203.遭遇戦とハゲ頭と1ページの依頼
【トレント】
ノアの森全域に生息する植物系の魔物。
硬い棍棒のような硬さの枝や根を使い、ムチのようなスピードとしなりで襲いかかる。それが枝や根の本数分繰り出されるのだから本来はとても厄介な魔物である。だが、
「8本目の枝切り落とし成功、残り3本です」
「オーケー。こっちも残り1本で終わりや」
【木こり】系ジョブにとっては、手強いはずのトレントはカモ同然の相手となる。
「いや〜、トレント系って【伐採】効くから楽でええな」
「ええ。攻撃をオノで受け止める時にアーツを放つだけで、部位破壊出来ますもんね」
「そうそう!それで木材がドロップするんですし、言う事なしですよ」
枝や根を刈り取りながら、いかにトレントが【木こり】に取って都合の良い魔物なのかを語り合う。そんな戦いというより作業をこなす内、気がつけば目の前でワサワサしていたトレント達が全て丸裸になっていた」
「よしこれで全部のトレントの枝を切り起こし完了ですね」
「攻撃にオノを合わせんのが、ちょっとだけ手間取ったけどその分慣れたら楽な相手やったな」
「アーツ経験値やドロップ美味しいですよね。っと、まだ戦闘終わってませんでしたね」
「せやな。トレント君の幹が禿げあがって少し可哀想やし介錯せんとあかんよな」
「ですね。それに丸裸状態のトレントに【伐採】使うと、多めに木材をドロップしますしね」
「へぇ〜。……ってちょい待って、ストップ!」
オノを振り上げながらトレントの豆知識を語るモチョ。それを聞いた時、1つの閃きが頭に浮かび、咄嗟に作業中断を叫ぶ。
「ソーイチさん!急に叫ばれたらビックリするじゃないですか!」
「ごめんごめん。ちょっと閃きが降りてきてな」
「閃き?一体なんなんです?」
「この状態のトレントってドロップが増えるんやろ?それなら【インタビュー】の内容も変わってるんとちゃうかと思ってな」
「あっ、ありそう!ソーイチさん、早速試して下さいよ!」
「オーケー、【インタビュー】……おっ!」
アーツを放ちカードを確認すると、そこには期待通りの記載がされていた。
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トレント(状態:ハゲ)
攻撃用の枝や根が全て切り取られた状態のトレント。
この状態になったトレントを根本から切り取られた木材は大ぶりで太く、建物の大黒柱として人気がある。
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「おお!なんか状態【ハゲ】ってなってるトレントのカードが出てきたで!」
「本当ですね。しかも特殊な倒し方でドロップ変わりそうですよ」
「そうやな。え〜と、これはなるべく地面に近いとこにオノ当てての【伐採】でええんかな」
「多分?私たちが押さえてますんで、試して下さい」
「ありがとう、ではお言葉に甘えて」
そう言って俺以外の5人が3体のトレントを羽交締めにする。俺はお礼を言いながら流れるようにトレントの根元にアーツを3連放つ。すると自らの背丈の数倍の長さの巨大な丸太が3本こちらへ倒れてきた。
「危なっ!?危うく下敷きになるとこやで!」
「3体一気に倒すからですよ」
「だって負担減らそうと思って……。そ、それよりアイテムの確認しよ〜や!」
「……まあ、いいでしょう」
話を逸らす為にこの3本のアイテムの確認を促す。するとため息混じりにモチョは流されてくれた。
「【トレントの特大丸太】ですか。私達は初めて見ますね」
「せやな。俺が見た図鑑に載ってなかったし、新ネタか?」
「でも大黒柱に人気とありますし、アイテム自体はあると思いますよ。とりあえず確認の為に、木こりギルドに提出しましょうか」
「それもそうやな。」
大きな(物理)成果を手に入れた俺たちは、全てを回収し町へと帰還した。
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トレントの新たなインタビュー結果と【トレントの特大丸太】という新アイテムを手に入れた俺達。本来ならツアー責任者のモチョか発見のキッカケになった俺のどちらかが報告に行くべきなのだが、2人とも睡眠時間確保のため脱落。新発見かもしれない報告の栄誉は、残りの4人に任せる事に決定した。
「みんな、ありがとう!お言葉に甘えて私落ちるね」
「俺は冒険者ギルドにええ感じの特殊依頼ないかだけ確認に行くわ」
「了解です。お二人とも体壊さないレベルで頑張ってくださいね」
「おう、ありがとう!」
こうして木こりツアーの面々と別れ、俺は冒険者ギルドへと向かうのだった。
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「おはよう、フレン。1週間くらいの期限で美味しい依頼ある?」
「あっ、丁度よかったです。ソーイチさんの要望にぴったりな指名依頼が入ってたんですよ」
「し、指名依頼!?俺に直接依頼来てんの!?」
冒険者ギルドに着いて早々、軽い気持ちで尋ねた俺に対して、フレンから指名依頼という名の強烈なカウンターが返ってくる。
「ええ。昨日の調査隊に関連する依頼なのですが、ギルドマスターがソーイチさんしか頼める人がいないとおっしゃってまして……」
「俺にしか出来へんて……。そんな特別なスキルやアーツなんて、俺持ってないで?」
「ふふふ、謙遜しちゃって。依頼内容を確認しましたけど、私が人選を任されたとしてもソーイチさんを選んだと思いますよ」
「フレンまで……」
昨日の調査隊ではほとんど寄生状態だった俺の何がラクレス達の琴線に触れたのだろうか。フレンの熱の入りようを見て逆に不安になってくる。
「ああ〜、ソーイチさん全然信じてませんね。それなら依頼書を見て下さい。絶対に納得しますから!」
「そんなにか。まあ一応読んでみるけど」
「なになに……。【レイヤースライム】の資料まとめて、図鑑見開き1ページの作成!?」
「ええ!護衛付きとはいえ、あんなに分かりやすいレポートや【ビジョンスキャン】を提出してくれたんですもの。この依頼は世界でソーイチさんが一番の適任に決まってます」
「なるほど。そう来るか……」
(図鑑1ページ作成って、俺の文章の一部が書籍に載るって事やん!前回の記事作成といい、ここでも作家の力が活かせるんか!?)
鼻息荒く熱弁するフレンに気圧されながらも、図鑑見開き1ページだけとはいえ、世界で初めて自分の文章が書籍化する事実に、俺は興奮するのであった。
次回は12月28日(日)午前6時に更新予定です。
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