51.畑仕事とモチョ育成計画
(さて、買って来た分は全部終わったな。ただ10分後には朝に植えた分の収穫もあるから準備だけはしとくか)
そう考え俺は収穫前の農地の前に座り込み、タイマーをセットする。
「ソーイチさん、お疲れ様です。鬼気迫る感じで畑作業してましたね」
揶揄うような口調でモチョが話しかけてくる。
「まさか、ずっと見てたんか?」
「ええ、私の家はソーイチさんの敷地内ですし、夜の宴会用の料理を作ってたのでどうしても見えちゃうんですよ」
モチョの言葉で、ようやく辺りに美味しそうな匂いが広がっているのに気がついた。
「確かにええ匂いやな。今日のメニューはなんなん?」
「大体は昨日と同じですね。何品か追加したのもありますけど、まだ食材が揃い切ってないので」
「なるほどな」
「後は、宴会開始時間ってソーイチさんとリーダーがインタビュー中なんでちょっと手抜きした面もあったり?」
「ああ〜、嫌なことを思い出してしまった。後2時間弱やもんな」
「いいじゃないですか。ソーイチさんはMJOと【ユーザータクティクス】のトッププレイヤーなんですから、テレビくらいバンバン出ちゃいましょうよ」
励ますつもりかもしれないが、その言葉を受け軽くイラッとする。
「よし、今の言葉で当分の目標が決まったわ」
「いきなりですね。どんな目標です?」
「農業クラン化したウチの生産力をフルに使ってモチョをトップの料理人系プレイヤーに仕立て上げるわ」
「本当ですか!そこまで励まされちゃいましたか?」
「いや、逆や。モチョを同じトッププレイヤーにしてテレビの出演断れん様にしたるって事や」
「うぇええええ。いやですよ。テレビ出るのは!」
「トッププレイヤーは出なあかんのやろ?モチョが言ったんやで」
「うう〜。そうですけど・・・」
少し凹んだモチョを見て少しスッキリしていると、アラームが鳴り響いた。
「さてと、収穫可能になったしモチョの為にも畑仕事頑張るか!」
「ちょっと釈然としないですが頑張って下さい・・・」
トーンの落ちた声での応援を受けながら朝植えたジャガイモとカブを収穫し別の種を植える。
その後キノコ小屋で1株目を収穫すると目の前から原木は消え、アイテム欄に【原木(栽培回数残り0)】が1つ入っていた。
(てっきり3回収穫したら消えると思ってたけどアイテム残るんや?何に使うかわからんし今度アレンに聞いてみるかな)
謎のアイテムを不思議に思いつつ一旦忘れ、空いたスペースに新たな原木を置きながら収穫と水撒きを併行して行う。
20分後に作業を終えた結果、ジャガイモ13個、カブ14個、シイタケ54個が収穫出来た。
(思ったよりシイタケ収穫できたな。とりあえず、ギルドの収納に入れるか)
収穫した内からシイタケ50個とカブ・ジャガイモを10個ずつ倉庫に入れ、10,500ゴールドを引き出した。
「モチョ〜、俺の農地は全部作業終わったけど、他のメンバーの農地ってもう触ってもええのん?」
「ええ、大丈夫ですよ。今【見習い農家】になったのが全員戦闘ジョブなので、フワフワさん以外の畑はノータッチなんですよ」
「まあ、そうなるやろね」
「ですのでそれぞれ半分までは作業終わらせて大丈夫だと思います。因みに面倒にならない様、メンバー毎に育てるものは決めてますよ」
そう言ってモチョは農地持ちのメンバーと対応した作物を書いた【メモ】を手渡して来た。
「これは便利やな。後で書き写すとして・・・。種蒔きよりSTの限り耕す方が良いんかな?」
「どうしてです?早く種蒔きすればその分早く収穫出来るじゃないですか」
「でも、俺1人では到底無理やろ?しかも帰りたてのメンバーはSTも無いし重労働を先に終わらせて、種蒔きと水撒きだけ任せた方が結果的に良いと思うねん」
「確かにそうですね!それにソーイチさんから共有があったスキル習得もついでに出来そうですし、完璧ですよ」
「そうやろ?という訳で片っ端からアーツ使っていくわ」
「じゃあ、後で耕した分教えてくださいね。【メモ】しますんで」
「オッケー」
(初めての自分以外の農地で若干緊張するな〜。今回はモチョに言われた通り区画毎に5面ずつ耕していくかな。)
初めての自分以外の農地での畑仕事に緊張しながらも、手付かずの農地にアーツを放ち続けていく。
畑作業開始から13面目を耕した頃、キャラのレベルが8へ成長した。
(あれ?もうレベルアップか。せっかくST節約したのに無駄になったな。)
無駄になったSTにがっかりしつつも引き続きアーツで農地を耕していく。やがて全てSTを使い切った後疲労で座り込んでいるとモチョから声が掛かる。
「お疲れ様でした。なんかベルトコンベアみたいに動きながらピカピカ光るのを見ると面白いですね」
「ああ、今回はアーツ連発やったからな〜。俺も見てみたかったわ」
「今後はそれが見慣れた光景になると思いますよ。それより耕した面数を集計してるんでこれでも食べて休憩しといて下さい」
そう言ってモチョから、ジャーマンポテトを渡される。
「これって新作?」
「ええ、材料は変わり映えないですが美味しいですよ」
モチョの言葉を受け、早速ジャーマンポテトにかぶりつく。
「ベーコンの旨味と塩気がポテトと絡んで最高やな!ビール余ってない?」
「ダメですよ〜。もうちょっとでテレビに出演するんですから」
「そんな〜。撮影後に絶対飲むから残しといてな!」
「ご褒美に色々用意してますんで頑張ってください」
「楽しみにしてるからな〜」
ご馳走の約束を取り付けた俺は食事を楽しみつつ、農作業の成果を確認する。
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ソーイチLv8(7,408/9,500)
見習い司書Lv7(4,672/5,000)
見習い農家Lv7(4,354/5,000)
HP:136/136 MP:146/146 ST:3/151
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(遂にSTがMPを超えたな。まあ、【見習い農家】はサブやからMP上がらんのと称号で15ポイント上乗せがデカいよな)
ステータスを見ながら色々と考えていると、騒がしい集団が近づいてくる。
「遅くなって悪い!ソーイチ用に向こうから台本貰って来たから準備するぞ」
それは俺にとって悪魔よりタチの悪い奴の帰還であった。
tips
ソーイチの農地状況(収穫可能時間)
キノコ小屋 4棟(4日目7時)
カブ・ジャガイモ各1地区(4日目7時)
魔力草1地区 (ユサタク委託分)(4日目16時)
小麦・薬草・大豆・人参・キャベツ・ピーマン・玉ねぎ・レタス各1地区(4日目17時)
計15地区所有
畑が共通財産化してるんで詳細に書くのは今回までかも?
ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。