30.賞金首制度と宣伝
(賞金首か、俺の中の子供心が疼いてくるな)
危険な匂いのする単語に心が湧き立つものを感じながらも話を進める。
「いきなり物騒やね」
「ええ、ですが町の治安を守るために大切なんです」
「そういうのって普通憲兵さんとかがするんとちゃうのん?」
「今まではそうして来たのですが、渡り人の皆様が来られてから大小様々なトラブルが発生しておりまして……。そこで近日中に導入しようかと、ギルド会議で議論されてるんですよ」
「マジですか……。同じ渡り人として申し訳ないです」
「いえいえ!私共もソーイチさんのように、殆どの方が善人だとはわかってますから!」
「そう言ってくれると助かります」
「それでも母数が多いのでその分トラブルメーカーも増えて来たので、今まで通りのやり方では難しいんですよ」
「なるほど」
(そういえば農業ギルドでゴネて暴れたやつもおるって言ってたもんな)
すでに実害が出てるのを聞いてやるせなく感じる。
「なのでEランク以上の信頼ができる渡り人の方に協力していただこう、という風に話がまとまったんですよ」
「それはええけど、どんな感じの制度になる予定なん?」
「詳しくはまだお話しする事は出来ないのですが、犯罪を犯したものに対して何らかの判別できるような術式を現在魔術師ギルドと聖職者ギルドが共同で開発しております。その術式が完成次第、制度を発表するという流れになると思います」
「発表ってどうするん?俺らのほとんどが大陸語読まれへんし声かけでも限界くるやろ?」
「そこも悩みの種でして……。何かいい案ありませんか?」
「そうやな〜」
(これインタビューの時に宣伝したらいいんとちゃうか?開始したら目印出すみたいな事してくれたら宣伝できそうやし。それかノア・タイムスと共同で号外を出すのもありやな)
フレンからの相談にアイデアが湧いてくる。
「2つアイデア浮かんだわ」
「本当ですか!!」
「ああ、まず1つ目が俺とノア・タイムスが協力して号外の新聞をばら撒くって方法。予算さえあればすぐにでも出来ると思う」
「なるほど」
「2つ目が、近々俺は渡り人の前で講演?みたいなのをする機会があるんやけど、その時に今回の話を宣伝するのもありかなと」
「講演ですか?」
「ああ、渡り人には映像を他の場所に拡散する方法があるんや」
「えっと……」
「演劇をしたとして、それを違う場所・時間で全く同じものを見せる技術といえばイメージ出来そう?」
「それは凄いですね!まるで昔女神様が使っていた魔法みたいです!」
(一応神の技術としてはあるんか。魔道具とか古代の遺産とか出てきそう)
考察が溢れてくるのを抑えながら説明を続ける。
「その技術を使って今度講演というか、インタビュー受けるみたいなんや」
「それは凄そうですね。何がきっかけでそんな立場になったのでしょう?」
「知っての通り、俺は渡り人の中で最速でEランクに上がったやろ?その知識とかを渡り人内で共有するためかな?」
「おお〜。知識の伝達とか早速司書してますね」
「そう言えば役割的にそうなるんか」
「ええ。そして今回お話しする内容の中に、賞金首も含んでくれるという訳ですね?」
「そう言う事。ただこっちは早くて4日後やから、制度開始まで間に合わんかもしれんな。まぁ、その時は告知から周知へと目的変わるけどええ?」
「もちろん!少しでも多くの方に知って頂けますし、情報の拡散は本当に助かります」
「それは良かった……あっ、始まったら人形とかの目印が欲しいな」
「受付窓口がどこかわかるようにする為ですか?」
「それもあるけど、文字を読めん渡り人用に、見ただけで賞金制度が始まったってわかるようにしたいんよ。だからインタビューの時に、その目印も併せて周知したいと思ってな」
「それ良いですね!」
「そうやろ?だから明々後日の午前中までには決めといてくれへん?依頼受けにきた時に受け取るから」
「わかりました。ギルドマスターに伝えておきます」
「頼んだで〜」
フレンの相談に乗る事でインタビューで話すネタも増え、落ち着きを取り戻した俺は散策を続ける。特に意味もなくブラブラしていると、いつの間にか露店通りまで来ていた。
(所持金300ゴールドか。ここまで金がないと逆に吹っ切れるもんやな)
所持金は無いが露店を冷やかしながら歩いているとアマネが暇そうに店番をしていた。
「よ〜、暇そうやな」
「ソーイチさんこんにちは。今の時間帯って暇なんですよ……。って露店の話は置いておいて聞きましたよ。出演依頼を受けてくれたんですよね?」
「知ってたんか?」
「そりゃ私もチームの一員ですからね」
(この言い方は俺がテレビ出るのはチーム中に広まってるってことやな。逃げ道が完全に塞がれた気もするけど、折角やし話聞いてもらおかな?)
胸を張って答えるアマネを見て出演に関しての悩みを打ち明ける。
「その件で相談あるんやけど、聞いてもらえる?」
「勿論!相談に乗りますよ!」
「ありがと。で、相談なんやが話のネタは幾つかあんねんけど、それ以外で準備する事ってなんかある?」
「そうですね〜」
俺の曖昧すぎる相談に考え込むアマネだが俺をひとしきり眺めた後に気まずそうに答えた。
「少し言いにくいんですけど」
「なんか思いついたん!」
「今更気付いちゃったんですがソーイチさんって」
「俺って?」
「未だに何も装備してませんよね?アバターとはいえある程度は着飾った方がいいと思うんですよね……」
tips
憲兵
ノアの町の治安を守るために日々目を光らせる存在。結婚などを理由に冒険者を引退した者たちが、自分の能力を活かしつつも比較的安全な仕事として人気な為人数は多い。治安維持以外に雑務の手伝いも行っており、4話でプラカードを持っていた人も実は憲兵である。
ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。




