62.ランクアップとビッグニュース
『どうしたん?時間的にフィールドやろ?』
急なコールにびっくりしながらも用件を聞くと、
『今朝受注したクランクエストのクリア条件満たしたから戻ってるとこだよ』
『おお!じゃあもしかして・・・』
『察しの通り、Eにランクアップ確定だ!』
『ええやん!おめでとう!』
俺達【ユーザータクティクス】にとって最高のニュースを教えて貰った。
『ありがとう!ソーイチは冒険者ギルドだろ?ランクアップに立ち会わないか?』
『おおう・・・。今、農業ギルドで新しい依頼受けてな。その為に移動中やし無理やわ』
普段なら絶対に参加するのだが、期限ギリギリのクエスト受注中なので泣く泣く断りを入れる。
『それは残念だ。ちなみにどんな依頼だ?』
『農業ギルドが持ってる農地50地区の畑仕事でな、貰えるアイテムは良えんやけど、種蒔きの誤差30分以内の条件ついた上に、期限が今日中やねん』
『その条件で7時間しかないのか。確かに余裕はあまり無さそうだな』
依頼内容を教えると、ユサタクはその作業量を思い浮かべたのか、残念そうにしながらも納得したようだ。
『そやから、ランクアップの様子とかは後で教えて』
『わかった、クランミーティングの時にでも話すよ。それよりソーイチからは何かないか?』
『ふっふっふ、実は特ダネを用意してるで!』
ユサタクの問いかけに対し、自信満々に答える。
『お!何を掴んだんだ?』
『今日は2冊本読んでな。ノアの町周辺のモンスター情報と採集情報をたっぷりゲットしたんや!』
『いいじゃないか!そういう情報は、俺らも感覚で把握はしてるけど精度はイマイチだし本当に助かるよ。ちなみにそのデータは勿論【メモ】でまとめてあるんだよな?』
俺のつかんだ特ダネを聞き、テンションが上がるユサタクだったが、クランのリーダーらしく記録に残したか確認してくる。
『当然!モンスター情報が2枚、採集情報は地図付きで3枚まとめてるし、部数も20部用意してるで』
『でかした!報酬は後で支払うからギルドの倉庫に入れておいてくれ』
『りょーかい。後は【見習い司書】もうちょっとで卒業出来そうや』
『本当か!?』
『ああ、上限まで900ちょいやから畑仕事の合間にプレゼント用のサイン【コピー】してたら到達すると思う』
『【見習い司書】も【見習い農家】もまだ上限達成したプレイヤーはいないし、ソーイチが未だトッププレイヤーだとワールドアナウンスで知らしめてくれ!』
『おうよ!任せといてや』
ユサタクの祝福と激励に気を良くした俺は威勢よく返事を返す。その後は、住民の畑仕事の受注条件等の情報を共有した後、目的地に到着したのでコールを終えた。
「ここが依頼場所か。めっちゃ広いけど住民の畑もプレイヤーみたいに場所は固まってるんやね。で、あっこの管理小屋にギルド職員が監視と管理をしてるって訳か」
辺りを見回すと広大な農地が広がり、その中に1軒の管理小屋が建っている。俺は依頼の場所を確認する為に管理小屋に顔を出しに行った。
「すいませ〜ん、農業ギルドの依頼で来たんやけど依頼の場所はどこですか?」
「いらっしゃい、まず確認するんで依頼書とギルドカードを見せてくれるかな?」
言われた通り、ギルドカードと依頼書を差し出すと驚いた顔をして管理人さんがこちらを覗き込んできた。
「君がソーイチさんだったのか!?渡り人に30地区くらいしか売れてなかった農地を、一気に200以上まで売れるキッカケになった立役者の!本当にありがとう、ギルド職員として改めて礼を言うよ!」
「ギルド内でその話、広まってたんか。でもウチらのクランの為にやった事やから余り気にせんといてや」
クランメンバーに農地の大量購入を勧めた事がどうやら農業ギルド内で共有されたらしく、高いテンションで感謝の言葉を伝えられる。
「それよりせっかくST満タンやし先に依頼場所教えてくれへん?」
「そ、そうだな。ソーイチさんの担当場所まで案内するよ」
興奮してたのが恥ずかしかったのか少しバツの悪そうな顔をしながら俺をBの立札が立ってる区画へ案内した。
「ここの白いラインで囲ってる範囲が、今回ソーイチさんが受注された範囲になります。何かご不明な点や質問があったら管理小屋まで来てくれ。出来る限り対応するから。」
「ありがとう。そういえばお名前聞いてなかったんで教えてもらえます?」
「名乗って無かったか。俺の名前はペーター。以後お見知り置きを」
そう言って握手を交わした後、ペーターは管理小屋へと帰って行った。
「さてと、ジュース飲んでさっさと始めるかね」
少しでも早くレベルが上がるよう、人参ジュースを飲み干した後、まずは耕す為にアーツを放ち続ける。そしてSTが尽きた後、次の作業に移ろうとした時、
ー所属しているクランが【モンスターの大量討伐依頼】をクリアしましたー
ー所属しているクランが【アイテム収集依頼】をクリアしましたー
ー所属しているクランのクランランクがEになりましたー
《【ユーザータクティクス】様がプレイヤークランで初めてクランランクがEになりました》
と立て続けにシステムアナウンスとワールドアナウンスが流れた。
(ランクアップ来たぁぁぁ!!早速、良くやったとお祝いしとくか)
『ランクアップと最速ゲットおめでとう!』
『ありがとう!ランクアップも嬉しいんだが凄い情報が手に入るかもなんだよ!!マジで凄いんだよ!!』
お祝いコールを送ったのだが、どうやらランクアップ以上のナニカを手に入れたのかユサタクのテンションが天井知らずで上がってるのを感じる。俺は気圧されながらも内容を問い詰めると、
『圧が強いな〜。そんなにヤバい情報なんか』
『まだ詳細は聞けてないんだが、今まで謎だったノア以外の町についてだよ」
本当にビッグな情報を入手したみたいだった。
tips
ペーター
農業ギルドの職員で、住民用に農地を泥棒や不審者から守る為の管理&監視をメイン業務としている。
昔はBランク冒険者だったのだが、子どもが産まれたのがキッカケで比較的安全かつ安定しているこの業務に転職した。
次回は3月18日(月)午前6時に更新予定です。
ブックマークや評価していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。