220.仮天井と変なテンション
ピピピッ ピピピッ ピピッ
「くぁ〜、よく寝た」
あの後ログアウトした俺はまっすぐ睡眠ポッドへダイブして少しの間仮眠。それから1時間後、セットしたアラームを止めながら、俺はグイッと背伸びをした。
「あかん、頭ボ〜っとするなぁ……」
それでも眠気を完全に払う事が出来なかった俺は、頭を三度横に振り、コーヒーを濃い目に入れ、ログイン時間まで何も考えずに過ごした。
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【陽の月3週目、地の日】【4月3日6:40】
いつも通りゲーム内時間で5時20分にログインした俺は、これまたいつも通り全回復したST・MPを消費する為に100ポイントずつ畑仕事で消費させようとアーツを放つ。だが、そこでいつもとは違うアナウンスが脳内に流れた。
ー晴耕雨読のレベルが10に上がりました。派生元(農家)のレベルと並んだ為、以降は派生元のレベルが上昇するまで経験値はカットされますー
(おっと、【晴耕雨読】の仮天井きちゃったか。こりゃ1〜2レベル上がるまで、メインジョブは別のやつにしないとあかんなぁ)
アース米獲得の為、農作業に専念した事で経験値効率が一番高い【晴耕雨読】のレベルが【農家】と並んでしまったのだ。
(う〜ん。まず、農作業で経験値入るのが【文武両道】と【見習い開拓者】。経験値だけ考えたら1割多い【文武両道】に決まりなんやけど、派生元の【付与魔術師】とレベル近いしすぐに仮天井になりそう。そうなると経験値は少なくても【見習い開拓者】って事になるよなぁ)
当分の間、メインジョブをどうするかを経験値効率や他の要素など色々な面から考えた結果、農作業中のメインジョブは【見習い開拓者】に決定。すぐに転職した後、予定通りのポイントを消費して畑仕事を終えた。
(さてと、次は新聞要約やな。満腹度実装前日やし、なんか興味深い記事でも載ってないかな?)
内心ワクワクしながら、俺はクラン倉庫から紅茶を取り出してサイドテーブルに置き、安楽椅子に座り新聞を広げる。
(なになに。明日の12時・15時・20時の合計3回、冒険者ギルド前の露店エリアで炊き出しの開催か。でっかい鍋で色んな野菜やソーセージ・ベーコンをたっぷり入れたポトフか〜。素材のエキスがドバドバ滲み出たスープ、これは何があっても食わなあかんやつやん!)
なまじポトフという食べ慣れた料理のせいか、記事を読むだけで小腹が空いてくる。俺は紅茶を飲み食欲を抑えながら新聞を読み進めていく。
(うん?炊き出しに向けて農業ギルドで食材の特別依頼めっちゃ出てるやん!アース米の試練用に、後35個依頼をクリアしなあかんし、これはジャストタイミングすぎる)
考えてみればプレイヤーに食事が必要になる初日なのだし、農業ギルドで特別依頼が出るのは当然だと落ち着いて考えれば理解できる。
だが、依頼を大量にクリアしなければならない立場だった俺は、このタイミングでの報酬アップが『農業頑張れ!』という天啓だと、この時は思い込んでしまった。
(ここまでお膳立てされてるんや。今日はSTが切れたとしても手動でやる!絶対やる!全部やる!)
テンションとモチベーションは天元突破し、絶好調!俺は作業が途中だった要約新聞をささっと書き上げ、ノア・タイムスにて大量印刷。そのまま露店エリアに向かい、アマネに要約新聞を渡しホームへ戻る。
農業に捧げる決意をしてから30分弱。がむしゃらに動いたおかげで、あっという間に要約新聞の全てのタスクを終わらせる事が出来た。
「おっしゃ!タイムは28分、本日の新聞絡みのタスク終了!こっからはハイパー畑仕事タイムや!」
ホームに到着してからも勢いは止まらない。収穫可能になった畑から手作業で収穫しては、依頼用の10個を残し、余った分を【種化】で種にしていく。
「ゼェ〜ゼェ〜。し、シンドいけど、このやり方やと、1つの畝で作物と種の両方の依頼をクリア出来る!しかも収穫自体は手作業やから、STの節約にもなるしパーフェクトすぎ!」
ただでさえ高いテンションに加えて、疲労からくるある種の無敵感から、言動が少しおかしくなってくる。
「うわぁ〜、ソーイチさん変じゃないっすか?」
「いくらアース米の為とはいえ、行動や言動が壊れちゃってますね〜」
「睡眠ポッドで短時間睡眠重ねてるせいで、変なテンションになってるんだろうな」
いつの間にか俺の奇行を眺めていた仲間達からの失礼すぎる噂話。いつもなら大袈裟にリアクションをしてツッコミを入れ、そのまま雑談モードになるところだ。
だが燃えている俺はそれでも足を止めず、手も止めず、ただひたすらに収穫→【種化】のサイクルを回し続ける。
ー見習い開拓者のレベルが3に上がりましたー
ー農家のレベルが11に上がりましたー
ー見習い開拓者のレベルが4に上がりましたー
ースキル【種化】のレベルが4に上がりました
(めっちゃレベル上がるやん!よ〜し、手持ちのポーションも使ってくか!)
レベルアップアナウンスが鳴る度、更に自信を付けた俺は、余っている初級MPポーションをがぶ飲みしながら、精魂尽き果てるまで作業を続けていった。
次回は明日か明後日の午前6時に更新予定です。
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