199.レイヤースライムの大被膜と絆のクリスタルの作り方
「うん!やっぱり外殻を全部剥ぐとソルトボール効くのね!」
「そうみたいやな。しかもドロップ変わってるし」
「ええ、中魔石が3つと……これは初めて見ますね!」
フィールドに散らばるドロップアイテムを確認すると、普段なら中魔石・スライムゼリー・ビッグスライムの被膜と計3種類のアイテムがドロップする所なのだが、中魔石と初見アイテムの2種類へと変化していた。
「うわぁ〜、なんですかこれ!めちゃくちゃ大きな被膜ですね。……ふむふむ【レイヤースライムの大被膜】ですか」
「大被膜!!ユニオン級のスライムが落とすアイテムじゃないですか!!」
その新アイテムはヨナ達の会話を聞くだけで、何やら凄そうというのは伝わってくる。
「ユニオン級って初めて聞くんやけど、そんなに強い敵なん?」
「ああ、ソーイチさんは渡り人でしたね。え〜と、ユニオン級というのは2〜3パーティーが合同で挑むレベルの魔物の総称です」
「マジで?そんなヤバい相手が落とすのと同じタイプのアイテムを、この雑魚が落とすん?」
自分にとっては強敵であるレイヤースライムを雑魚呼ばわりは可笑しいかもしれないが、そう言いたくなるほど比較対象が強すぎる。
「流石にランクは幾つか落ちると思います。ただ……」
「ただ?」
「このアイテムを手にしたのは、私達が初めてっていう事実、それが何よりも嬉しいんです!」
「確かに新種の魔物が落とした、未知のアイテムやもんな!こりゃ高く売れるんとちゃうか?」
「あはは、それが調査報告のため最低1つは提出しないとダメなんですよね〜」
「それがあったか……。じゃあ俺達の取り分の為にも、後2つは群れを倒さなあかんな!」
「ええ、まだまだ1回目の調査なんです。これからも張り切って調査しますよ!」
こうして世界初の栄誉に酔いしれながら、この後の調査へやる気を漲らせるのであった。
・
・
・
レイヤースライムとの闘いも終わり、今はクロードパーティーとの合流のために一同は『へ』の陣形を組みながら南へと歩いている。
「なぁ、結局絆のクリスタルが愛の証って呼ばれてる理由なんなん?」
「そ、それを私に聞くのですか……」
その道中、俺と共に頂点の位置を歩くヨナに、先程の続きを聞いてみた。
「あくまで一般的に言われてる理由をお話ししますけど、それで良いですか?私達はそんなんじゃないんで!」
「わかってるって。クロードとヨナの仲を邪推したりせんから、教えて」
「それなら良いですけど……」
(まあ、邪推というか理解って感情で見るけどな)
内心ウキウキな心を隠して、説明しやすい空気を作り、説明を促す。
「コホン。一般的に絆のクリスタルが愛の証と称されるのには2つの理由があります。1つ目はその効果です」
「効果というと、対応するクリスタルの元に転移できるって力やろ?それが原因って……あっ、ピンチの時に颯爽と助けに来る逸話とかが原因やったりするん?」
「そういう御伽噺もありますが、理由はもっと現実的です」
「現実的?なんやろ?」
それとなくヒントは与えられてるのに、全然答えが思い浮かばない。
「考えても見てください。相手の元へ瞬時に転移できる。相手の許可なくいつでもですよ?」
「……あぁ〜、これ恋人や家族じゃないと持ったらあかんやつや」
「ええ。寝てる時やご飯の時ならまだしも、トイレやお風呂の時にも跳んで来れるんですよ?それを許容しあえる中とか、恋人以上の仲しかいないんですよ!あくまで一般論ですけど!」
「まあ、一般論的にはな」
あくまで自分は違いますよって顔をしているヨナには申し訳ないが、理由を聞けば聞くほど他のメンバーが言っていたラブラブ発言に説得力が増していく。
「1つ目の理由は納得出来た。というか、これだけで充分【愛の証】って言われる理由になると思うんやけど、もう1個理由があるんやろ?」
「ええ。2つ目はアイテムの製造方法が関係してきます」
「製造方法?それって加工代がめっちゃ高いとかで、財布を共有してないペアじゃないとあかんって事?」
「いえ、Cランク以上の冒険者なら材料・加工費用合わせてもそこまで高くはないですね。ただ……」
「ただ?」
急に言い淀んだヨナに、これまたラブラブポイントが出るのかと、ワクワクしながら続きを待つ。
「作り方が変というか、自分の血を垂らした中魔石を錬金術でクリスタルに加工、その後に相手のクリスタルと交換して1年間肌身離さず持ち続ける必要あるんですよ」
「なるほど、互いのクリスタルを持ち続ける。これこそが愛の証と言われる理由なんやな」
「う〜ん。半分正解ですね」
「半分?他に理由があるってこと?」
指輪交換的なアレかと思っていたのだが、それ以上の理由があるようだ。
「考えてもみてください。絆のクリスタルが完成したら、破壊しない限り相手と自分にプライバシーは無いも同然なんですよ?恋人と結ばれた勢いで作り始めたとしても、完成までの1年間で冷静になったり不仲になったりと、途中で断念する人も結構多いんです」
「……あぁ〜、完成したら自由がないと思うと、いくら仲良くても尻込みする気持ちはわかるな」
「ええ。だからこそ、1年間を乗り越えた2人の想いを讃えて愛の証と言われるという訳なんです」
「へぇ〜納得したわ。……って、あれ?これらの障害乗り越えて、ヨナはクロードと絆のクリスタルを作ったん?恋人でもないのに」
「だ、だから便利だから作っただけで……」
「いやいや……」
これも照れ隠しなのだろうか?
恋人や夫婦でも躊躇う条件を飲み込んで作り出したのに、それでも顔を赤らめて否定するヨナに驚く。その上で、他のメンバーがクロード達へ雑な扱いをしていた理由を察したのであった。




