せて欲しいっす」
お礼を言うクリスに対して、力こぶを見せながら大丈夫とアピールする2人。
「シスターや2人ともありがとう。これが今回交換する分です」
「あら、準備万端ですね」
「みんなに仕事をして貰ってるのに、ボケ〜と待ってるのも失礼ですからね」
待ち時間の間に用意した交換用の野菜を見せる。種類毎に分けられた箱をクリスがチェックしていく間に、こちらも聖水の数を数えていく。
「うん、15名分の野菜確認終わりました。どれも新鮮で良い出来ですね」
「ありがとうございます。こちらも聖水の集計終わりました。今日の作物はここにいるメンバーが作った物なんですよ」
互いに交換する物を確認し終えた後、ユサタクはクリスにメンバー達を紹介していく。各々が自己紹介をしていく様子をクリスは微笑ましく見つめていた。
「皆さん、ご丁寧に挨拶ありがとうございます。改めて私は当教会のシスターをしておりますクリスと申します。これからも色々とよろしくお願いしますね」
「これからもお世話になります。また明日には、残りのメンバーもご挨拶に伺う予定なのでよろしくお願いします」
「ええ、楽しみに待ってますね」
こうして予定通り、クランメンバーを紹介し終えた俺達は、手を軽く振るクリスを背に自分達の農地へ転移していく。
転移した後、目の前には長机にモチョお手製の沢山の料理と飲み物が並んでいた。
「野外用の机買ったんやね」
「ええ、シートを敷いての宴会スタイルも良いですけど、時間が限られてるなら立食スタイルの方が良いと思ったんですよ!」
俺の独り言に反応したのは、料理を作り終えたモチョだった。確かに冒険者ギルドとの約束の時間まで、後1時間半くらいしか無いし、延々と続く地べたスタイルよりかは都合が良く感じた。
「そうや。聖水はギルドの、倉庫に全部入れてるから、また色んな料理よろしく頼むで」
「勿論です!みんなの分だけじゃなく、明日の情報売却の時にも売り出す予定ですしね」
そういうとモチョは聖水などの在庫確認の為、倉庫の方へ歩いていった。残った俺達は暇つぶしも兼ねて畑仕事を進めている中、
《【円卓の騎士】様がプレイヤークランで初めて特別クランクエストをクリアいたしました》
というライバルクランのワールドアナウンスが流れた。
「「「あぁぁ!!!??」」」
「マジか!?」
「絶対ウチらが一番乗りだと思ったのに〜。悔しいっす!」
「まあ、農業系は最低1日かかりますし、【円卓の騎士】は、騎士系ジョブの集まりですし特別クランクエストを発見出来たのでしょう」
突如流れたアナウンスに、悔しがる者や分析する者など反応が分かれる中、ユサタクは大きく手を叩き混乱をおさめる。
「驚く気持ちはわかるがみんな落ち着いてくれ。PP獲得出来なかったのは残念だが、どうせ今日中にクリア出来なさそうだったし気にするな」
「確かにそうかもですけど、悔しいものは悔しいんですよ」
「確かにそうだな。だが、お客さんの前だ。頼むから落ち着いてくれ」
その言葉を聞き、視線をユサタクの後ろに移すと気不味そうに佇む10人ほどの集団が立ち尽くしていた。
「せっかく来てくれたのに申し訳ない」
「あはは、なんかすごく悪いタイミングで来ちゃったみたいでごめんね」
「いやいやいや!悪いのはこっちやからマジで気にせんといて!?」
気不味い空気がお互いの間に流れる。その空気を変える為、モチョが俺達の共通の疑問をユサタクに投げかけた。
「そ、それより紹介したいクランってこの方達なんですよね?彼らってどんなプレイヤークランなんですか?」
「ああ、彼らは【MJO農業協同組合】。ウチの同盟クラン予定のメンバー達だ」
そう言って、ユサタクは相手クランを俺達に紹介していった。
tips
【円卓の騎士】がクリアした特別クランクエスト
1パーティ中5名以上同じ武器で統一した状態で、フィールドのモンスターを200匹ずつ退治をする。
小剣 0/200
剣 0/200
大剣 0/200
レイピア 0/200
槍 0/200
メイス 0/200
素手 0/200
次回は4月21日(日)午前6時に更新予定です。
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