19.溜まった作業の処理とユサタクへの報告
(今回のも流れるんやな〜)
契約が結ばれると同時に流れたアナウンスに少し驚く。
「それじゃあ、明日から頼むよ。これはサービスだから」
そう言ってルーカスは200枚の紙の束を渡してきた。
「いいんですか?」
「ああ、今回だけの特別サービスさ!次回からは100枚200ゴールドだからね」
「ありがとうございます。それじゃあ早速新聞読んでみます」
そう言ってノア・タイムスを出ると自分の農地へと向かう。
途中でユサタクからアナウンスの件についてコールがくるも農作業などが溜まってるので、ワールドアナウンスのお祝いだけし1時間後に教えると約束した。
「よし、到着っと。早速チケット使うか。モチョの小屋は少し離れたところでええかな」
先ほど農業ギルドで購入した5枚の土地引換チケットの内、モチョ用の畑を畝の端の方で使い、他の4枚は今まで通り重なるように設定した。
「だいぶ見た目もマシになってきたけどモチョの畑が飛び出てるのが気になるな。混ざってもあれやし仕方ないけどな。とにかく畑耕すか」
独り言を呟きながら早速全ての畑を耕していく。
途中でキャラレベルが上がったのもあり10分ほどで種蒔きまで全て終わった。
「約束の時間までまだあるしノア・タイムス読むか」
購入した新聞を畑に座りながら読み進めていく。
一面には今日から来訪する渡り人について前回の来訪(ベータテスト時)を踏まえての注意点やどう接するべきかが書かれている。
他にも各ギルドの特別依頼や店舗紹介、週間天気予報まで載っている。
「この中やったら1面と冒険者ギルドの特別依頼、天気予報の3つでええな。ジョブギルド分までやったらキリがないし」
まとめる箇所を考えながら読み進めていく。
「よし、全部読み終わった!経験値は・・・。キャラが50で司書が75か。毎日読めるのを考えるとまあまあやな」
初の【メモ】以外での経験値取得だが新聞1部だけなので感動が薄い。
ただそこは気にせず先ほど考えた部分を抜粋しながら紙に書いていく。
「うん、我ながらうまくまとめれたんちゃうかな?新聞へのマークは明日にして先にコピーするか」
コピー対象の上書きを避けるためマークは明日へと回しMPの続く限りに【コピー】を繰り出す。途中、
―スキル【メモ】のレベルが3に上がりました。【メモ】使用時に黒以外のペンが使用可能になります―
と初めての自力でのスキルレベルの上昇も挟みながら26枚の束が出来上がった。
「1枚は新聞社へ提出用やし、残りは25枚か。いいかげんユサタクも待ちわびてるやろうし早速コールするか」
STもMPも使い切った俺は目を瞑りながらユサタクへコールをした。
『待たせたな。無事作業終わったで』
『それはよかった。こっちはさっきのワールドアナウンスで大盛り上がりだぞ』
『まあ、それについては今から話すわ』
『ああ、情報料はまた弾むから頼む』
『さっきのアナウンスやけど、ノア・タイムスって所と契約したんや』
『ノア・タイムス?ベータテストでは聞かない名前だな』
『紹介してくれた人もその時には教えてないって言ってたからな』
『やっぱり。それで名前的に新聞社か?』
『鋭いな。この町では新聞が取れるんや』
『じゃあ、その契約でアナウンスが流れたって事か』
『ちゃうちゃう。そこからさらに踏み込むのが俺やで』
『焦らすな・・・。ってそれより新聞!?』
『やっと気づいたか。この情報隊長様が早速見つけてきたんや。貴重な情報源と司書ギルド以外での読書できるものをな』
『マジか。これ情報屋チームに売ればめちゃくちゃ稼げそうだな』
『あ、情報屋とかあるんや。まじでネット小説みたい』
『規模はかなり小さいけどな。それに現状1番の情報通はソーイチだし』
『照れるわ』
『それで、新聞をとる条件はわかってるのか?』
『ああ、多分【大陸語】のスキル持ちかつ土地もちやな』
『うわ〜、条件きついな』
『そうか?』
『まず最初の選択で言語系を選ぶのは少ない。特に【大陸語】は習得自体は面倒ではある。だががんばれば取れる分優先度がかなり低いんだよ』
『なるほど。でも情報屋とかは持ってそうじゃない?』
『持ってるだろうな。メインジョブを【見習い司書】にしているプレイヤーもいる。ただ、そういうプレイヤーは一刻も早く冒険者ランク上げて司書ギルドに登録しようとしてるから、サブジョブに初動の遅い【見習い農家】は選ばない。現時点で土地の入手方法は農家系統だけだからマジでお前しか無理なんじゃないか?』
『なるほどな〜。じゃあ俺のした契約がうまくハマりそうやな』
『そうだった。契約って一体なんなんだ?』
『向こうの社長さんと取引して新聞を一部こっちの言語で抜粋したのを販売する許可をもらったんや』
『本当か!!』
『ああ、高く売れそうやろ?今日発行分のはもう作ったからこっちにきたら見せるで』
『そろそろ閉門の時間だしダッシュでそっちに向かうよ』
そう言ってコールを閉じた。
tips
情報屋
VRMMO系の小説ではお馴染みの存在。
MJOでも情報屋は存在はするが司書ギルド登録へのハードルが高すぎるため、規模は大きくない。
そのため、プロゲーマーチームなどは独自の情報網(ユーザータクティクスにおけるソーイチのような)を持っているので更に影が薄い。
ブックマークや評価していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。