59.モンスター情報と魔素
席についた俺は用意された依頼書を書き写していく。
「トーマス、今日は色々する事あるから途中で席立つけどええか?」
「最低枚数の30枚超えたら移動オッケーだよ!でも・・・」
「ギルド閉まる前に戻らないとアウトやろ?わかってるって」
「うんうん、ちゃんと覚えてたみたいだね」
トーマスとの軽口を叩いてる内に書き写し作業をやり終えた。そこからはいつも通りMPが尽きるまでアーツを放ち続けるのだが、
ースキル【メモ】のレベルが7に上がりました。【メモ】使用時に消しゴム機能が解放されましたー
ーアーツ【4枚刷り】を一時的に覚えましたー
本日4つ目のスキルレベルが上昇した。
(マジで今日は調子良いな!それに消しゴム機能はマジでありがた過ぎる!おまけに睡眠ボーナスで一時的に【メモ】がレベル8になってるから新アーツまで一時習得出来たな)
4日目に突入してからのスキルのレベルアップや新機能開放に喜びながら【4枚刷り】の効果を確認する
【4枚刷り】消費MP9:直前にメモした内容を別の紙に4枚コピーする。
(うん、予想通りやな。今はMPすっからかんやし、回復したら試運転するか)
アーツを確認し終えた俺はトーマスに声をかけた後、回復中に読む本を選び始める。
(図書館で借りた本は残り3冊。今日はモンスター図鑑を読んでいくか)
【モンスター情報①ノア周辺】を手に取った俺は【メモ】用の紙を横に置き読み始める。
(ノア周辺ってタイトルやけど島全域載ってるんやな。モンスターの絵や出現地域とドロップアイテム、所々にある作者の小ネタや豆知識も載ってるしめっちゃおもろい本やん)
精読する前にざっと目を通したのだが、その情報量と内容の面白さに初めて百科事典を見た時の様な興奮が湧き上がってくる。
(載ってるモンスターの種類は30匹弱、1枚じゃまとめるの無理やし半分ずつ2枚に要約するかな)
情報収集の方針を決めた俺は【ベビースライム】から順番に生息地や習性、ドロップアイテム等を【メモ】していく。
(へ〜、ベビースライムって塩とか生産系アーツの【乾燥】でも倒せるんか。しかもその時【スライムの被膜】ってアイテムも確定ドロップするって書いてあるけど何に使うんやろ?)
読み込んでいく内にただ倒すだけで無く、特定の手順で倒す事で手に入るアイテムの情報も豊富に載っており、【メモ】をする手が止まらなくなる。
あっという間に、半分ちょいのモンスター情報を書き留めた俺はクランの人数分【コピー】すべくポーションを飲んだ。
「あれ?最近ここじゃ飲んでなかったけどレベルアップ近いのかい?」
「いや、今回の本の内容は特に有用そうやからクラン全員分の用意しよかなって」
ポーションを飲む俺に気付いたトーマスが話しかけて来たので説明しながらまとめた資料を【コピー】していく。
「なるほどね、それなら納得だよ!」
「モンスターの分布や戦闘スタイルとかは勿論やけど、倒し方によってドロップが変わるのは共有必須っぽいしな」
「だね〜。司書は知識の伝道師だから、ソーイチは仲間の為にもドンドン本を読んでいこうね!」
「まだ2冊しか読めてないけど、これから挽回していくわ」
トーマスの助言を受け、読書量を増やす事を決めた俺は3冊目の後半戦に挑み始めた。
(こっからはレアモンスターや時間限定系のが中心みたいやな。って朝5時から1時間限定って外泊前提やん)
前半とは違い特殊なモンスターが多く書かれており、1匹当たりの情報量も増えていく。それでも1時間程で全てを要約する事が出来た。
(終わった!!我ながらいい感じにまとめれたんちゃう?)
自分の仕事の出来に満足しながら、2枚目の資料も【コピー】していく。
(よし、クラン用の資料も終わり!後は自分用の資料にチェックでもつけていこかな?)
出来上がった2枚の資料を見直し、自分が気になった所に赤のラインを引いていく。中でも、
【フェイクグラス】
ノアの町周辺に出現。普段は道端の草に擬態している。テイム可能。成長させるとランダムで種系統を生み出すアーツを覚える。好物は肥料系アイテム。
【プチ・ウンディーネ】
門を出て北西方向に存在する泉に朝5-6時に出現、物理完全耐性。テイム可能。ウンディーネ系の放つ水は農作業にも活用できる。好物は聖水。
この2つの情報は特に目立つようにマーキングしていく。
(何やこの農家の為に生まれたみたいなモンスターは!?俺にテイマーになれと言うんか!?)
農家にとって魅力的なモンスター達に、次のジョブの候補が決まりそうになる。
(落ち着け!ジョブ関連は手が空いた時に改めて考えよう!今の感じだとノリで次のジョブを決めかねんし)
テイマーを選ぶかどうかは一旦保留し、俺は見直しも兼ねて本をパラパラめくっていく。
(今回の本は挿絵もあって分かり易かったな。ただ巻末に魔素の濃度によってイレギュラーモンスターが出現するかもってあるけど魔素ってなんや?)
一通りまとめ終わったが、巻末の記述に新たな疑問が浮かび上がってくる。それでも【モンスター情報①ノア周辺】を読了したおかげで【大陸語】のスキルレベルも3に上がった。
(本日5個目!まだST全快まで時間あるし、2冊目行くかな)
スキルレベルの上昇に喜びながら次に読む本を取り出そうとしていると、暇なのか目敏くトーマスが話しかけてきた。
「お、読み終わったみたいだね。面白かった?」
「小さい頃に図鑑を見てはしゃいでたの思い出したわ」
「ああ、図鑑系って読むと童心に還るよね」
「後、気になる記述があったんやけど魔素ってなんや?イレギュラーモンスターとやらに関係あるっぽいみたいやけど」
読書中に出てきた魔素について聞いてみると、トーマスは少し考えながら答えた。
「う〜ん、簡単に言うとモンスターや魔族が生まれる素かな?空気中に漂う魔素の数値が高いとより強いモンスターが自然発生する確率が高くなるんだよ」
「それって下手したら町中にも出現するかもって事?」
「町に流れ込む魔素を防ぐ装置があるから大丈夫だけど、モンスターが町に攻め込んだりで装置が壊れちゃうと危ないかもね」
「怖いな〜。魔素って無くす方法無いんか?」
条件次第で安全なはずの町にモンスター出現の可能性を知り、対処法が無いか質問する。
「それが討伐依頼だよ。モンスターって土地ごとに最低出現数が決まってるらしいから、ドンドン討伐していくと不足したモンスターを復活させようと魔素が消費されるんだ」
「なるほどな〜、討伐依頼って町の安全だけじゃなくて、その土地の魔素を安定させる意味もあるんやな〜」
ゲーム的な都合だと思っていた討伐依頼にもしっかり意味が考えられてるのを知り、改めてMJOの世界観が好きになっていくのだった。
「詳しく書いたのが図書館にあると思うから探してみるのをオススメするよ」
「今借りてるの読み終わったら読んでみるわ」
トーマスの助言を受け、新たな読むべき本を心のメモに書き加えた。
tips
魔素
モンスターの素となるエネルギー。
魔素により生み出されたモンスターは死体が残らず、討伐するとドロップアイテムに変換される。
ノアの町の周辺のモンスターが低レベルでも対処出来るのは、周囲の魔素の濃度が低いからであり、濃度が高い土地は出現モンスターも強くなる傾向がある。
次回は3月12日(火)午前6時に更新予定です。
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