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25.本当の始まり


トーマスという心強い仲間を手に入れた俺は、回復中にユサタクにもコールを送る。


『ユサタク、報告する事があるから休憩中に返事頂戴。1時間以内やったら大丈夫やから』

『丁度休憩中だから大丈夫だ。それより何かあったのか?』


『いや、昨日みたいに依頼書作成をしてたんやが、他のプレイヤーも依頼受けたみたいでな』

『まあ、情報屋とかは条件達成してるだろうしな』


『それで考えてみたんやが向こうがポーションがぶ飲みしたら俺抜かされるんちゃうかなと思ったんや』

『確かにそうだな!』


『やろ?明日分のポーションも全ツッパで行けば1時間後にEランクになれるんやが、向こうの方が早いかもしれんからな』

『そうか・・・。後1〜2本渡せば良かったな』


『そこはしゃーない。それより、監督役のトーマスに愚痴ったら向こうの様子を時々見てくれるって言ってくれてな。がぶ飲みしてたら意味ないけど心の準備だけはできそうやわ』


『ギルドの職員を味方につけたのか!やるな』

『まあ、面白いしええ人やわ。とにかく、後1時間が勝負やから祈っておいてくれ』

『おう、頑張れよ!』


ユサタクに事情を説明し終えた頃トーマスが最初の偵察から戻ってきた。


「向こうを見てきたけど早い人でも30枚ちょいって感じで誰もポーション飲んでないみたいだね!でも残り30分油断せずに行こう」

「油断せずって目を瞑って動かんだけやけどな」


「そうだけど気持ちの問題だよ!」

「それはそうやな」


やる気満々のトーマスの声を聞き、勇気が湧いてくる。

軽い雑談をしながら30分が経過すると、トーマスは再びスパイ活動へと赴いた。


(後ちょっとで全回復する。アナウンスがまだやけど、どうなるか分からんしな。というかよく考えたら大部屋以外の全員がライバルやし安心はまだ出来んよな)

MJO中にライバルがいるのを今更思い出した俺は意味のない心配を続けてしまう。


「おめでとう、向こうは全然だったよ!」

「こっちも回復したことやし、こっからは全力で作成していくで!」


トーマスの報告に俺も動く事を決める。目を開けてまずステータスを確認するとMPがすで全回復していた。

目の前にトーマスが用意してくれた白紙の束に向かって俺は無心で【2枚刷り】のアーツを繰り出していく。


(ここまで来たらスキルの差で大部屋組には負けんやろ。でも、今日は色んな特別依頼いっぱい出てるし油断はせんぞ!)


MPを使い切った俺は油断する事なく、手持ちの【初級MPポーション】を使用し依頼書の山を増やしていく。

途中に【メモ】と【見習い司書】のレベルアップを挟みながらも作業開始から15分後、全てのMPを使い切った。


「お疲れ!今集計してるからソーイチは休んでてよ」

「いや、足りんかもだし手書きで進めとくわ」


トーマスが凄いスピードで作成した束を数えている間に手書きで依頼書を更に書き上げていく。

3枚ほど書き上げた頃、集計を終えたトーマスが嬉しそうに、


「やったあ!!221枚だったよ!」

「よっしゃあああ!!これでランクアップ出来るな!!」

「そうだね、早速窓口に行こう!」

テンションが上がる俺とトーマスは紙束を持ってカウンターまで早足で向かった。


「凄い束ですね。またポーション飲みながら作成を?」

依頼書の束を見たフレンは少し呆れながら尋ねる。


「色々事情があってな。でもこれでランクアップ分は作成したと思うんで確認お願い」

「わかりました。少々お待ちください」

そわそわしながら待っているとやがてフレンは集計し終えた。


「お待たせしました。全部で224枚ございます。端数の4枚の報酬は切り捨てになってしまいますが、よろしいでしょうか?」

「大丈夫です」


「それでは依頼達成となりますので、ソーイチ様には1,100ゴールドと110AGPを付与させて頂きます。また、今回でAGPが規定値まで貯まりましたので、Eランクへ昇格する為の手続きに移らせて頂きます」

「よろしくお願いします!」


「では、個室で案内させて頂きます。ついて来て下さい」

そう言って歩き出すフレンの後を着いていくと、教会にあるような女神像が置かれた個室に辿り着いた。


「では、説明を開始します。いきなりですが、ソーイチ様G・Fランクというのは渡り人の方専用に用意したランクというのはご存知ですか?」

「えっと、渡り人をこの世界に受け入れる時にその信頼度を見極める為でしたっけ?」

ゲーム設定を思い出しながら聞き返す。


「ええ。女神様に選ばれた渡り人に対しては本当に申し訳ないのですが、我々も先の大戦で狡猾な魔王軍の工作で騙された経験があり疑心暗鬼となっておりました。ですので、皆様が信頼出来るのか、また我々の助けになって頂けるのかを判断するための猶予期間としてG・Fランクを設けたのです」


「それは仕方ないと思います。じゃあ、俺はその信頼出来るとみなされたんですか?」

「ええ、農業ギルドやノア・タイムスなどで評判もいいですし問題ありません。ポーションでの水増しはありましたけどね」

「あはは」

設定的にポーションがぶ飲みはグレーゾーンだったらしい。


「話が少し逸れましたね。要するにお試し期間が終わりましたので少し大変になりますよって事です」

「どう変わるんです?」


「ランクアップに必要なポイントが爆増します」

「爆増?」


「ええ、GからEまでは累計200ポイントでした。でも次のDに上がるには累計3,000AGPと試験が必要になります」

「一気に増えましたな!?」


「本来は長い月日をかけて上げるものですからね。一番下でも多くなってしまうのです」

(こりゃ次ランク以降はガチ勢に勝つのは生産職オンリーではキツいかもな)

難易度が一気に上昇し少し不安になる。


「これから大変だと話して来ましたが勿論特典はあります」

「特典?司書ギルド登録出来るとか?」


「はい、というか名誉国民扱いとなるので一般の住人達と同じサービスは全て受ける事が出来ます。例えばクランの設立やお金さえあれば店舗や住宅も購入できます」

「家持てるんか」


「農地持ちのソーイチさんには関係無いかもですね。他にも沢山出来る事が増えてますがどうぞご自身で探してみてください」

「オッケー。探検してみるわ」

出来る事がいっぱい増えそうでワクワクしてくる。


「以上がEランクに上がる際の注意と特典になります。最後に私共の慣習なんですがランクアップ前にこちらの女神像へお祈りをお願いします」

「ええけどポーズとかは決まってる?」


「いえ、ご自身のやりやすい方法で大丈夫です。お祈りが終わればすぐにランクアップ出来るよう、ギルドカードの更新を進めておきます」

「お願いします」

フレンが部屋を出た後、俺は女神像の前で手を合せ目を瞑る。

すると意識が暗転し気がつけば俺は別の空間に移動していた。


「ここはどこや?バグ?」

急な事態にバグを疑う俺の前に盛大な音楽と共に映像が流れる。


「これはオープニング?フレンが言ってた通りここが本当のスタート地点だからか?」

前半部分は昨日待合室で見たPVの短縮版だったが、後半は画面が二分割し左がフィールドでモンスターと熱戦を繰り広げる戦闘職、右側が町中で協力しあって1つのアイテムを作る生産職。アップテンポの曲に合わせてジョブの数だけ映像が切り替わっていく。

ジョブ紹介パートが終わった後は今後の伏線となるような場所がコマ送りで流れ、巨大な魔法陣が光ってる場面でサビの部分が終わった。


「こうして見ると知らん場所多いな、意味深に映った魔法陣は特に重要そうやしプレイヤーの間で魔法陣の捜索が流行りそうやな」

知らない場所や伏線となりそうな映像を見ながら考察をしていると、いよいよ終焉なのかカメラのアングルがどんどん遠くになって行き、ノアの町を含めた島全体を俯瞰した曲は穏やかになり画面中央部に【MIX JOB ONLINE】とタイトルがドン!と現れ、この動画は終わった。


MJOの真オープニングをいち早く体験できた事に興奮しながらも俺の中で一つの疑問が浮かび上がった。

「最後は島全体映ってたはずやのに何で他の町は映って無いんや?」


tips

祈りの儀式

Eランクに上がる際(住民達は冒険者ギルドに登録した時)に女神像に祈る慣習だが、これは命の危険もある冒険者になる前に、これまでの人生に対しての感謝と未来への希望を女神へと捧げるための儀式として長きに渡り続けられてきた。

ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 大阪弁と標準語がまざってますがわかりやすいようにてしょうか? バリバリな大阪弁のがいいです。 京都弁のが好きですが大阪弁も好きです。
[良い点] 色々vrmmoもの読みましたけど、「攻略組ってせかせかしてるよなー」とか主人公サイドが言ってるだけがほとんどだったんですよね。 なのでテンプレ王道ビルドとは違えど、いわゆる開幕ダッシュみた…
[一言] ここまではゲームのプロローグって事だね。 ソーイチのこれからの活躍も期待してます。
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