166.早残業と突撃インタビュー
入れるかどうか不明だったのだが、受付のコビーはあっさりと中に入れてくれた。
「いや、今までも要約新聞の提出で開店前に入ってたでしょ」
「あっ、そういえば入れてましたね」
「俺も最近提出は任せっきりやから、すっかり忘れてたわ」
「はぁ〜。でも受付より先に入れるには【記者】系ジョブだけだから、アマネさんが作業部屋に入るのは無理だけどね」
ど忘れ2人組にため息をついたコビーは補足の説明をする。
「それは仕方ないですね。では予定を変更して露店のオープン作業しますので、ソーイチさんは出来次第持って来てくださいね」
「無駄足踏ませてごめんな。要約新聞は30分以内に渡せるように頑張るわ」
「ええ。よろしくお願いします」
そう言ってノア・タイムスを去るアマネ。彼女の転移の光を見送った後、早足で作業場に向かった。
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「ふぅ、完成。やっぱりグローブ使うと早いな」
【デュアルグローブ】を装備しポーションがぶ飲み&アーツを放ち続ける事10分と少し。依頼されていた昨日・今日の要約新聞を合計300部印刷する事ができた。
「おはようソーイチ君。早速作業部屋を活用してるみたいだね」
「おはよう。もう【デュアルグローブ】はマジ最高。おかげでいつもより多めに要約新聞を刷ったのに、あっさりと仕上がったもん」
「お役に立ってるなら良かった。ところで今日は依頼受けていくかい?」
「う〜ん。最近引きこもってばっかりやから、今日はフィールドで冒険する予定。という訳で受注は無しで」
「フィールドか……。ならピッタリな依頼があるんだがどうだい?」
俺の活動内容を聞き、新しい提案をするルーカス。
「フィールドでの依頼か。取材とか記事作成みたいな町中以外って事やんな。興味あるし教えて」
「オーケー。依頼書取ってくるから待ってて」
「……昨日は各部署の調整って言ってたけど、やっぱ社長がやってんのって雑用仕事やんな」
バタバタ音を鳴らしながら部屋から飛び出るルーカスを見て、薄々感じていた事を呟いた。
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「はぁ〜はぁ〜。お、お待たせ!今回オススメの依頼書持ってたよ」
「持ってきてありがとう。早速読ませてもらうわ」
息を弾ませるルーカスから依頼書を渡された俺は、早速内容を吟味していく。
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【突撃!魔物へインタビュー!】
先日行われた魔素流入により強化された魔物の情報収集
必要技能:【インタビュー】
推奨技能:なし
【報酬】
魔物の1種類に付き 100ゴールド 50AGP 50BGP
(10種類毎に追加報酬有り)
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「なるほど。魔物の調査か。確かにこれも取材の一部かもしれんな」
「本来ならこの大陸の魔物のデータは揃ってるんだけど、今は【アースの町】付近の魔素をこっちに流し込んでるだろ?それで強さ以外に異変がないか確認する必要があるんだ」
「でも【インタビュー】って豆知識的なのしか書いてなかったと思うんやけど、そんな情報で違いとか分かるん?」
「まあ強さが増したとしても基本的に変わらないよ。でも強化種や亜種といったイレギュラーな魔物が生まれたりするからね」
「イレギュラーな魔物か。なんか凄そうなやつ来たな」
「うん。基本的に魔物の出現は魔素の濃度で決まるんだけど、それが高まるにつれて変異する可能性がちょびっとだけ増えるんだ。だから魔素濃度を変える度に依頼を出してるって訳」
「へぇ。特殊な魔物はいるかなぁ〜とは妄想してたけど、ホンマに出現するんやな」
「うん。僕らとしては頭の痛い問題だよ」
「ただでさえ忙しいからな。でも不謹慎かもしれんけど少し興奮するわ」
「まあ、渡り人のみんなはヤンチャだからね」
ゲームや小説でも度々登場するイレギュラーモンスターがこの世界にも存在すると知り少しワクワクしていると、ルーカスは呆れと興味の入り混じった目線を俺に送る。
「話を戻すけど、この依頼なら君の目的ともピッタリ一致でしょ?後、冒険者ギルドや戦闘系ギルドでの討伐系依頼もついでに受注しとけば、ポイントたんまりと貯められるんじゃないかな?」
「おお、それエエやん。生産系のポイントはたんまり稼いでるけど、戦闘系の方は全然やからな。3種の依頼を同時に挑めるのは効率ええな」
「そうだろ?是非是非オススメだよ?受注してみてよ」
すごくグイグイとこの依頼を受けるように推すルーカス。
「そうやな。ルーカスの言う通り今日の俺にピッタリな依頼やし、喜んで受注させてもらうわ」
「ありがとう!色々と忙しくて、外へ回す人員がいないから本当に助かるよ」
「やけに勧めると思ったら、そういう事情もあったんやな」
「あはは……」
「まあ、ええけどな」
目的はどうであれ、美味しい依頼には違いない。そう考えた俺はルーカスの勧めのままに、この依頼を受注することに決めたのだった。
次回はおそらく11月17日(月)午前6時に更新予定です。
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