表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/160

76.帰宅と新作料理

「はい、完了届」

「ありがとう。じゃあこれを持っていく前に・・・」

「ん?どうしたんだい?」

完了届を受け取りながら俺はお別れの前に、


「この世界に来てからの4日間、色々教えてくれてありがとう!ホンマに助かったわ」

「こっちも、短い間だったけど楽しかったよ!差し入れ以外でもまた顔を出しに来てね」

「ああ、その時はよろしく頼むで」


4日間お世話になった事への感謝の言葉を告げ、トーマスと固い握手を交わす。その後は名残惜しく思いながら部屋を退出し、依頼完了の為に受付へと歩いて行った。


「フレン、依頼終わったから確認お願い」

「お疲れ様です。では完了届とギルドカードの提出をお願いします」

「はい、どうぞ」

案内通りに完了届とギルドカードを手渡し、支払いが始まるまでの少しの間、俺はテキパキと準備を進めるフレンをぼ〜と眺めていた。


「お待たせしました。今回は依頼書200枚作成していただいたので、報酬は1000ゴールドと100AGPになります。ご確認お願いします」

「うん、確かに受け取ったで。それと話があってな」

「あら、なんでしょうか?」


「トーマスには既に伝えたんやけど、明日から依頼書作成の受注を辞めるって伝えたくてな」

「そうですか・・・。残念ですが理由をお聞きしてもいいですか?」


依頼書作成の引退を告げた俺に対し、少し残念さを含んだ声で理由を聞いてくる。

俺はトーマスにしたのと同じ説明を行うと、フレンは比較的あっさりと納得してくれた。


「読書量の増加と魔力電池の充電ですか。町解放の事を考えるとそちらの方が良さそうですね」

「俺はEクラン昇格時の説明に参加出来んかったけど、復興の役に立ちたいと今まで以上に思えたからな。受注者が増えてきた依頼書作成より、エアボックス作動用に使う魔力電池を充電する方が役に立てるやろ」


「復興について真摯に考えて下さり、ありがとうございます」

「俺の成長の為にもなるし、気にせんといて」

フレンからの感謝の気持ちを受け止めるのが少し恥ずかしくなり、自分の為だと受け流す。


「それにしても、ソーイチさんは依頼書作成を卒業して次のステージに移るんですね」

「まあ、新しいサブジョブ育成やからそうなるか。でも、復興含めて冒険者ギルドにはお世話になるし、これからもよろしく頼むわ」

「こちらこそ、町解放の依頼含めてよろしくお願いしますね」

「じゃあ、その次なるステージに挑む為にもこれで失礼するわ」

「ええ、いってらっしゃいませ」


こうしてフレンに一時の別れを告げた俺は【見習い農家】卒業の為に、自分の農地へと帰っていった。


(さてと、もう17時か〜。閉門まで2時間あるけど皆は農地におるんかな?ユサタクに【見習い文武両道】の詳しい話聞きたいし、【付与魔術師】の話をフワフワに教えてもらいたいな〜)


システムで現在の時刻を確認した俺は、仲間の所在や聞きたい事を頭に思い浮かべる。そうして農地に到達し、周りを見渡すと第一パーティの面々と生産組が畑仕事をしている姿が目に入った。


「ただいま〜。みんな揃って畑仕事か?」

「おかえりソーイチ。レベル上げやすい【見習い農家】で経験値稼ぎしてる所だ」

「ああ、復興支援の参加条件満たすためやな?」

「ああ。累積レベル600以上はもう達成できそうだ。ソーイチはサブ卒業までどれくらいだ?」


「残り経験値600ちょいやな。手付かずの農地や収穫可能な作物も多いし、今日中には卒業出来そうや。という訳で、ジュースかポトフちょーだい」


「ポトフばかりだと飽きるだろ。モチョが【料理人】になった事で新作料理作ったから、試食も兼ねてそっちにしておけ」

そう言ってユサタクは2種類の料理が盛られた皿を差し出す。


「これって焼きそばパンか!?ホットドッグもある!」

「はい!【料理人】に転職して使える調味料が増えたんですよ!」

少し離れた所から小走りで来たモチョが、2つの新製品の作成秘話を語り始める。


「ポトフは狩りの間に食べるには重すぎるでしょ?だから、狩りの隙間時間に食べやすい惣菜パンにしようと思ったんですよ!」

「なるほどな。大自然の中、草原で座って食べるには最適って感じやな」

自然の中で惣菜パンを片手に、仲間と談笑しながら食べる姿を想像する。


「ははは、それ良いですね。でも、少しだけ残念な所もあるんです」

「残念なとこ?」

「スープやジュースと違い、惣菜パンは使用する聖水の量が少なくなってしまうので、経験値アップの効果時間が半分になっちゃってるんですよ〜」

モチョの嘆きの言葉を聞いた俺は、2つのパンの効果を確認する。


ホットドッグ

ブラウンボアのウインナーとピクルスをパンで挟んだもの。ソースはケチャップとマスタード。

満腹度25%回復 ST15回復 食後30分間、獲得経験値10%上昇


焼きそばパン

ブラウンボアの細切れ肉とキャベツ、麺を自家製ソースで炒めて作られた焼きそばをパンで挟んだもの。

満腹度25%回復 ST15回復 食後30分間、獲得経験値10%上昇


「確かに時間が半分になってるけど、フィールドで気軽に食える方が圧倒的便利やろ。それに効果時間の短さは数でカバーしたらええだけやしな」

「ああ、俺もソーイチの意見に賛成だ」

「確かにお二人の言う通りかもですね」

「じゃあ納得してくれた所で、早速1つ頂くわ」


そう言って俺は焼きそばパンを頬張る。

モチョが作った焼きそばパンは、コンビニなどで購入する物とは違い、ほんのりと暖かい。焼きそば自体は濃いめの味付けだが、パンで挟む事で味が調和され料理のクオリティを向上させている。


「美味いな!!こんな美味い焼きそばパン初めてかも」

「味も良いが、何より出来立て感があって最高だ!」

思わず声に出した賞賛の言葉を、横で食べていたユサタクが引き継いでいく。


「本当ですか!?」

「マジや。もうテンション上がりまくったしこの勢いで【見習い農家】卒業目指して頑張ってくるわ」

「ふふふ、頑張ってください!それと時間が切れたらホットドッグの味見もお願いしますね〜」


「おお〜。楽しみにしてるわ」

美味しい軽食を食べて上機嫌になった俺は、手付かずの農地に赴き畑仕事を開始したのだった。



tips

ソース

【料理人】のジョブに就く事で購入可能。

【熟成】スキルを覚える事で作成可能だが、野菜や果物、香辛料などの組み合わせや分量などで味が大きく変わるためソースだけを研究する者もいるとか。

次回は4月15日(月)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ