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66.見習い卒業と次のステップ

【ソーイチ視点】


『マジか・・・』

『まあ、そういう反応になるよな』

ユサタクから一連の流れを聞いた俺は、世界観の重さにそう呟くのが精一杯だった。


『初めてログインした時に綺麗な町やな〜とかは思ってたで?でもここまで重い話とは思わんやん』

『確かにな。でも復興って何するんだとは思ってただろ?』


『復興に関係ありそうなの農地拡大と教会の食材交換だけやしな。というか教会に孤児が多かったのも、大戦での被害というより石化から逃れる為ってのもあるんかな?』

『ああ、せめて子供だけでもって奴か?ありえそうだ』

嫌な想像をしてしまい、気分が少し萎えてしまう。


『まあ、ユサタクが回想を話す前にモゴモゴしてた理由はわかった。話が重すぎるんと具体的な行き方とかはレベル上げな教えて貰えんって言われたからか』

『そうだ。参加条件自体はキツくないが、それでも今日中って訳にはいかないだろうしな』


『キツくないって俺まだ初期ジョブ卒業すらまだなんやけど』

『ははは、俺たちが一番乗りする為にも支援はバンバンするから【見習い司書】と【見習い農家】の卒業は頼んだぞ!』


参加条件の足切りラインに到達してない俺に、応援しつつも発破をかけるユサタク。


『おうよ!メイン・サブ両方とも後1レベルやし今日中にはクリア出来るよう頑張るわ。その代わり、累積の方は頼むで』

『もちろんだ。【見習い農家】は農地さえあれば低レベル時はすぐに上がるしな。モチョのジュースや料理で補正かけて頑張るよ』


『あっ!畑仕事するんやったら、スキル習得させといてな。特別依頼受けれる様になるから』

『オッケー。全員に周知しておく』

『頼んだで〜』

互いにやるべき事を伝えきった俺達は、それを成し遂げる為にコールを終えた。


(なんだかんだで30分も話し込んでたな〜。ってジュースの効果時間20分切ってる!!急いで続きせな!)


時間を忘れて話し込み、経験値アップのタイムリミットが半分を切った事に気づいた俺は、急いで作業を再開する。

まずは【見習い司書】の卒業の為、プレゼント用のサインを1枚書き上げた俺は、ポーション片手に【コピー】を放つ。

急いでるとはいえ、ファンの為なので手早くも丁寧に【コピー】し続けていると、5本目のポーションを飲み終えて10枚ほど作成したタイミングで、


ー見習い司書のレベルが上限に達しましたー

《ソーイチ様がプレイヤーで初めて【見習い司書】のレベル上限に到達いたしました》


待望のレベル上限を告げるアナウンスが頭の中と世界の両方に流れた。


「よっっしゃああああ!!」

心の底から待ち侘びていた瞬間の到来に、大声で叫びながら両手を高らかに掲げた。


「急に大きな声を出してどうしたんだい!?」

「あっ、すんません。【見習い司書】がレベル上限になったんでつい・・・」

急な大声に不審に思ったのか、管理小屋から走ってきたペーターに赤面しながら理由を告げる。


「ああ、それはおめでとう!でも、外で急に大きな声を上げちゃダメだよ」

「はい、気を付けます。それと失礼ついでに転職してきていいです?」

お叱りの言葉に頭を下げた後、外出して大丈夫か問いかける。


「そこは大丈夫。ただ、作業は残ってるんだし戻ってくるんだよ」

「りょーかい。1時間以内には戻ります」

そう言って、俺は転職のため教会へと走っていった。

途中クランメンバーからの祝福コールに混じってユサタクからある提案がなされた。


『ソーイチ、教会の前はアナウンスを受けた野次馬でいっぱいだぞ』

『ああ〜、見習い卒業したらすぐ転職すると踏んで待ち伏せしてるんやね』


『トッププレイヤーを一目見る為とかソーイチのファンとかかな』

『今行ったらせっかく番組で仮面つけてコスプレしたのに、結局顔バレするって事やな』


『そうなると思って、俺の転移クリスタルに教会を登録してあるから、クランの畑に来てくれないか?』

『ああ、その手があったか!でも、転移しても結局野次馬の前に降り立つイメージなんやが違うんか?』


『この転移クリスタルは直接建物内に転移するから人目に触れずに入れるぞ』

『じゃあ転移お願い!それとついでに経験値アップの料理切れたからそれもお願い』


『ははは、用意しておくよ』

『頼んだで〜』

ユサタクの助言に従う為目的地を教会から農地に変更し、人目を避けながらも急いで行く。


「おーい、こっちだ!」

農地の少し奥側で手を振るユサタクの姿が目に入ったので近くまで行くと、外から一番離れたメンバーの小屋へと案内された。


「改めてソーイチおめでとう!これ頼まれてたやつ」

「おお!ありがとう!」

小屋に入ってすぐ、ユサタクから祝福の言葉と共に人参ジュースとポトフを手渡された。そして間髪を容れずに出されたユサタクからのパーティ申請に応える。


「おお?初めてパーティ組んだけど、実感は特にないんやな」

「まあ強くなったりはしないからな。っと早速転移するぞ」

そう言ってユサタクが輝く石を握りしめると同時に、


ーパーティリーダーのユサタクが【ノアの町:教会内部】に転移しようとしています。同伴いたしますか?ー


とアナウンスが流れたので、はいを選択する。その瞬間眩い光が立ち込めた後目を開けると教会の女神像とシスタークリスが目の前に立っていた。


「ようこそソーイチさん、ユサタクさん」

「急な転移失礼しました。今回は・・・」

「ソーイチさんの転職の件ですね。おめでとうございます」

クリスはにっこりと笑いながら祝福してくれた。


「ありがとうございます。教会前の騒ぎの原因なのに便宜も図ってくださるなんて」

「いいんですよ。ソーイチさんのせいではありませんから。それに【ユーザータクティクス】のお役に立てるならこれくらいお安いご用というものです」


「あ、ありがとうございます!他のメンバーも今晩、食材片手にご挨拶しますんで」

「あらあら、じゃあ私も聖水作って待ってるわね」


迷惑を現時点でもかけてるのに全く気にした様子の無いクリス。そればかりか協力までしてくれるその度量に改めてシスターの凄さを思い知った。


「シスター、前の混雑緩和の為にも先にソーイチの転職をお願いします」

「そうですね。じゃあユサタクさんは一旦礼拝堂の外で待っててくださいね」

「わかりました。ソーイチも頑張れよ!」

励ましの言葉を投げかけながら、ユサタクは扉から出ていった。


「良いリーダーですね」

「ええ、アイツは良いリーダーやし、何より俺の親友やから」

「あら!仲が良いのね」

「茶化さんといて下さい。それより転職お願いします」


我ながらくさいセリフだと思ってたので、クリスからの茶化しに赤面しながらも転職を促す。すると優しい孤児院のおばあちゃんの表情から一転、厳格なシスターのようなキリッとしたものに変わる。


「わかりました。これよりソーイチさんの転職の儀式をいたします。女神像の前で祈りを捧げてください」

「はい」

クリスに言われるがまま女神像の前で祈りをすると、


ー【見習い司書】のレベル上限が確認出来ました。これより転職機能を解放しますー

システム音声と共に、目の前にステータス画面が現れる。


ー黄色く点滅しているジョブにタッチしてくださいー


言われるがまま【見習い司書】の部分を触ると、別の小さなシステムボードが現れる。

そこには【司書】と【転職を辞める】の2つの選択肢が示されていた。


(【見習い司書】しかレベル上限じゃないから選べるのは【司書】だけやな。メインジョブは上位か派生しか元々選べんから仕方ないけど)

簡素すぎる転職ボードの感想を思い浮かべながらも、一覧から【司書】を選択する。


ーメインジョブを【司書】に転職でよろしいでしょうか?ー

という問いかけに対し、はいと選択すると、


ーメインジョブを司書に変更いたしましたー

ー初めてのメインジョブを転職した為、メインスキルの枠を1つ追加いたしますー

《ソーイチ様がプレイヤーで初めて司書に転職いたしました》


自分が次のステップに踏み込んだのを示すアナウンスが自分の頭と世界に鳴り響いたのであった。


tips

転移クリスタル②

このアイテムは某有名RPGのような屋外での使用制限はなく、また転移先も建物の中所有者が許可をすれば屋内への転移も可能となっている。

今回礼拝堂に直接転移したのは、敷地外からも覗いているプレイヤーが居た為、罰当たり覚悟でお願いした結果である。

ちなみに、覗きまでエスカレートした野次馬プレイヤーの、住民の好感度や信頼度は下がってしまった。

次回は3月26日(火)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] うんうん。 ワールドアナウンスで『○○様がプレイヤーで初めて○○に転職いたしました』と言われるのはゲームの醍醐味ですよね〜 頑張って!!
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