213.紹介状と農業ギルドとの交渉
「うん、決めました。いえ、決める権限がなかったという方が正しいのかもしれませんが……」
悩む事数分、フレンは頭を大袈裟に振るった後、俺の目を見て結論を伝え始めた。
「私としてはアース米の栽培許可をお出しして大丈夫だと考えております。ただ種の融通などに関しては農業ギルドの意向もございますので、私には断言出来そうにないですね」
「やっぱり、本業のギルドにも顔出す必要あるって事やな」
「ですね。ただ、色良い返事が来るかはやってみないとわからないでしょうね」
「そりゃそうや。新作物を先行して渡すって判断は気軽に出来んしな」
「とりあえず少しでも許可が出る可能性が上がるように、アース米の融通についての紹介状を書きますので、お手数ですがソーイチさんが交渉をお願いします」
「なるほど。とりあえず第一関門は突破したと考えて良さそうやな。オーケー、早速行ってくるわ」
若干のタライ回し感は否めないが前進は前進。俺は図鑑作成の報酬をもらったあと、フレンの書いた紹介状を片手に農業ギルドへと向かった。
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「こんにちは、ソーイチさん。ここに来るの久しぶりじゃないですか?」
「最近、別のジョブ育成で忙しくてな。ついつい足が遠のいてたなぁ」
「もう!当ギルドの救世主であるソーイチさんが、他ギルドに浮気なんてダメなんですよ!」
「ははは、ごめんごめん。ただ今回のお願いが通ったら、しばらくはお世話になるし許してや」
「ソーイチさんがおねだりなんて珍しいですね。一体何目的なんですか?」
「とりあえず、コレ見て」
「……まぁ!これはこれは……」
「どう?お願い聞いてもらえそう?」
「とりあえず個室にご案内しますので、そちらでお話ししましょうか」
農業ギルドへ到着した後、顔見知りの職員であるアレンの元へ向かい、しばし雑談。話の流れに乗って紹介状を渡すと、彼女は少し驚いた後に個室へと案内してくれた。
「アース米ですか……。またマイナーな作物を求めるんですねぇ」
「あっ、やっぱりメジャーな作物じゃ無いんや」
「ええ。現在ではお酒の原料として使われるくらいですね。なのでソーイチさんがお求めになるのが意外で……」
「お酒が好みとか、マンネリ打破じゃ納得出来へん?」
「ええ。ソーイチの目を見ていると、更に別の考えがある様に私は感じます」
「ふむ〜」
仮の目的で乗り切れるかと踏んでいたのだが、想定以上にアレンの洞察力が高い。やはり多くの人と接する受付嬢ともなると人を見る目は養われているのだろう。
(う〜ん。ここで白を切るのは簡単やけど、アース米が出回った時に関係悪化する可能性あるよな。ミスリードはともかく嘘つくのはリスク高いし……。しゃ〜ない、事情話すか)
目先の大金と今後の信頼。2つを天秤にかけて考えた結果、出した答えは信頼であった。
「うん、隠しててもバレバレっぽいし白状するわ。お察しの通り、お酒や新種の作物以外にも理由はあるよ」
「やっぱり。実は紹介状にも、隠れた目的があるかもしれないと書かれてたんですよ」
「あちゃ〜、フレンにもバレてたか」
「ええ。まぁ、それを理解した上で、出来る限り協力して欲しいとも書かれてましたが」
流石は冒険者ギルドの受付兼広報担当だけあって、俺より役者が上だったようだ。しかも告げ口だけじゃなく、しっかり口添えもしてるところが如才がない。
「とにかく、事情がわからないと許可も出せませんし、正直にお願いしますね」
「もちろん、ここまで来たら隠し事はなしでいくわ」
念を押すアレンに、俺は肩を竦めながらアース米についてのアレコレを隠す事なく説明していった。
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「話はわかりました。要するにソーイチさん達はアース米で、クランの力を拡大するのが狙いなんですね」
「まあ、アース米自体を食べてみたいって気持ちもあるけど、概ねそんな感じやね」
「う〜ん。個人的な感情だけで言うと渡しちゃっても良いかなとも思うんですが、ソーイチさんだけを贔屓にするのも気が引けますねぇ」
「アレンはそう言うけど、自身のコネや実力で得た情報から財をなすのは、ある意味冒険者の本道やで?逆に何もしてないのに、発見者の恩恵にタダ乗りする方が贔屓やと思うんやけどな」
「そう言われると返す言葉もないというか……」
(ふむ、少し受け身になってきたな。ここは納得しやすい理由付け&ウチらが有利な条件での提供を促すのが吉と見た!)
「まぁ、管理者サイド的には個人に目をかけるのに抵抗あるっていうのも理解は出来るんよ」
「でしょう!?」
「だったら、俺ら以外にもチャンスを与えるってのはどうや?」
「チャンスですか?」
俺から独占の放棄とも取れる発言を受け、不思議そうな顔をするアレン。
「ああ。農業ギルドに相応しい試練を課して、それがクリアできたらアース米の種を贈呈する。これなら渡り人全員が参加出来るし、農家として最先端を進む俺らに忖度が出来ると思わん?」
「平等にしながらも、優遇出来る。確かに面白いかもしれませんね」
当初の予定であった独占栽培は無理かもしれない。だが、この案が通れば、他のプレイヤーが追いつくまでの時間は稼げるだろう。そんな未来を想像しながら、納得寄りに心が傾くアレンの思案顔を俺は眺めるのであった。
次回は1月8日(木)午前6時に更新予定です。
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