252.風景の撮影とポイント解放④【ノアの海岸線】と試練クリア
はっはっ、はっはっ
鼓動と息を弾ませながら、全力で丘に向かって走る。1歩ごとに強くなる潮の香りをガソリンに、俺は足の回転を早めていく。
そして丘のてっぺんまで駆け上がった俺は、息を弾ませながら下界を見渡し叫んだ。
「ゼ〜ハ〜……う、海だぁああああ!」
ドラマ・本・アニメ。あらゆるフィクションでお馴染みのセリフが自然と溢れていた。
(ああ……ありきたりなセリフやと思ってたけど、遺伝子レベルでセリフが刻み込まれてたんやな)
定番セリフが何故定番になったのか、自分の衝動から理由を察していた時、後ろの方から他のメンバーが駆け寄ってきた。
「もう!ソーイチさん、急に走り出したら危ないっすよ!」
「今のレベルならワンパンはないですけど、囲まれたら危ないですからね〜」
「ごめんごめん、新しい景色の匂いを嗅いだ瞬間、ぽぽ〜んと意識が飛んでしまったわ。完全に俺のせいやから、ゼロまで責めるんはやめたげて」
流石に無防備すぎたと、プンスカ怒る2人に頭を下げる。(言い訳を添えるのはご愛嬌)
ただ、後ろの方で俺を囃し立てたゼロまで軽めの注意を受けていたので、そこには口を出した。
「庇ってくださってありがとうございます」
「いやいや、ゼロはユサタクからのサプライズ指令を守っただけやろ?トップの方針に従ったのに怒られるのは理不尽やし、悪いのは暴走した俺やもん。逆にごめんな」
「……これ以上は水掛け論になりそうですね。わかりました、謝罪を受け入れます」
色々と受け入れ難い雰囲気を感じたが、こちらの意思を尊重して彼は首を縦に振った。
「さて、お説教はここまでにして、見ましたか?この世界の最端を」
「もちろん!リアルと同じく青い海。それが海の家ひとつ無いなか広がる景色は、秘境を除けばここでしか見れへんやろうな」
建物や桟橋どころか、舗装された道すらない中での海。そして所々で巻き起こる魔物とプレイヤーの激しい闘い。それらの全てが、コンクリートジャングルで育った、俺の創作意欲をチクチクと刺激してくる。
「う〜ん、開放感がすごいな!
「そりゃあ大森林に比べたら、視界スッキリですもんね」
「せやな。後、森と違って結構他のプレイヤーもおるんやな」
「ここは転移ポイントから狩場までの距離が近いですし、大森林の様に視界も悪くないので、人気スポットなんですよ」
「それに海岸線に沿って移動すれば、他パーティーと被らずレベル上げが出来ますしね〜」
「なるほどなぁ。っと、そろそろ着きそうやな。俯瞰で見れるうちにもう1枚」
丘の上とは違う見え方の海を撮るため、一瞬立ち止まり写真を1枚。その後、すぐに試練のウインドウを立ち上げる。
「よしよ〜し。これで……うん、【見習いカメラマン】の試練クリア確定!」
「おめでとうございます、これで本日5回目のアナウンスを流せそうですね」
「凄すぎっすよ!」
セキゼロコンビをはじめ、みんながチヤホヤしてくれる。
「みんな、ありがとう。でも鳴らすまでがレースやから、油断禁物やけどな」
「流石に独走状態だと思いますけどね〜。でも不安でしたら転移ポイントを登録して即帰りますか〜?」
「う〜ん。せっかくの新天地やのにちょっと勿体無い気もするけど、一応ポイント取るのもお仕事やしな。目的果たしたら解散しよか」
「は〜い。せっかくソーイチさんとパーティー組めたのに少し残念ですね」
「ははは、いつもお世話になってるんやし、マロンや他のみんなも遊びたい時は気軽に声かけて」
「は、はい!もう、ドンドン声掛けちゃいますね!」
名残を惜しむ哀しげな顔が一転、弾ける笑顔に変わったマロン達に心が温かくなった。
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ー【ノアの海岸線】のシンボルを解放しました。以後、転移クリスタルへの登録が可能になりますー
「無事、ポイント解放完了。みんな、今日は本当にありがとう!今度ここに来る時は、凄腕の【カメラマン】として、最高にカッコいい瞬間を撮らせてもらうわ」
「もちろんです。楽しみに待ってますよ!」
「約束っすよ、ソーイチさん!」
「じゃあ、帰るで!」
元気な返事に背中を押されるように、俺は転移クリスタルをかざしてホームへの転移を選択。
心地よい潮風と砂の感触が少しずつ薄れてゆき、重力から解放されるような独特の浮遊感と共に視界が白く染まっていく。
(ああ、もう少し海フィールドをみんなで堪能したかったな)
少し心残りな感想を胸に浮かべつつ目を瞑り、一呼吸。重力が戻るような感覚に目を開けると、土と植物の匂いが漂う、自分のホームへと戻っていた。
次回は明日か明後日の午前6時に更新予定です。
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