69.ミーティング終了と20万ゴールド
『反対無しという事で農業系の情報売却についての議題は終了とする。販売による獲得ゴールド等は次回以降のクランミーティングで発表する予定だ。』
無事、クランミーティングの目的を果たしたユサタクは、今後の予定について言及した。
『では、最後にソーイチが発見した情報の共有してから終わりとしようか』
『ええ!ソーイチさん、また何か見つけたんですか!?』
『いやいや、図書館で借りた本に載ってただけやから!』
また、過度な賞賛が起きそうな気がしたので、前もって否定をしておくが、
『それ以外にも爆弾情報があっただろ。』
ユサタクは、呆れたながら否定しつつ情報を開示していった。
『ソーイチが手に入れた情報は2つ。1つ目はこの町周辺のモンスター及び採集物の各種情報だ。特に採集の方は地図と場所まで書き写されている』
『マジっすか!?』
『依頼達成では対象の捜索が一番大変ですしね』
セキライ・ゼロのコンビが驚きの声を上げる。
『この資料は人数分コピーされてるので、後ほど配布する。みんなはMP回復などのタイミングで読み込んでおくように!』
『『『はい!』』』
『次の爆弾だが、なんと!派生職への転職方法を見つけ出したんだ!』
『ええ!どんな方法なんですか!?』
『それは【混職の証】というアイテムを手に入れる必要があるみたいだ。ソーイチ、現物をみんなに見せてくれないか?』
『オッケー。これが【混職の証】や』
『思ったより大きくないんですね。ってずっと持ってる物ですし、そうなりますよね』
『このXの模様、カッコいいっすね』
現物を見せて回ると各々が感想を言い合う。
『今回ソーイチは教会のシスターから貰ったんだが、その時の発言から察するに友好度や信頼度が関係あると思う』
『やっぱり、世界の成り立ち的にその2つは大事なんですね〜』
【混職の証】の習得条件についての推察を聞いてフワフワは設定などを思い返して納得したようだ。
『更にシスターに質問してわかったんだが、累積ジョブレベルでも貰えるらしい』
『なるほど、そっちが正規ルートみたいですね。それで何レベルからとかは聞き出せましたか?』
『厳密には聞き出すことは出来なかった。だが、累積レベル29の俺がもう少しと言ってたし、30レベルだとは思う』
『う〜ん。それだと他のプレイヤーが先越してないのが不思議ですね』
『そうか?ユサタクはトッププレイヤーの1人やし不思議じゃないやろ?』
『リーダーは総農家計画の為に、サポートチームのレベル上げにも付き合ってたので、レベルは最上位ではないんですよ』
ゼロの発言を聞き、先を越されていない現状に全員が不思議に思い始めるが、俺には1個心当たりがあった。
『もしかしたら、クランランクも関係あるんちゃうか?』
『ああ!ウチと他のプレイヤーの差で一番大きなのはクランランクですしね』
『でも、今回は個人の話でしょ?なのに条件にクランランクが関わるって違和感があるんだけど』
『それは、Eランクに昇格した際、ギルドのチェックを通ってるだろ?なら、ソロやFランクよりかは信頼度に差がある事になる』
『なるほど、このゲームは魔族に騙されたとかの設定的に兎に角、信頼できるか探ってる感じはしますし、あり得そうですね』
『プレイヤー専用のランクがあったり、司書だけギルド加入のランクが高いなど、多くの場面で信頼できるのかを見ている傾向はある。今回もその一環なんだろう』
納得できそうな考察が出来上がった事で、全員が納得した空気が流れる中、
『ああ!それならリーダー早くレベル上げないと、他のクランがEになって抜かされちゃいますよ!』
『『『ああっ!』』』
モチョの懸念を聞き、全員がハッとした。
『そ、そうっすよ。折角アドバンテージが取れたのに追い抜かれちゃうっす!!」
『リーダー、他に議題がないのならミーティングは切り上げて畑仕事でレベル上げてください!』
『そ、そうだな。ではこれにてミーティングは終了する。最後にゴタゴタして悪かったな』
『も〜、いいから早くレベル上げに専念する。STポーション出しますから!』
こうしてクランミーティングは慌ただしい中、終わりを迎えた。
みんなに急かされたユサタクは、早速農地にアーツを放ちレベル上げを行う。俺は忙しそうにしてる姿を眺めていると、当の本人が密かにコールを送ってきた。
『競争だって言ってたのに、そんな空気じゃなくなってしまった。ソーイチすまん!』
『ええよ、PP獲得が絡むならそっちが最優先やしな。頑張ってくれ』
『そう言ってくれると助かる。それと、情報の報酬なんだがアマネに、事情込みで渡してるから貰ってくれないか?』
『オッケー。事情が何なのかわからんけど貰ってくるわ』
コールを終えた俺は、ユサタクの指示に従い、アマネの方へ歩いて行った。
「アマネに情報料もらってって聞いたんやけど、話聞いてる?」
「ええ、準備万端ですよ。」
そう言ってアマネは20万ゴールドを渡してきた。
「ええええ!!報酬多すぎちゃう!?」
「事情込み込みなので大丈夫ですよ」
「それでこんな高額報酬って・・・。さてはまた何かさせるつもりやな?」
「ははは、正解です」
アマネは疑心暗鬼になった俺の推察を、苦笑いしながら肯定する。
「それで俺は何したらええんや?」
「そのお金を使って手持ちの農地を101地区になる様に購入して欲しいそうです。」
「多いな!手持ち15地区しかないからほぼ7倍になるやんけ」
「実は、農業情報を販売する前に所持農地数で称号が増えないか調べたいみたいなんです」
「う〜ん、理屈はわかるけど管理し切れるかわからん土地買うのはどうなん?農地も101って半端やし」
「管理はリーダーに秘策があるっぽいですし、端数があるのは【所持農地が100を超えましたので〜】みたいな条件があるかもしれないので念の為ですね」
「なるほど。そう言う称号も無くはないか。まあ納得できたし、これから買いに行くけど、3万くらい余るで」
「差額は情報料として貰っちゃって下さい。」
「そうか・・・。なんか貰いっぱなしで悪いな〜」
クランの為とはいえ太っ腹すぎて、少し申し訳なくなってしまう。
「正当な報酬なんです気にしないで下さい。それに売却出来る情報が増えたら、それだけクランの為になりますからね」
「そりゃそうやけど」
「それでも気になるようでしたら農地はいつも通り、クランで共有できるよう設定お願いします」
「おう!設置したらすぐにみんな使えるようにするわ」
「頼みましたよ」
貰いすぎな罪悪感を減らす為にも、農地を設置したらすぐに共有設定に変更する事を心に決めた。
「ところで、貢いで貰っといて言うのも変かもやけど、ヘイト管理云々ってミーティングで話してたのに俺が100地区も持って大丈夫なん?反感出そうな気がするけど」
「どうなんでしょ?あくまでMJOは賞金レースなので、自分が手に入れた情報については大丈夫って思ってるかもしれませんね。ミーティングでも売却で数クランにしか広まらない所を気にしてたみたいですし」
「う〜ん、余り深掘りする話でもないし先に買い物に行くか。この後の予定も詰まってるしな」
「じゃあ、急がなきゃですね!いってらっしゃいです」
そう言ってアマネと別れた俺は、ダッシュで農業ギルドへ走って行った。
tips
情報売買
今回のような通常の売買は情報であってもゲーム内でのやり取りで完結する。
だが、プロチーム同士が重要な情報売買を行う場合、デマや情報の転売を防ぐ為に、現実で契約書を書く場合がある。
次回は4月1日(月)午前6時に更新予定です。
ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。