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65.回想③他の町の現状と参加条件

「何というか・・・現実とは思えないくらい壮大な話ですね」

「私もそう思う時はあります。でも大戦の悲惨さやこの町の成り立ちは現実なのです」


驚きのあまり子供のように、思ったままの感想しか言えない俺に対し、フレンは今語った事が事実であると念押しをする。


「今にして思えば、復興を目的として俺達が来たのに町やフィールドが綺麗だったのは、ここには戦禍が及ばなかったからなんですね」

「お察しの通りでございます」


「でも大戦自体は終わったんですよね?それなら渡り人は復興の為にも向こうに行ったほうが良いと思うんですが」

「確かに女神様達のおかげで大戦は終わりました。でも今はまだ渡り人の方々を派遣する訳にはいかないんです」


「何故です?信頼出来るかもわからない人間なら、最後の避難場所であるノアの町に滞在するより、向こうに派遣した方がリスクも少なそうに思えるんですが」


アマネの言う通り、ギルドランク等で信頼度を測るよりも、その方が手っ取り早いと感じてしまう。


「確かにその意見も出ました。でも世界の救世主になるかもしれない渡り人達を準備も無しに、生きる事さえ難しい所に送り込むべきではないという結論になりました」


「そんなに危険なのですか?」

「ええ、危険な理由は2つあります」


「それって一体!?」

「1つ目は向こうの魔素の濃度が高すぎる為、こことは比較にならない程強いモンスターが蔓延っているという事です」

「魔素ですか?」


「ええ、殆どのモンスターは魔素から生まれてきます。そして空気中の魔素の濃度が高ければ高いほど、より強くより沢山のモンスターが生まれるのです」


「なるほど、来たばかりの渡り人では無駄死にするだけってのが1つ目なんですね」

「その通りです。そして2つ目なのですが、そもそも町に入る事が出来ないので強制的に野営生活になってしまうからです」


「町に入れないって結界とかが張り巡らされてるって事ですよね?入る時だけ解除とか出来ないんですか?」

「解除出来る人間が町にはいない、というかあちら側には生命活動を行ってる人間がいないんですよ」


「それってノア以外の住民って死んじゃったって事ですか!?」

衝撃の事実にモチョが声を張り上げる。


「いえ、誤解させてしまいましたね。生命活動を行ってはいないだけで、死んではおりません」

「違いがわからないのですが、どういう意味なんですか?」


「実はここ以外の町の住民達は全て石化しているのです」

「「「ええ!?」」」

「そ、それって魔物の被害によるものですか!?」


「いえ、全員が自らの意思で石化したのです」

「一体なぜ!?」

普段はクールなゼロが、動揺のあまり聞き返す事しか出来ていない。いや、ゼロだけじゃない。

俺ら全員の理解の範疇外の説明に衝撃と戸惑いのダブルパンチでただ混乱するばかりである。


「先程お話しした魔素の性質は覚えているでしょうか?」

「ええ、魔素の濃度でモンスターが生まれるってやつですよね」


「それは町の中も例外ではありません。ここの様に人的余裕があり、結界と魔素の管理が出来るなら兎も角、他の町は両方の管理が出来るだけの人材もエネルギーも無いのです」

「魔素の管理が難しいのは分かるけど、そこから何で石化になるって発想になるんすか」


「空気中の魔素の濃度が一定以上だとモンスターが出現するのなら、町全体を真空状態にしよう。そう考えたからです」

「「「!!!」」」

町にモンスターを入れない為の常軌を逸した方法に全員が度肝を抜かれる。


「じゃあ、町中の人間が石化してるのは」

「空気が無くても命を繋ぐ為・・・ですね」

「そんな・・・」


「確かに非人道的だとは思います。でも結界と魔素管理の両方にエネルギーを使えばすぐに破綻しまう。それなら町中を真空状態にして魔素管理する必要性をなくした上で、いつかノアの町からの助けが来ると信じて結界を維持し続ける。そう考えたのです」

「そうだったんですか・・・」


この事を実践した時の覚悟と悲惨さ。そして俺達渡り人に課された使命の重さに、全員が黙り込んでしまう。そんな中モチョが、


「いくらエネルギーを結界だけに注ぎ込んだとはいえ、いつかは枯渇しますよね?一体いつまで持つと考えられてるんですか?」

話の核心となる結界のタイムリミットについて質問した。


「試算では残り480日と少しですね。それ以降は結界が維持出来るか分からない。そう結論付けられました」

「そうなんですか・・・」


(リアルに換算すると5月末までか。賞金レースの6分の1で発生するイベントとしてはデカすぎるが、クリアする為にもクラン全体のゲームスタイルの軌道修正が必要かもな)


長いようで短いタイムリミットまでの猶予を聞き、クラン主体のスタイルから変更するかどうか悩む。

一方、語るべき事を終えたフレンは一息ついた後、部屋全体を見渡し発言した。


「以上がこの町や世界の真実です。何か質問はありますか?」

「情報の洪水に溺れ過ぎて何から聞けば良いのか迷うけど、俺達は何をすれば良い」


「そうですね・・・。まず、何より優先されるのは強くなって頂く事ですね。現状の渡り人の方々では解放する為の準備ですら、スタートラインに立ててない方が殆どですので」


「殆どって事は、スタートには立ててる人も居るんですよね?」

「個人レベルならユサタクさんやアーサーさんは立ててると思います。でも・・・」

「ああ、本当に渡り人のトップ戦力だけなんですね」


「ええ、ですが皆様の成長は著しいので解放準備に参加する為の基準をこの場で発表させて頂こうと思います」

「本当ですか!?俺達【ユーザータクティクス】が一番乗りしてみせますよ」


「やはり皆様は頼もしいですね。では、基準ですがクランメンバー全員が初期ジョブの見習いからの卒業、そしてクラン全体の累積ジョブレベル600以上とさせて頂きます」

「見習い卒業は判るんですが、累積ジョブレベルってなんですか?」


「自身が所持しているジョブの合計レベルの事ですね。例えば【見習い戦士】と【見習い騎士】が上限のレベル10・【戦士】レベル3・【騎士】レベル2・【見習い農家】レベル5の場合、累積ジョブレベルは30となります」


「成る程、じゃあ今回の場合は600÷20人で、クラン平均累積ジョブレベルが30になれば良いって事ですね」

「その通りです。手を貸して頂いてる身で条件を付けるのも恐縮なのですが、この世界の未来の為、そして皆様の安全の為にもお願いします」


「気にしないで下さい。町の解放の為にも一刻も早くクリア出来るよう頑張ります。それで良いよな!」

「当然っすよ!」

「頑張りますよ!!」


渡り人への負担を考え、心苦しくなっているフレンを安心させる為に、俺含めた全員が乗り気であるとアピールする。


「そう言って頂けて安心しました。【ユーザータクティクス】の皆様、この世界の為に尽力して頂き本当にありがとうございます!」

そう言ってフレンは深々と頭を下げたのだった。


tips

町の真空化

まず住人全員を強力な石化魔法で半永久的な石化状態にした上で、魔素管理の機能で町中を真空状態にした上で真空状態を保つ為の結界を張る。

それとは別に、町の外側にモンスターが侵入しない様にする為に、別の強力な結界を張るという2層構造となっている。

※真空化で起きるかもしれない、物理現象は魔法の不思議な力で起きない(運営が思い付かなかっただけともいう)

次回の更新は3月24日(日)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔素って気体なんでしょうか。とにかく空気と分離はできないってことですね。 規模感がよくわかりません。3万人きても大丈夫な街ですから、ノアの人口は10万くらい? 関東だと鎌ヶ谷市や富士見…
[気になる点] クランに加入していない人達はどうなるの? 何処かのクランが解放したら次の街には皆が行けるようになるの? クランの上限人数や最低人数には決まりがあるの? メンバー追放や途中加入はアリ? …
[一言] 中にアンデッド、ゴーレム系のモンスターを沸いたらどうする?
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