16.変わった名前の料理人
農作業を終えた俺に話しかけてきたのは、少し小柄な可愛らしい女の子であった。
「えっと、そちらはユサタクから派遣された?」
「はい、情報料の支払いと料理人が必要と聞いて参りました。
メインジョブが【見習い料理人】、サブジョブが【見習い錬金術師】をしてます、ベイクドモチョチョといいます。モチョと呼んでください」
「ソーイチです。よろしくって、え、なにそれ」
あまりに聞き覚えのない名前に失礼にも聞き返してしまう。
「あはは、面白いかなって付けたんですが元ネタわからないですよね」
「あ、ちゃんとある言葉なんや?」
「一応ネットで作られた造語らしいんですが・・・」
「へ〜。どんな意味なん?」
「今川焼きとか大判焼きって地方によって呼び方違うじゃないですか?
それでどれが本物かって言い合ってる所に突如現れたのがベイクドモチョチョだそうです。まあ数十年前のネタらしいので私もお父さんから聞いただけなんですけどね」
「そんな造語があったんか。ある意味でゲーム始めて1番のネタゲットかもしれん」
「次回作には是非!」
(あの和菓子にその名称か・・・。俺は御○候やな〜、企業名やけど)
感心と謎の対抗心を抱いていると、モチョは気にせず話しかけてきた。
「えっと情報料をお渡しする前にフレンド登録いいですか?」
「ああ、ええよ」
「ありがとうございます」
そう言うとシステムを操作するモチョ、そして
ーベイクドモチョチョ様よりフレンド申請が寄せられましたー
と言う通知に了承する。
「無事できましたね!正直農業系統の方って序盤は少ないらしいのでフレンドになれて嬉しいです。これからはよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく、色々注文するかもやけど逃げんといてな」
「じゃあフレンドになった事ですし早速お渡ししますね」
そういうと取引画面が立ち上がり、モチョから13,000ゴールドが送られてきた。
「3,000程多いで、間違ってない?」
「いえ、3,000ゴールドは私からです!見た感じ畑も小さいみたいですしね。
言ってみれば、投資ってやつですよ」
メガネをくいくいする動作をしながらモチョは言う。
「もらってばかりで申し訳ないな。・・・そや、提案があるんやけど」
「提案ですか?」
「ああ、小屋付きの畑が2,500ゴールドやからそこをモチョ専用の畑にするんはどないや?種代さえ払ってくれたら好きな作物収穫するで!」
「え!?いいんですか?」
「ああ、それに小屋で寝る事もできるみたいやし宿代節約にもなるやろ、設定でフレンドも可にできるし」
「宿代とか大変なんで助かります!調理器具とか置けたりするんですかね?」
「そこはまだシステム触ってないから後で確認して」
「りょーかいです」
可愛らしく敬礼ポーズをするモチョ。
「じゃあ、お金も入った事やし畑と種買い足しにいくかね」
「着いて行っていいですか?」
「まあ、モチョ用の畑も買うしな。ええで、ついて来て」
そうして俺とモチョは農業ギルドまで歩いて行った。
「あら、ソーイチさんどうしたんですか?」
ギルドを出てから2時間もしないうちに戻る俺に不思議そうにアレンが尋ねる。
「思ったより早く種蒔き終わったからな。ゴールドも手に入ったし追加の農地と種買おうと思ってな」
「なるほど。ちなみに隣の女の子は?」
「初めまして!【見習い料理人】のベイクドモチョチョです。ソーイチさんとはフレンドになったばかりなんでついて来ちゃいました」
「あらあら、ソーイチさんも隅に置けませんね。早速女の子連れだなんて」
「揶揄わんといて。友人から紹介されただけですって。料理人とは仲良くしたいしね」
「そうですね。私たちの作物も料理されてこそですもんね」
「そう言ってくれて助かります。あと私のサブジョブも【見習い錬金術師】なので薬草系でもお世話になりそうで・・・」
「食べ物ばかり考えてたけど、薬草もか」
「まあ、錬金術師ですと肥料とかも作れるはずですし本当に相性バツグンじゃないですか!お互いに手放しちゃダメですよ」
登録や説明の時とは違いすごくワクワクした目でグイグイとくるアレン。
「あはは、そうしときます。じゃあ、早速なんですが、1つ聞いてええです?」
「なんでしょう?」
「モチョ専用の畑と小屋を1つ用意しようと思うんやけど小屋の中で料理とかできるんです?」
「早速同棲!?って失礼しました。えっと携帯料理セット系統のアイテムをお持ちならば可能です。販売場所は料理ギルドになりますので、そちらでご確認ください」
「わかりました!後で行ってみます!」
「じゃあ、すぐ行けるように買い物終わらせなな」
次の予定が決まったので早速買い物をする。
そして俺は新たに 南地区の土地5区画(内1つ小屋付き)と小麦・薬草・人参・キャベツとモチョ希望の玉ねぎの種を10粒ずつ購入した。
(また、1,000まで減ったな。まあ、ほぼ1〜2回で元取れるし全然ええけど)
「お買いあげありがとうございました。購入分の依頼は受けられますか?」
「作物実ってからでも受けれます?」
「ええ、指定個数との引き換えなので収穫後でも大丈夫ですよ。今購入された分の依頼はいつでもありますしね」
「じゃあ、収穫後に依頼受けますわ」
「お待ちしております!」
そう言って別れて次の目的地である料理ギルドへと向かった。
tips
野菜の種
農業ギルドで販売している種。種類はとても多くスーパーで買える野菜は一通り揃っている。
収穫にかかる時間はカブとジャガイモを除き22時間と統一されている。
今更ながら誤字報告機能に気づきました・・・。
皆さんのご指摘に感謝の気持ちでいっぱいです!
本当にありがとうございます!
ブックマークや評価・誤字報告をしていただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。