2.本番前のキャラメイク
「悪いな、機材の設定まで任せちゃって」
「気にすんな。メンバーの分も設置したし俺はもう設置工事のプロだしな」
得意げになりながらVRの機材を設置していく拓也。
MMO経験自体はあるけど、作家になってからは小説一本でやってきたから機械とか本当苦手。
「それで創一、キャラメイクはもう出来るし俺がいる間にやっとくか?」
「早くない?普通サービス開始してからするもんやろ?VRのゲームはそういうもんなんか?」
過去の経験から質問すると
「普通ならVRも変わらないけど、MJOは賞金付きだからな。事前にキャラメイクできるようにしてないと全員1番上のデフォルトで開始しかねないし運営的にもそれは困るんだよ」
「そういうもんなん?」
「ああ、MMOはとにかくスタートダッシュが大事。他のプレイヤーがまだいない新雪のようなフィールドに踏み込み情報や経験値のアドバンテージをいかにゲットしていくかが重要なんだよ。サーバーはいっぱい分かれてるけど1サーバーにつき3万人だから最初は文字どおり戦争になるしな」
「なるほどな」
3万人がひしめく町をイメージして若干うんざりすると共にスタートダッシュの大切さについては理解できた。
「プレイヤーに個性を出してもらいつつ機会を平等にするため事前に出来るようにしてるってわけ」
「じゃあ、俺もキャラメイクしてみるかな?機材設置はもう終わってるん?」
「終わってるで。大体30分もあったら出来ると思うし俺はここで待ってるわ。わからない事とか出てくるかもしれないしな」
「サンキュー。じゃあ、いってくるわ」
そう拓也に告げ俺は、早速VR機材を頭につけながらベッドでゲームを起動させてた。
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瞬く光に包まれた一瞬後に目を開けるとそこは全てが白い謎の空間へと移動していた。様子を窺っていると目の前に天使のような女性が声をかけてきた。
「ミックスジョブオンラインの世界へようこそ、こちらでは貴方様がこちらの世界で活動するための初期設定を行うことが出来ます。少しの間ではございますが、よろしくお願いいたします」
そう言いこちらへとぺこりと頭を下げた。
「よろしくお願いします。えっと事前登録ってどこまで決めるんです?」
念のため質問を投げかけてみると
「私どもの世界での貴方様の『お名前』『身体情報』『初期職業』『初期スキル』が可能となっております」
という言葉とともに目の前に白いプレートが浮かび上がってきた。
NAME 「 」
ジョブ メイン
サブ
スキル 「 」 「 」 「 」 「 」 「 」
まず目につくのが2つのジョブ、メインジョブはゲーム内で上位や同系統の特殊職を除き変更が出来ないがレベルアップ時のステータス上昇やジョブスキルの補正はサブジョブより大きくなる。
サブジョブは特定施設で転職は可能だが、メインより補正は大きくなく転職すると変更後の職業に上書きされる(レベルは保存されるため、転職で元に戻せば補正も戻る)
膨大なジョブやスキルが画面を埋め尽くしたが、事前に聞いていた内容と変わらない為スムーズに選択していった
NAME 「ソーイチ」
ジョブ メイン 見習い司書
サブ 見習い農家
スキル 「大陸語」「古代語」「エルフ語」「待機」「メモ」
我ながら戦闘する気が全くない構成である。
メインの見習い司書は初期ステータスは全職で1番低く、取得経験値は読書時や同系統スキル使用時に1.5倍、戦闘では0.5倍とかなりピーキーな職となっている。
見習い農家も生産職のためステータス補正は多くなく、さらに農家系統の経験値が1.2倍、戦闘が0.8倍とこちらもいい感じに苦労しそう。
スキルはまず初期で取れる言語系3種だが、ベータテストの範囲では古代語もエルフ語も見当たらなかったらしい。その分ゲーム内での取得も絶望的っぽいんで迷わず取得。
「待機」は一定時間に移動をほとんどしない時にスタミナと魔力の両方少しずつ回復できるスキルとなっており、読書時は動かないことが多そうだからとこちらも迷わず取得。
「メモ」はゲーム内で紙に文字が書けると言うだけのスキルではあるが、いいネタが浮かんだときにすぐ書き込めるように取得。司書系スキルなんで使えば経験値入るし自分にとっては1番大事なスキルとなってる。
以上のJOBとスキルを登録した俺は、見た目は今のままから髪の毛を銀髪のショートにかえ目をライトグリーンに変えるだけという手抜きで作成しキャラメイクを終えた。
「ソーイチ様、お疲れ様でした。4月1日の開始までの間お待ちくださいませ。
渡り人としてこちらへいらっしゃるのを私どもは心からお待ちしております」
その言葉を聞きながら俺は現実へと戻っていった。
tips
『渡り人』
MJOにおけるプレイヤーの総称。