表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/160

68.クランコールと情報売り出し

「リーダー、ソーイチさんお帰りなさい!」

「ソーイチさん転職おめでとうっす」

「セキライ抜け駆けズルい!ソーイチさんおめでとう!」

「「「おめでとうございます!!!」」」

「ただいま〜、セキライ達も祝ってくれてありがとな」


農地へ転移した俺達は、待ち構えていたクランメンバーから転職のお祝いが滝の様に浴びせられた。俺は照れながらもお礼を言っていると、ユサタクが大きく手を叩きその流れを止める。


「ソーイチへのお祝いはひとまずこれまで!これからクランミーティングするから準備してくれ」

「「「はい!」」」

ワイワイ騒いでいてもそこはプロゲーマー、ユサタクの一喝を機にテキパキと準備をしていく。


「今回は機密情報もあるのでクランコールで行うが、やり方はわかるか?」

「え!?そんな機能あったん?フレンからは説明なかったやん」


「それはコール機能がプレイヤー独自のものだから向こうも知らなかったんだろ。フワフワがヘルプから引っ張り出したから判明した機能だからな」

「なるほどな」


(そういえばトーマスもコールの存在自体は知ってたけど、持ってないみたいやしな〜)

ユサタクの推測を聞いて、初めてコールが来た時のトーマスとのやり取りを思い出す。


「クランコールのやり方だが、通常コールの画面まで進んでくれ。その後右上のCのマークをタッチすると【ユーザータクティクス】って出てくるから押すとクランコールに入る事が出来るぞ」

説明通りに操作を進めると、目的の画面まで進む事が出来た。


「オッケーなんやけど、なんで一回クラン名を押すのを挟んだんやろ?Cマーク押したら直接使えたらええのに」

「ああ、それは他のクランと同盟を組んだ時に使うみたいだぞ」


「なるほどな〜。」

「ちなみにクランコールは通常と同じくログが数日は残るし、アイデアや情報が手に入ったら気軽に吹き込んでおいてくれ」


「ボイスレコーダー的使い方をしろって事やな」

「ああ、有益な内容なら毎日のクランミーティングで周知していく予定だ。さて、準備が出来たみたいだしここからはコールを使ってくれ」

「「「了解!」」」

『みんな、ちゃんと出来てるか?』

『俺は出来たで〜』

ユサタクの呼び掛けに各々が返事をする。全員が参加出来てるのを確認した所でクランミーティングが始まった。


『まずは【ユーザータクティクス】のEランク最速達成おめでとう。これも全てみんなの頑張りのおかげだ。本当にありがとう!』

『それはお互い様っすよ!』

『そうですよ〜。リーダーの采配も良かったんですから』


労いの言葉に対して、逆にリーダーを褒め称えるメンバー達と誤魔化す様に本題に移るユサタク。

『こほん、ではミーティングを始める。

今回の議題は【農業系の情報全てを売却する】事の賛否を決めようと思う』


『ええ〜、派生職関係が出るまでは隠すって言ってましたよね?』

『まあ【地主】を全員ゲットしたら、とも言ってたし頃合いじゃないか?』

突然の情報販売宣言にざわつくメンバー達。


『みんなが疑問に思うのもわかる。だが、この情報が売れるタイミングは精々明日までだと思うんだよ』

『やけに自信満々やな。その根拠は何なんや?』


『それは上位クランは遅くても明日中にはEランクになりそうだからだ』

『まあ、まだお昼過ぎですし、これからランクアップするクランは増えていくでしょうね』


『他のクランも、世界の実態について説明を受ける。そうなったら、次の転職先に【見習い農家】を選ぶプレイヤーも出てくるだろう』


『ああ、フレーバーテキストっぽかった大戦からの復興設定に、リアルさが出てくるからな。復興のカギとなりそうな生産系に光が当たるのは有り得ることやな』

今後、MJO界で起きそうなサブジョブ選択の流れの予測にユサタクの言いたい事を理解し始める。


『だろう?そうなったら【地主】や【地主連合】なんて一発でバレるぞ。この速さでEランクに上がるクランは沢山のゴールド持ってるからな』


『ああ、レベル上げる為にも土地買い漁るでしょうし、バレちゃいそうですね』

『【地主】はゴールドさえあれば取得出来ますしね〜』

称号の特性もあり、俺達が情報を隠す意味が薄れた事についてメンバー全員が納得の反応を見せる。


『だからこそ、このタイミングで【地主】などの称号からスキルの取得法などをまとめ売りする事がベストだと考えたんだ』

『なるほどな〜』


ユサタクの説明を受け納得していた所にモチョが、

『そうだ!リーダー、情報を売るときにジュースとかに経験値アップ料理も売り出すのはどうでしょうか?』

追加の商材を提案した。


『それ採用!トップクランの殆どはサブジョブを選んだ後だろうし、需要はバッチリ見込めそうだ!何よりモチョのレベル上げにもなるしな』

『でしょ〜。教会の物々交換の話もセットにしたら孤児院の為になると思うんです!』


『確かに!色々な面で売るしか無いな!』

新たな商材が出来た事でユサタクの声が弾んできてるのを感じる。


『リーダー落ち着いて!今はクランの方針会議についてなんで、料理販売の件は個別でお願いするっす』

『そ、そうだな。モチョはミーティングが終わったら今の話を詰めるぞ』

『了解です!』

セキライのツッコミを受けて気を取り戻したユサタクは、商材の件は後回しにして本題へと戻った。


『以上が農業系の情報を売り出す理由なのだが、何か意見はないか?』

『では、今回の情報なのですが【ユーザータクティクス】主体での販売になるんですか?』

質疑応答タイムに入ると、フワフワが真っ先に問いかける。


『情報屋クラン【オモイカネ】との共同販売を予定している。と言っても情報は全て俺らからで、向こうは場所と名前を貸すだけだが』

『ええ〜、それってメリットが何も無いじゃないですか!』


メープルが言うように一見、共同でする意味は無いように思える。他のメンバーからも同じような声が上がる中、ユサタクは理由を語り始める。


『俺達だけの場合、プロゲーマーくらいしか伝手がないから、売却出来るクランは多くないだろう。そして、人数制限のある【地主】を、少ないクラン間のみで販売したら、買えなかったプレイヤーからヘイトを買う可能性がある」


『なるほど、情報屋と共同発表って形をとる事で、ヘイトを分散しつつ、販売先を増やすって意図やな』

『その通りだ。逆に【オモイカネ】は称号含めた販売実績を作る事でクランの影響力を高める事になるだろう』


『現状【オモイカネ】や他の情報系クランは、司書が序盤きついジョブなのもあって影が薄いし、実績は喉から手が出るほど欲しいでしょうね』

『以上が共同発表する事にした理由となるんだが、みんな納得できただろうか?』


ユサタクの説明に質問主フワフワを含め、反対意見が出る事はなかった。

その後も質疑応答が続けられたが、ユサタクは一つずつ丁寧に答えていき、最終的に全員が【農業系の情報全てを売却する】事に納得したのだった。



tips

クランコール

通常のコールと同じく、思考入力を用いて発言する。発言内容は、チャット形式で表示される。

コールログの保管期間はゲーム内時間で8日間となっている。

次回は3月30日(土)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ