250.風景の撮影とポイント解放②ノアの大森林(大地の楔)
ザッザッ ザッザッ
ノアの大森林に突入して早10分。足を動かすたびに落ち葉や小枝を踏み締める音が響き渡る。ふと上を見上げれば、幾重にも重なる木々の枝葉が日の光を遮り、視界もどんどん悪くなっていく。
だが、その悪路を進む中で俺をもっとも苦しめていたのは、大自然の脅威ではなかった。
「ゼェ〜ハァ〜……。だ、大森林の中では小走りって言ってたやん!なんでさっき以上のペースで走っとんのや!?」
そう。俺が息を切らしてくたびれる元凶は、仲間たちによるスパルタ式マラソンのせいだったのだ。
「最初は環境もいまいちですし、ゆっくり行こうと思ってたんですよ〜。ただこのままのペースだと2時間以内に海に辿り着かないと思ったんですよね〜」
「それに視界の悪さは【心眼(序)】のおかげで、全く問題ないですからね」
俺の不平不満に対して、フワフワとゼロがなだめるように理由を説明する。
というか【盲目】のバッドステータスを無効化する事が出来る【心眼(序)】にとって、多少の薄暗さなど問題にすらなりはしない。(終始モノクロの世界ではあるのだが……)
「せ、性能面ではそうかもしれんけど、俺のフィジカルが、ドクターストップを出してるんや」
「ふむ。ホントにしんどそうですね。それでは後5分ほどで2つめの転移ポイントに辿り着くので、その時に少し休憩を挟みましょうか」
俺の必死さが通じたのか、次のポイントで小休憩をする事に決まった。
・
・
・
「お疲れ様っす。ここが2つめの転移ポイントの【ノアの大森林(大地の楔)】っす」
「ハァ〜、ハァ〜。デ、デッカいなあ……。雄大というか、力強いというか……。あかん、これでも物書きのプロやのに、この感動を言語化できる気がしない……」
限界間際のタイミングで辿り着いたのは、この森林で一番古く、雄大な大樹。おそらく魔力や魔素が一切流れていないにも関わらず、思わず拝みたくなるような威圧感。それでいて不思議と抱きつきたくなるような愛らしさと相反するものを感じ取り、俺は呆然と立ち尽くす。
「……マジでMJOやってて良かった……。取材で幾つか有名な大樹は見て来たけど、これはファンタジーにしかないやつやな」
「でしょう〜?私もここが好きなんですよね〜」
現実を超えた風景を見て思わず漏れ出た感想に、フワフワも横で大樹を見上げながら相槌を打つ。
「さて、本命の撮影といこか……って、あれ?デカすぎてフレームに入り切らへん!?どうしよう!」
「ああ、【ビジョンスキャン】って、手で作ったフレーム範囲しか取れないですし、全体を撮るのはキツそうですね」
「諦めて遠くから撮るってのはどうっすか?」
「それもありやけど、せっかくやし1枚は近めで全体を写したいなぁ。……でも、手の構造的にキツイか?」
この偉大な景色をそのまま残せないものかと悪戦苦闘していると、ゼロがこちらに近寄り肩に触れる。
「そうですね……ちょっと失礼」
「え?って、うぉ!?」
彼らしくないスキンシップに困惑していると、その意識の隙間を縫って足払い。一瞬の浮遊感を感じ、後へ倒れる。その直前、下手人であるゼロが頭を打たないように支えてくれた。
「い、いきなり何すんねん!?」
「ごめんなさい。でも見てください。この角度なら全体を収められるんじゃないですか?」
「この角度?……ああ、そういう事!?」
すっ転んだ後支えてもらったおかげで、現在の俺は地面に対して30度の鋭角にのけぞっている。
その結果、画角が広がり立っていた時は無理だった、大樹の全体像を離れる事なく見る事ができた。
「セ、セキライ、足と腰支えて。それとゼロは引き続き角度をキープ。残りのみんなは、この無様な姿を見んようにして!」
「「はい(っす)」」
「いやです〜。一部始終見届けますよぉ〜」
「フワフワちゃんの言う通りです。ソーイチさんの活躍は全部拝見させてもらいますよ!」
「酷っ!?……ま、まあええか。【ビジョンスキャン】」
無理な体勢に声を振るわせながら仲間達に指示を出すも、体を支えるセキゼロコンビ以外のメンバーからは、はっきりと『No』を突きつけられる。
その返事にショックを受けつつも、気を取り直して撮影開始。両手を横にグイッと伸ばし、フレームを限界まで広げてアーツを放った。
「……ふぅ。オッケー!ゆっくり降ろして」
「了解。セキライ、いきますよ」
「はいっす。せ〜のっ、よいしょっす!」
「【コピー】……うん、上手に撮れてるな。2人のおかげでいい写真撮れたわ」
ゆったりと地面に降ろされた俺は、早速撮った写真の写りを確認。我ながら良い出来だったと2人に礼を言う。
「どういたしましてっす」
「というか説明なしで、足払いをかけてすいませんでした」
「別に気にせんといて。ただ、ゼロらしくない行動やけど、誰かの指示か?」
「流石ですね。実はリーダーから突飛な行動をする際は、なるべく不意打ちでやってくれと言われてまして……」
「というかクランメンバー全員が言われてるっすね。なんでも、少しでも感情を動かして創作のインスピレーションが湧くようにって」
「ははは、やっぱりユサタクの仕業か。ワンパターンな奴やで」
想像通りの黒幕に苦笑いしながらも、頭の別の部分で転ばされた時の浮遊感を心のネタ帳にメモしていた。
「はあ……。結局、あいつの思惑通りにアイデアが浮かんでくるのが少し悔しいな」
「リーダーもソーイチさんの扱いは慣れてるんですね〜。もし良かったら休憩中に過去のエピソードお聞きしても良いですか〜?」
「あっ、俺も聞きたいっす!」
「黒歴史もいくつか混ざって恥ずかしいんやけどなぁ。でも、この木々に囲まれたシチュでの過去語りもええかもな」
大樹にもたれ掛かりながら座り込むと、今までユサタクから受けたサプライズについて語っていった。
次回は明日か明後日の午前6時に更新予定です。
ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。




