6.天職と言われても……
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一部表記を変更いたしました。(2024年1月8日)
作業室に到着すると、そこには横長の長方形の机の上に少し黄ばんだ依頼書と思われる紙と何かの空き瓶が山のように積み上がっていた。
更に覗き込むと、ひたすらアーツ放ち、依頼書の山を更に高く積み上げる男性の姿があった。
「作成依頼を受けてくださったソーイチさんをお連れしました。私は受付に戻りますので、トーマスさんは作成手順を教えてあげてください」
「応援が来たんですか〜。このままだとしばらくは寝ることもできないと思ってたんで、本当に助かりるよ!!」
まだ俺達が来てから1時間も経っていないのに、本当に辛かったのか涙を出しながらお礼をいうトーマスさん。その姿に若干引いてしまったのだが、それを隠しながら返答した。
「気にしないでください。俺にとってもメリットしかない依頼だったんで。あ、挨拶が遅れました。渡り人のソーイチと申します。しばらくの間よろしくお願いします」
「僕はトーマス、この街の冒険者ギルドの依頼書作成班を担当しているよ。これから一緒に働くんだし、ソーイチ君もくだけた感じで喋ってくれていいからね」
仕事以外で敬語はほとんど使わないのでトーマスの気遣いに感謝を述べた。
「お気遣いありがとう。これからはなるべく普段通りにしてみるわ、トーマスさん、よろしくな」
「さん もいらないよ」
「オッケー。それで早速なんやけどトーマス、今回の仕事を教えてもらえると受付嬢さんから聞いたんやけど始めてもらっていいか?」
少し長くなりそうだったので、早速本題に入る。
「ああ、そうだね。それじゃあ、始めて行きたいんだけどソーイチは【大陸語】と【メモ】のスキルがあるって事でいいんだよね?」
「ああ、後推奨技能に載ってた【メモLv2】と【待機Lv1】は持ってるよ」
そういうとトーマスはまるで雷に打たれたような衝撃を受けた様子で詰め寄ってきた。
「本当かい!!渡り人さんって基本的に戦闘系スキルしか取らないって聞いてたから驚いたよ!ソーイチってまるで依頼書を作成するために生まれてきた人みたい!」
「依頼書作成が天職と言われても……。まあええわ。とにかく作業説明よろしく」
ある意味失礼なトーマスの評価に戸惑いながらも開始を促す。
「何度も話の腰を折ってごめんね。それでは手順を説明するよ。まず、お手本の依頼書を渡すから、その通りにこの用紙に書いていって。コピーのアーツはまず自分の手で1枚書かないと発動できないからね!」
そう言って見本の依頼書を見せてきた。
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【ベビースライムの討伐】
ベビースライムを10匹討伐
【報酬】500ゴールド AGP20
【期限】依頼受注時より8日間
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(受付嬢さんも言ってたけど、作成依頼って本当にお金少ない割にAGPは多めになってたんやな〜)
「これを書き写していけばいいんやな」
「うん。ソーイチはまだ【大陸語】のレベルが低いだろうし時間かかるかもだけど、まずは丁寧にお願いね。後、【待機】持ってるみたいだから紙の補充は僕がするよ!僕のレベルは高いから移動範囲も少しだけ広いしね」
「了解、早速やってみるわ」
トーマスの説明に頷き、俺は作業机に座りペンを持つ。
(また、文字をなぞる作業の始まりか……。でもこれ描いてったら【大陸語】も上がるし、やるしかないか。というかベビースライムってなんやねん。最初は普通にスライムでいいやろ。運営さん画数多いって〜)
若干理不尽な怒りを運営に覚えつつ、3分程掛けて1枚目を書き上げる事が出来た。
「確認するね。……うん、問題なし。じゃあ準備も整ったし2枚目以降の説明するね。と言っても2枚目以降は紙にコピーのアーツを使うだけだよ。白紙の依頼書に手をかざして【コピー】と唱えたらそれで完成。やってみてよ」
「了解。えっと【コピー】」
言われた通りにアーツをMPがなくなるまでの15枚の依頼書に放ち続けると、先ほど書いた文章と同じものが15枚追加されていた。
「こんな簡単なんか!?手書きやと1枚で3分近くもかかってたのにアーツやと2分で15枚って……」
「オッケー、オッケー。というか【メモ】を最大レベルの10まで上げると5枚同時とか出来るようになるよ!初級スキルはレベルが上がるのも割と早いから、もしかしたら数日中にも上限まで育つかもね!」
アーツの無法さに驚いていると、トーマスは楽しそうな声で衝撃的な発言をした。
「マジか。というかスキルレベルって10が最大なんか?」
「初級スキルはそうだね。中級が30、上級が50になってるよ。後スキルが最大になったら称号が手に入るから、さらに効率が上がるよ!」
「称号?そういえばステータス欄にあったけど、あれってどんな効果なん?」
「称号は言ってみれば外付けのメインスキルって所かな?例えば【メモ】スキルが最大になったら【メモ魔】って称号が手に入るんだけど、この称号をセットしているとメインスキルに【メモ】を入れてなくてもレベル5相当の【メモ】と同じことが出来るんだ!後、一部スキルは重複しての効果もあるからとっても便利だよ!」
「凄いな!じゃあ、称号付けまくったら無限にアーツもスキルも覚えてるのと同じってことやな」
興奮しながらそう言うと、トーマス残念そうに首を振る。
「流石にそんなに都合のいいもんじゃないよ。称号は1つまでしかセットできないからね。ただ、複数のスキルを最大にした時とかに、称号が統合されて複数の効果があるものはあるけど」
「そんな都合のいいもんはないってことやな。でも複合称号もええな〜。どんな組み合わせなんやろ」
「あまりヒントは出したくないけど、1つだけ教えてあげる」
「ええんか!?」
「うん、今から教えるやつを覚えたら僕の仕事も楽になるからね」
「めっちゃ助かるわ!それでどんなスキルなん?」
「まあまあ落ち着いて。称号名はサプライズにしたいからその素だけ言うね。
必要なスキルは【待機】【瞑想】【休憩】。この称号を手に入れたら君は更に依頼書作成の才能が、更に開花するだろうね!」
「結局それが天職になるんかい!!」
驚愕の事実なのに思わずツッコミを優先してしまった。
tips
称号
取得数に制限はないがセットできるのは1つまでとなっている。
称号の取得条件は複数あり、
①スキルレベルが最大になる(単数・複数)
②メインジョブとサブジョブが特定の組み合わせかつジョブレベルが一定以上である
③モンスター討伐で一定以上の成果を出す
例外はあるが基本的にはこの3つの方法で取得が可能となる。
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