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61.ギルドの農地と新しい依頼

「ギルド所有?まあ農業ギルドやしそりゃ農地はあると思うけど、こういうのってギルド職員で対応すると思ってたわ」

ギルド所有の畑と聞いて思い付いた疑問をアレンに投げかける。


「おっしゃる通りギルド職員だけで管理してる農地も有るのですが、今回の依頼分は所有権が放棄された事で後からギルド所有になった農地なんですよ」

「所有権の放棄?どういう事や?」


「様々なパターンがあるのですが、代替わりによって離農するケースや借金が返せなくて差し押さえになったケースが多いですね」

「ああ、親とジョブ適性が違ったら農家は継がんよな〜。それなら売り払うか」

農地を放棄する具体例を聞いて納得する。


「そうしてギルド保有となった後は、同時期に売却されたアイテムを報酬にして農地の管理を依頼として出してるんですよ」

「アイテムの報酬?それってもしかして畑の横でゆったり出来る椅子とかある?」

もう一つの目的が達成しそうな予感に前のめりで詰め寄る。


「かなり具体的な質問ですね。確かにありますよ」

「マジか!そういうの欲しかったんや!依頼受けたいんやけど」

「お、お待ち下さい。受けるかどうかは依頼書を見てからでお願いします!」

既に受ける気満々だった俺に慌ててストップをかけるアレン。


「そりゃそうか。お目当てのアイテムが手に入るかもやったんで先走ってもうたわ」

「本当ですよ。当ギルドは大丈夫かも知れませんが、ギルドによっては割に合わない依頼だったり、想像していたのと違ったりしますからね。トラブルにならないよう依頼書の確認は忘れないで下さい!」


依頼の確認漏れのトラブルが多いのか、先程までのニコニコ状態から般若顔に豹変するアレン。

「ごめん、これから気をつけるわ」

「いえ、こちらこそ厳しく言ってしまい申し訳ございませんでした」


「いや、アレンは俺の為に言ってくれたんやし謝らんでええよ。逆に早めにそういうの聞けて良かったし怒ってくれてありがとうな」

「そこまで言われると・・・、兎も角ソーイチさんご希望の依頼書です!」

俺が感謝の言葉を伝えると誤魔化す様に依頼書を提示してきた。その内容は、


===================================

【ギルド保有の畑仕事】

ギルドの保有する農地50地区全て、【耕す】【種蒔き】【水撒き】を行う

※収穫時間を統一する為、種蒔きは誤差30分以内に行う事

必要技能:農家系ジョブ 生産職ランクE以上 農家系スキル2つ以上の所持

推奨技能:【休憩】 【待機】


【報酬】150CGP 75AGP 【木漏れ日の安楽椅子】


期限:受注日の農業ギルド閉館まで

===================================


となっていた。

「この依頼の報酬にお金は無いんやね」

依頼書を見て気になったポイントについて質問する。


「ええ、報酬の【木漏れ日の安楽椅子】は特殊効果もあって買うと結構しますので、お金の報酬は無いんですよ」

「なるほどな〜。因みにこのアイテムの効果って何なん?」


「座っている間は【休憩】【待機】【瞑想】のスキルレベルが2上昇する効果ですね」

「え!?座ってる間は3種類もスキルのレベル上がるん!?いくらお金無しの依頼とはいえ、報酬に入るレベルのアイテム超えてへん?」

予想以上の効果に依頼が間違ってないか確認する。


「ご存知かもですが、休憩系のスキルは1レベル当り6秒しか回復時間が短縮されないので、スキル3種の混合の割には価値が上がらないんですよ。またアイテム自体も農地と一緒に売却された中古品なので報酬にしても大丈夫なんですよ」

「中古か〜。それなら納得や」

アレンの話を聞きながらも、頭の中でこの依頼が達成可能かを検討する。


(50地区に【耕す】【種蒔き】【水撒き】か。じゃあ依頼達成に必要なアクション数は150。アーツ縛りなら750ST、水撒きは手動でやったとしても500はかかる。今が12時前やから〆切まで7時間ちょいか〜。達成は出来るけど自分の農地の管理に支障出そうやな)

報酬は良いのだが、依頼書には種蒔きの誤差30分という指定がある為、STを節約できる部分が水撒きしか無い。


「とても悩んでるみたいですね」

「STのやり繰りが難しくてな〜。種蒔きもアーツ使うんやったらどうしても足らんのよ」


「全部手動だと1時間くらい誤差出ちゃいますしね」

「そうそう、余裕持って達成するにはポーション使うしか無いかな?」


「レベルアップって遠いんですか?かなりの作業量なのでその分得られる経験値も豊富ですが」

「そういえば最近ちゃんとは見てなかったな。確認するわ」

アレンの助言に従い、久しぶりにステータスを開く。


=====================================================

ソーイチLv9(11,532/13,000)

見習い司書Lv9(8,109/9,000)

見習い農家Lv8(6,440/6,800)

HP:149/149 MP:2/166 ST167/167

=====================================================


(めっちゃ成長してるな!キャラが上がるまではちょっと遠いけど【見習い司書】の上限まで千を切ってるやん!これならSTの限界まで耕して、その後パースから貰ったMPポーション使ってサインを【コピー】しまくったらキャラのレベルアップに近づくやろ)


想像よりも成長していた事実に喜びながらも、自分がどう動けば効率が良いのかをシミュレートしていく。そして、どんぶり勘定ではあるがいけると判断したので依頼を受ける旨を伝える。


「うん、確認したらええ感じでレベル上がりそうやし依頼受けるわ」

「受注ありがとうございます!場所は渡り人専用の場所には無いので地図をお渡ししますね」

そういって手渡された地図をもとに依頼場所へと向かおうと農業ギルドを出たタイミングで、


『ソーイチ、今時間大丈夫か?』

ユサタクからのコールが掛かってきた。



tips

ギルド所有農地


農業ギルドが保有する農地。その役割には2種類ある。

1つはギルド職員が研究や食糧の備蓄用に管理する農地。

もう1つは様々な理由で手放された農地を購入した農地。


後者の管理は主に特別依頼で賄われており、農地と同時に購入したアイテムを報酬に付ける事で駆け出し農家が有用なアイテムを手に入れやすく&経験を積む事が出来るようにしている。


駆け出し用と言いつつ生産職ランクがEが受注条件なのは、そもそも住民はEランクスタートなのでプレイヤーも条件を揃えた結果こうなった。

次回は3月16日(土)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

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