70.大量購入と2つの称号
「ええ!?一気に86地区も買うんですか!?」
農業ギルドに到着した俺は土地を買う為にアレンに話しかけた所、やはりと言うべきか大変驚かれた。
「ソーイチさんなら無茶はしないと思いますが、こんな沢山の農地を買おうと思ったんですか?」
「まあ、色々事情があるから最初からの説明でええか?」
「話しても大丈夫ならお願いします」
深い事情があるのかと一瞬考えたアレンだったが、好奇心に負け説明を促してきた。
「まず、近日中にうちのクランから他の渡り人に対して、農業の良さを伝える事が決定したんよ」
「まぁ!まだ農地は1〜2%しか埋まってないので、宣伝して頂くのはありがたいですが、ずいぶん急ですね」
「もう少し先になるかとは俺も思ってたんやけど、他の町の情報をランクアップの際に聞いたみたいでな・・・」
「ああ〜、ついに知ってしまったのですね」
「それで他のクランもこの真実を知ったら、復興目指して農家が増えるかもしれんやろ?だったら、情報を独占せずに広げた方がええとリーダーが判断したんや」
「なるほど、そこまで考えて下さってたんですね。でも、どうしてソーイチさんがいっぱい農地を購入する事になるんですか?」
「それは、農地の大量所有する事で新しい称号が手に入らないかの検証と、うちらが農業の最先端やとアピールする為やと思う」
(まあ、後半は完全に俺の予想やけどな)
俺の推察も交えながら、説明を続けていく。
「後は、農地の管理についてもリーダーに秘策があるみたいやし、購入費用も負担してくれたから今回農地を買いに来たんや」
「なるほど。でも所持系の称号なら教えてあげれましたのに・・・」
「そうやったん!?そこは俺の聞きとり不足やったな〜」
「でも、聞きとりだけじゃなくて、自分達で予想して行動するソーイチさん達には好感持てますけどね」
「おお、アレンに好感もって貰えるんやったらそっちのがええわ」
「あら、お上手ですね」
互いに冗談を言い合った後、俺は本題に入る。
「そういえば、前に生産職ランクがE以上になったら所持農地の上限がなくなるかもって言ってたけど、あれどうなったん?」
「ああ!そういえばEランクになった時はキノコ小屋関連しか説明してませんでしたね」
「そうやね。俺的にもFの所持上限にすら到達してなかったしな」
「では、お答えしますと協議の結果、Eランクでは、通常が上限100地区、【地主連合】を所持してるクランに所属している場合は150地区まで購入可能です」
「称号によって購入数が違うんや?」
「ええ、【地主連合】をお持ちの場合、広大な農地を運用するノウハウがあると見なされるからですね」
「なるほど、確かにその通りや。その分け方のおかげで俺は指定された通り、101の地区を持つことができるって訳や」
「ははは、そうですね」
和やかな空気が流れる。少しの雑談を交わした後、俺は17万2000ゴールドと引き換えに、86枚の南地区の農地のチケットを手に入れた。
「じゃあ、俺は自分の農地に戻るわ」
「いってらっしゃい。でもクランの方ばかりじゃなくて、ギルド農地の依頼も忘れないで下さいね〜」
「ああ、絶対に間に合わせるわ」
そう言ってアレンと別れ、俺は自分の農地へと戻っていった。
「ただいま〜。農地買ってきたで〜」
「おかえり、ソーイチ!ナイスタイミングだ!」
「えらいテンションやな。一体どうしたんや?」
「いや、レベルアップまで後少しなのに、アーツの使える農地がなくなっちゃったんだよ」
「ああ〜。俺が朝張り切っちゃったからな〜。悪かったな」
「いや、生産職ランクFなの忘れてたせいで、農地を上限まで買ってなかった俺のミスだよ」
「ああ〜。ユサタクの初期サブジョブは【見習い木こり】やもんな。そりゃ依頼何個か達成してるか」
「不覚だったよ」
「まあ、こうして新しい農地買って来たし大急ぎで設置していくわ」
「ありがとう!でも、称号の検証も兼ねてるから、クランコールで数えながら設置してくれ」
「オッケー。ちょっと恥ずいけど必要やしな」
そうして俺は、現在農地にいるクランメンバー全員が見守る中、自分の所持数を数えながらチケットを使っていく。
『じゅ〜ろく、じゅ〜なな、じゅ〜はち、ってジロジロ見んといてや』
『いや、数え間違えないようにダブルチェックは必要だろう』
『それでも、人数多いって』
『確かにな。でも、諦めてくれ』
『うう〜、絶対面白がってるわ。じゅ〜きゅう、にじゅう・・・』
みんなの視線を振り切るように無心でチケットを使っていく。そして30地区目に到達したタイミングで、
ー称号【中地主】を取得しました。報酬としてSTが15ポイント上昇します。
また、この称号はプレイヤーでは初めての獲得になりますが、称号名は公表しますか?ー
システムアナウンスが頭に鳴り響いた。俺は即座に称号取得と公表について問いかけると、当然ながら販売まで隠すよう言われたので、システムの問いかけに【公表しない】を選択する。
《ソーイチ様がプレイヤーで初めて称号【○○○】を獲得いたしました》
「「「おおお!!!」」」
「「「やったあああ!!!」」」
ワールドアナウンスを聞いた全員が、歓声を上げたりガッツポーズしたりと喜びまくる。
『おめでとう、ソーイチ!早速、称号の効果を教えてくれないか』
『了解。まず獲得したのはST15ポイントで、効果が【所持してる農地に限り農家系アーツの消費STを1ポイント減らし、獲得基礎経験値も少し上昇する】やって』
『消費減は【地主】と同じだが、基礎経験値アップか!!どれくらい上がるか検証の為、1区画だけアーツを使ってくれないか?』
ユサタクの指定通りにアーツを使うと、1回あたりの経験値がキャラが10から11、【見習い農家】は12から13に上がっていた。
『まあ、流石に大量には上がらんか〜』
『いや、ジョブ補正やジュース等の補正次第で端数が切り上げになるタイミングも増えそうだしこれはデカいぞ』
『そやな。それにキノコ小屋とかも効率上がるし素直に喜んどくわ』
『そうしてくれ。でも30地区って生産ランクFの上限だろ?もしかしたらランクの所持上限と称号に関係あるかもな』
『どうやろ?地主はGランクの上限より下やったぞ』
『それもそうか。じゃあ、引き続き農地を設置していってくれ』
『まあ、やればわかるか。』
称号を1つ手に入れた事で気分を良くした俺は、みんなの視線も気にならなくなり、農地の設置を再開していく。だが、その後は数を重ねても一向に称号が発生しない事に内心焦りはじめた。
『はちじゅ〜さん、っと次の称号が出て来ないな〜』
『まあ、称号があるとしたら100地区だろうし気にせず頑張れ』
『そうするしかないか。はちじゅ〜よん・・・』
ドキドキしながらも設置していき、いよいよ99地区までたどり着く。
『次で100地区目やけど、マジで称号頼むで!』
『まあ、出なかったとしても情報自体は売れるから、あまり気負いすぎるなよ』
『お、おう。じゃあ行くで。ひゃ〜く!!』
祈りながら記念すべき100地区目を設置した結果、
ー称号【大地主】を取得しました。報酬としてSTが25ポイント上昇します。
また、この称号はプレイヤーでは初めての獲得になりますが、称号名は公表しますか?ー
待望のシステムアナウンスが脳内に鳴り響いた。
tips
生産職ランク毎の農地所持制限(G〜Eランク)
Gランク:15地区
Fランク:30地区
Eランク:①通常:100地区 ②【地主連合】所持クラン:150地区
次回は4月3日(水)午前6時に更新予定です。
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