29.テレビデビューと現実逃避
『出演って何でや!?』
『ソーイチがウチのメンバーなのは広まってるからな。色々な所からオファーが来てるんだよ』
『色々!?複数きてるんか!?』
『プロゲーマーはキャラ性も大事だからな、謎のメンバーが不遇と言われたジョブで無双してるんだぞ?物語性が抜群じゃないか』
『いや、自分でもネタ的に美味しいとは思ってたけどいきなりテレビに出演って。【ファン学】書いてた時ですら出た事ないで』
『そこは俺も一緒に出るから大丈夫だって。あと撮影はゲーム内だから映るのはアバターだし、放送してるのも民放じゃなくて有料チャンネルだから規模も大きくないって。ソーイチはテレビ出演は初だけどアニメの円盤特典で顔出してビデオレターしてただろ?あれと似たようなもんだって』
『あれは軽い挨拶だけやったけど、今回は俺主役やん。絶対放送事故になるって』
『今回は生放送じゃないから心配するなって。内容も簡単なインタビューだし向こうもプロだからいい感じで質問してくれるよ』
『それならええけど・・・って今回ってなんや!?』
『いや、今の所ソーイチがダントツトップ勢だし他にも依頼は来てるからな。あと今回の反響次第じゃレギュラー化もありうるし』
『マジか!なんでこんな事になってしまったんや』
『ソーイチが頑張り過ぎたのがいけないのだよ』
俺の嘆きに対して気取った口調で答えるユサタクにイラッとする。
『その時々やる演技風の話し方辞めた方がええで。一瞬マジで殺意湧いたもん』
『ごめんって。それはともかくゲーム内で明々後日の19時から1〜2時間無理か?』
『それって断る事出来へんの?』
『【ユーザータクティクス】に来た依頼だしスポット参加とは言えソーイチは契約してるから難しいな』
『やっぱり?』
『でも外部の仕事だと追加でギャラも出るから!本当にお願い!』
よっぽど上から突かれているのかもの凄く熱心に懇願するユサタク。
『そこまで言うんやったら出演するわ。スズメの涙程とは言え契約金も出てるしな』
『そう言ってくれて助かるよ!』
『それにテレビデビューってのも良いネタになりそうやしな。でも次も受けるかわからんからそこは伝えといてや!』
『ああ、運営に伝えておくよ』
『マジで頼むで』
『わかってるよ。それじゃあ向こうからインタビューの草案来たらまたコールするから楽しみに待っててくれ』
『楽しくは無理と思うけど待っとくわ』
『それじゃあソーイチ、今回は無理言って悪かったな』
『もう決まったことやし気にせんでええよ』
そう言って波乱のコールを終えた。
(ゲーム始めて3時間ちょいでテレビ出演が決まるとはな・・・。とりあえず放映の日程決まったら録画予約するとしてそれまで何したらええんや?)
アバター越しとは言え初めてのテレビ出演を前に自分がどうすればいいのか何も思い付かない。
「畑の収穫まで後3時間ちょいあるし、買い物とネタ探しでも行くかな」
現実逃避に町を散策する事を決めた俺はまずノア・タイムスへと足を運んだ。
「コビー、追加の紙300枚ちょーだい」
「いきなりだな。600ゴールドだぞ」
明日の新聞用に紙を300枚購入する。
「それより今朝もらった新聞だが社長が喜んでたぞ」
「ルーカスが?」
「ああ、伝えるべきポイントをまとめた手腕と何より単語集が良かったそうだ」
「そう言ってくれると嬉しいな。あれは友人がアイデアを出してくれたんや。教科書代わりにするんやったら単語だけでも見比べれるのは便利だろって」
「良い発想してる友人がいるんだな。明日以降の分も単語コーナーは是非とも続けて欲しいってさ」
「手間もかからんしええで」
「頼んだぞ」
(自分の仕事を褒めてもらうのはやっぱりええな。少しはマシになったし次は冒険者ギルドいくか。色々追加でできるって言ってたのに、司書ギルド登録優先で質問せんかったしな)
コビー(正確にはルーカスだが)に褒められ少しは気分が晴れた俺は続いて冒険者ギルドへと足を運んだ。
「あら、ソーイチさん登録は出来ました?」
「お陰様で念願の司書ギルド登録してきたよ」
「おめでとうございます。それでこちらに来られたって事はまた依頼を受けて頂けるのですか?」
「今回はパスで。それよりランクアップの時言ってたクラン設立とかの話聞きたいんやけど今時間大丈夫?」
「ああ、あの時は早く行きたいって感じでしたんで概要しか言ってませんでしたしね。この時間帯はそこまで忙しく無いので大丈夫ですよ」
そう言ってフレンと俺は個室へと向かった。
「まずはクラン設立について聞きたいんやけど条件とかってあるん?」
「はい、まず冒険者ランクがE以上の方が5名以上所属していること。2つ目に設立費が5万ゴールドに維持費が月々1万ゴールド必要となります」
「結構ゴールドかかるんやね」
「はい、クランでは専用依頼等の特典があるので、クランの乱発を防ぐためにもランクとゴールドを設定しております」
「なるほどね〜。まあ、まだ作るの無理やけど仲間がランクアップしたら作りにくるんでその時はよろしく頼むわ」
「ええ、ソーイチ様が所属するならとても良いクランになるでしょうし期待してお待ちしております」
そう言って微笑むフレンに見惚れながら次の質問へと移る。
「もう一個、家を購入できるとか言ってたけど、ここで買えるん?」
「ここではなく商業ギルドでの販売になるんですが、購入されるんですか?」
「いや、さっき言った仲間が買うかもしれんからな。ついでに聞こかなって」
「なるほど。この町には空き家や賃貸の物件があるのでお仲間さんには商業ギルドで色々と聞いてみると良いとお伝えください」
「りょーかいです。後はなんか知っといた方がいい事ってあります?」
気になっていた疑問が解消された俺はさらに情報を引き出そうとする。少し考えたフレンは、
「そうですね・・・。そうだ!時期は未定ですがEランク以上の冒険者が罪を犯した者を捕まえると賞金を出そうって話が挙がってるんですよ」
と、物騒な特典について説明を始めた。
tips
【ユーザータクティクス】との契約(要約版)
①契約はサービス開始から1年間だよ!(契約終了後に決勝戦みたいなのがあったらそれもお願い!)
②プレイスタイルには干渉しないから自由に遊んでね!(但し、チーム内で情報は隠さないで!)
③でも、広報活動はなるべく参加してね!
④お給料は月●●万円+MJOの賞金(個人獲得分)+外部からの出演料だよ!
ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。