206.アース米とお米の食べ方
今の章タイトルを変更しました!
「ソ、ソーイチ?ず〜っと固まってるが何があったんだ?」
「お口に合いませんでした?」
「あっ、ごめん。ちょっと意外すぎたんで固まってたわ」
「は、はぁ……」
どれくらい固まっていたのだろうか?クロード達の声に気付き意識を戻すと、彼らから心配と不審さが入り混じった視線を向けられている事に気付く。
「なあ、アース酒って原料がアースの町の特産品なんやろ?その名前ってなんなん?」
「え〜と、【アース米】という穀物だったと思います」
「確か白くて小さい粒のようなヤツだよな?それがびっしりと黄色い殻付きで生えてるのを見たことがあるぞ」
「マジか……。想像通りのブツがアースの町には存在するって事か!」
アース酒を見た瞬間に思い浮かべていた物が、現実だったと保証を得て震えながら喜びニヤけてしまう。
「その様子だとアース米に何か思い入れがあるようだけど、理由聞かせてもらえるか?」
「あ、ああ。みんなに不審がらせたし、隠すのも失礼やな。俺も吐き出したい想いがあるから酒交えながら聞いてくれんか」
「ああ。こんなマイナー作物が刺さった理由、面白そうだしドンドン話してくれ」
クロードはアース酒をグラスの半分を流し込むと、少し据わった目で話を促してきた。
「この酒の原料となるアース米。現物見てへんから確定ではないんやけど、これ渡り人のソウルフードというか主食と同じヤツかもしれんのや」
「ええ!?アース米が主食!?パンとかじゃなくてですか?」
「パンも食うけど、メインはアース米に似た米っていう穀物が伝統的な主食でな。俺達はこれを小さい頃から食べてきたもんなんや。そんな食材のヒントが急に目の前に出されてみ?俺以外の渡り人でもフリーズしてたと思うで」
「へぇ〜。酒にしか使い道なさそうな物が主食なんて、どんな食べ方なんです?」
本当にこの世界の住民は米を食べないのだろう。クロード達はもちろん、サービスのため待機していたボーイまで興味深そうな顔でこちらに視線を注いでいる。
「何度も言うけど、アース米がこの方法でいけるとは限らんから。そこだけは把握した状態で聞いて」
「わかったわかった。あくまで【米】という作物の食べ方なんだよな」
「わかってくれたなら話を進めれるな。じゃあ説明してくで」
俺は頭の中に米を炊くまでの手順を思い浮かべながら順番に話していく。
「えっと、まず殻を剥いた白い粒状の米を一定量すくった上で、水で洗い埃や滑りを取り除く。その後水でしばらく浸した後、水を切って土鍋に投入して適量の水を足して炊いていく。で、良い感じに時間が経ったら完成やな」
「スゴい、あんなにわかりやすい資料を書いたソーイチとは思えないくらい、こっちに伝わってこない」
「なぁ炊くって事は、米料理は煮物のようなイメージでいいのか?」
「全然違うんやが、俺のお料理知識ではどう説明したらええのか全くわからん」
以前書いていた作品が西洋系のファンタジーだった為、米や和風料理の言語化に手間取ってしまう。
「う〜ん。この世界の食べ物事情とか知らんから、これ以上の説明難しいな。それよりクロード達のコネでアース米の種か苗を手に入れることって無理なん?」
「ソーイチがそこまで言う食べ物には俺も興味あるんだが、俺たち【暁の狼】は戦闘一辺倒のクランだからな〜。だから調べる場合は冒険者か農業ギルドで聞いてみるか、司書ギルドで資料を漁るのが早いんじゃないか?」
「う〜ん。両方所属してるギルドやし、そっちで探すのが筋か。いきなり無理言ってごめんな」
「そんな事くらい謝る事じゃね〜よ」
「ええ。渡り人の趣向や興味などの情報は私達にとっても重要な情報ですしね。ほら、ボーイ君とか凄く興味津々で聞いてたよ」
ヨナが意味深に視線を奥に向けると、気まずそうな顔のボーイ君と目が合った。
「なあ、失礼承知で質問するんやけど、こういう店の個室って外部からの干渉を避ける以外に、情報の機密性の確保ってイメージがあるんやけど、この店はサービス役のボーイさんが常駐してるんやね」
「ああ、ギルド系のラウンジの場合、個室毎に1人付く事になってるぞ」
「マジか」
「そもそも重要な話を他組織の店で話すわけないだろ。あくまでラウンジでの会話は最悪広まっても良い会話に留めておくのが、この世界の常識なんだよ」
「それでも高ランクのラウンジなら、彼のようなボーイさんは機密契約ガチガチで組まされてるし、まず話は漏れないんだけどね」
「へぇ〜。うちらの世界とギャップというか常識が違う部分が結構あるんやね」
俺は今聞いた情報を忘れないよう、サラッとメモに書いていく。
「ああ〜。さすが【司書】だけあって、新しく知る情報は逃さないんですね」
「当然。知識欲もあるけど、この世界に馴染むためには知っとかなあかん情報やし、それメモするよ」
「プハー。相互理解ってヤツだな!いいじゃね〜か」
いつの間にか3杯目に突入していたクロードが、ビールを飲みながら俺の行動に理解を示す。
「そこまで高尚なもんでもないけどな」
「ははは、まあソーイチが言うならそうなんだろうな」
「そうそう。今だって俺の心の中は、さっきのアース米の事で一杯やもん」
「なんだ?まだ何かあるのか?」
「もし誰よりも早く栽培に成功したなら、儲けるチャンスやったなぁって下世話な事考えてたんや」
「なに!?アース米は儲かるのか!?」
照れ隠しの為に、あえて露悪的な感じで話を変えたのだが、その瞬間クロードの目が愉快そうなものからGマークへと変貌してしまった。
次回は12月31日(水)午前6時に更新予定です。
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