71.検証終了とお叱りの言葉
『おっしゃあああ!!』
『おお!その様子じゃゲット出来たみたいだな!』
ユサタクの問いかけに対して拳を振り上げて答える。そして、システムの問いかけに【公表しない】を選択する事で、
《ソーイチ様がプレイヤーで初めて称号【○○○】を獲得いたしました》
みんなにも分かる様にワールドアナウンスを流した。
『成功だああ!!』
『やりましたね!おめでとうございます!』
喜びの空気がこの場を包み込む中、ユサタクからも祝福の言葉を送られる。
『良くやった!ソーイチおめでとう!』
『ありがとう!って言っても、今回はみんながゴールドを負担してくれたおかげやし俺は何もしてないよ。労うなら全員にしてくれ』
『そうだったな。お前達、装備も他のトップクランに劣る中、ゴールドなど様々な協力をしてくれて本当にありがとう!!』
『リーダー気にしないで!』
『MMOで戦闘ではなく生産にほぼ全リソースを回す、その大胆な選択はリーダーについて来たんですから』
みんな喜びつつも互いを褒め称え続ける。数回それが繰り返された後、ユサタクは【大地主】の性能について問いかけて来た。
『喜び合うのもこの辺にしよう。良く考えたら称号名も聞いてないんだからな』
『確かにそうやな。今回獲得した称号名は【大地主】。貰えたステータスはST25ポイントや』
『マジか・・・農地を100地区設置するだけで、トータル50ポイントもSTが手に入るのか!?』
『ええ!?これって大丈夫なんすか?』
想像以上に多い報酬にどよめきが広がっていく。
『いくら2〜30万ゴールド掛かると言っても、依頼達成で1〜2日で回収出来るからな。MJOの目的が復興メインっと言っても限度があるでしょ』
『今のままじゃゴールドの価値が落ちそうやし、復興の目処がついたら1日に受けられる依頼数の制限か依頼料見直しが後々発生すると思った方がええかもな』
『だな。それで肝心の性能はどうなんだ』
『文面は【所持してる農地に限り農家系アーツの消費STを1ポイント減らし、獲得基礎経験値も上昇する】って感じで、【中地主】とほとんど変化はないな』
『少しって文字が消えたくらいか?今回も検証頼むよ』
『オッケー』
検証の為、先程と同じ手順で獲得経験値を確認すると、キャラ12、【見習い農家】14と【中地主】より経験値が1ずつ上昇していた。
『上げ幅はさっきと同じ1ポイントだけやな』
『そうだが、【見習い農家】の補正は1.2倍だから実数は14.4になると思う』
『惜しい!後0.1で切り上げになるのに!』
『ははは、今後のジョブやジュースの補正次第では切り上げの可能性も増えるだろうし気にするな』
『【中地主】の時もそうやったけど、結局はそういう結論になるか』
大きな喜びの中に少しだけ残念な要素が見つかったが、ユサタクのいう通り気に病まない事にする。最後の農地も設置し、購入した全ての農地を設置し終えた俺は、管理設定でクランメンバーに開放した後、今回のデータをメモに記しユサタクに渡した。
『これが、今回の称号のデータや。情報売買に役立ててくれ』
『ありがとう!今回カンパしてくれたメンバーの為にも絶対売り抜いてみせるよ』
『頼んだで〜。っと思ったより時間かかったし、次の予定地に行ってくるわ』
『ああ、俺もこの農地でレベル上げして、初の派生職への転職アナウンスを流せるよう頑張るよ』
そう言って仲間達と別れた俺は、次の目的地となる図書館へと走っていった。
そして、中に入り受付のシーラに声をかける。
「こんにちは、シーラ」
「あら、ソーイチさん2日ぶりですかね?本の返却ですか?」
「ああ、4冊読み終わったから返却と貸し出し。あと相談もあるんやけど」
「相談ですか?一体なんでしょう?」
「司書系に相性のいいサブジョブってないかな〜って」
「う〜ん、まだ見習いのソーイチさんには早いと思うんですけど」
「いやいや、もう見習い卒業して【司書】になったで」
「なんですって!?」
そう言うとシーラは笑顔から驚きと怒りが混じったような表情に変わっていった。
「ど、どないしたん?」
「もう【見習い司書】を卒業しちゃったんですか?」
「そ、そうやけど・・・」
「それは、おめでとうございます。でも1つだけ言わせて下さい」
「な、なんでしょう」
シーラのオーラに気圧されて、ついつい返事が吃ってしまう。
「見習い卒業までの間の読書量が4冊だけって少なすぎます!!」
「はっ!!」
「司書の本分は知識の収集と伝道。特に見習い期間は基礎的な知識収集が大事なのですが、この様子だと殆ど【メモ】スキルだけでレベルを上げていったでしょ?」
シーラのいう通り、依頼書やプレゼント用のサイン等で経験値の8割近くを獲得している事に気づいてしまう。
「渡り人の方は、冒険者ランクEまで時間がかかるのである程度は仕方ないですが、ソーイチさんはかなり早くから利用可能になってましたよね?」
「はい・・・」
「それなら、もう2・3冊は読んで頂きたかったです」
「おっしゃる通りでございます・・・」
競争の為、経験値の獲得しやすい方に流れ続けていたのを自覚した俺は、どんどん縮こまってしまう。その様子を見たシーラは落ち着くために深呼吸した後、申し訳なさそうに話しかけてきた。
「ごめんなさい。ソーイチさんにも事情があるでしょうに一方的にお説教をしてしまって」
「いやいや、司書やのに知識の収集を疎かにしてたのは事実やしな。シーラが怒ってくれたおかげでその事に気づけたわ」
「それなら、いいのですが・・・」
互いにペコペコ謝罪し合い、気まずい空気が流れていく。そんな空気を払拭するべく敢えて明るくシーラが話し始めた。
「そ、そうだ!サブジョブについての相談でしたね」
「あ、ああ。後少しで新しいサブジョブ選べるようになるから参考にな」
「そうですね〜。アドバイスする前に興味のあるジョブは何かあったりしますか?」
「気になってるのは【見習いテイマー】かな。一部のモンスターはサブの農家の方でも使えそうやし」
「確かに農家系ジョブとの相性は抜群なのですが、ソーイチさんはメインジョブが【司書】ですからね〜」
「その言い振りやと相性は良くないと」
「そうですね。今わかってる限りでは、司書に活かせるモンスターも派生職も見当たらないです」
「そうなんや〜。じゃあ、シーラは何を選んだらええと思う?
転職候補の最有力だった【見習いテイマー】が却下された事は残念だったが、新たな情報収集の為おすすめを聞き出そうとする。
「そうですね〜。私のおすすめは【見習い付与魔術師】ですね」
「【見習い付与魔術師】か!確かに司書はMPとINTの上昇がいいし魔術師系は相性良さそうやけど、なんで付与魔術師系なん?」
「それはですね〜」
シーラが少し間を取り、
「司書系と農家系のジョブを持ってるソーイチさんには相性が特に抜群だからです」
とびきりの笑顔で理由を告げた。
tips
【司書】までの読書量目安
10-図書館開放時点の【見習い司書】のレベル×1.5
ソーイチは開放時、【見習い司書】のレベルが5であった為、7〜8冊は読書の必要がある。
ただ、ノア・タイムスの読み込み&要約や町での情報収集などの知識収集は行なっていた為、今回は友好度は下がらず警告のみとなっている。
次回は4月5日(金)午前6時に更新予定です。
ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。