160.グラサンビジネスとお披露目
突如始まった《サングラス誤魔化し》大喜利。実験も一息つき暇だったのか、それはもう沢山のアイデアやネタが飛び交った。そんな中、今回採用されたのが、
「ソーイチさん、目線ください!はい、笑って」
「こ、こう?』
「ナイスです!次はクールっぽく目線は斜めに」
「お、おう」
「はい、オッケー!!」
俺や他のメンバーのグラサン姿のスクリーンショットをチームのサイトに掲載し、グラビア&ファンサービス企画という体で押し通すという、力技でいくことになった。
ベイクドモチョチョ:ソーイチさんカッコいいです!
アマネ:銀と黒のコントラストが最高ですよね。
ミコト:ちょっと!私がドラマ見てる間に面白いことになってるんですけど!というか、今見れないんですけど!
ゼロ:参加してないと思ったら、サブスク中だったんですね。
セキライ:ミコトさん落ち着いて欲しいっす。キャラ崩れてるっすよ!
フワフワ:でも私も見たいです〜。あぁ、こんな事なら実験譲れば良かったですよ〜。
ミコト:ですよね!
ソーイチ:あはは……。
実験中で目を開けられないミコトが俺のグラサン姿を見たいと騒ぎ、更にフワフワも便乗する。
そんなドタバタ具合に思わず苦笑いを浮かべてしまう。
アマネ:それより、これってビジネスチャンスですよね。全員違うサングラスを着けてもらって、ソーイチさんモデルとかのファングッズを売り出すのアリじゃないですか?
ゼロ:確かにいいですね。それの宣伝という名目なら、町中でサングラス掛けていても言い訳できますし、ブームが来ればより目立つこともなくなりますよ。
ソーイチ:こっちはこっちで、ガチな話しとるな……。
雑談・戦略入り混じり、クランコールのカオスっぷりがドンドン加速する。俺はその喧騒を眺めながらも、見習い卒業に向けサインを【コピー】していく。
ー【見習い記者】のレベルが上限に達しましたー
《ソーイチ様がプレイヤーで初めて【見習い記者】のレベル上限に到達いたしました》
セキライ:おお!ソーイチさん、卒業おめでとうっす!
ユサタク:おめでとう
・
・
見習い卒業のアナウンスが鳴り響くと、先程のカオスっぷりから一転、クランコールに滝のような祝福のコールが流れる。
ソーイチ:みんな、祝ってくれてありがと!ここまで早く卒業出来たんも、みんなの支援のおかげや。
ユサタク:はは、ソーイチは謙虚だな。で、行くのか?
ソーイチ:ああ。予定通り教会とノア・タイムス行ってくるわ。
俺はみんなにお礼を言った後、教会へと転移した。
・
・
・
「昨日は楽しいひと時とご馳走、ホンマにありがとうございました。これ今日の分の果実です」
「こちらこそありがとう。子供達も本当に楽しそうでしたし、また来てくださいね」
「ああ。またお邪魔させて貰うわ」
「ふふ。楽しみに待っていますよ。……さて、雑談はこれ位にしましょうか」
「了解。じゃあ祈らせて貰うわ」
クリスに促された俺は、慣れた動作で祈りを捧げ、
《ソーイチ様がプレイヤーで初めて記者に転職いたしました》
本日3度目(記事のやつは聞いてないが)のアナウンスを響かせた。
「転職おめでとうございます」
「こちらこそ、連日対応してくれてありがとう」
「いえいえ、仕事ですから。では、今日の分の聖水をお持ちしますので少々お待ちください」
クリスは祝福の言葉を伝えた後、先程手渡した果実と交換する為の聖水を取りに席をたった。
(今のうちにジョブ確認するか〜ってあれ?)
彼女が戻ってくる前に、新ジョブのステータスを確認しようとした矢先、ドアの影に隠れてこちらを窺う少年と目が合った。
「確かキース君やっけ?どうしたん?」
「あっ、ソーイチさんだったんだ!サングラスしてるから気づかなかったよ」
「ああ、知らん人と思って様子見てたんか」
「うん。でも昨日はサングラス着けてなかったよね」
「実は今日から着けはじめたんや。どや?ワイルドやろ?」
「うん!ソーイチさんカッコいい!」
「そかそか〜」
「っ!えへへ」
目を輝かせながら話すキースに嬉しくなり、思わず頭を撫でてしまう。無邪気に笑うキースにほっこりしていると、その様子を微笑ましそうな目で見つめながらクリスが戻ってきた。
「ふふふ。2人とも仲良しさんですね。何があったかしら」
「シスター。ソーイチさん、サングラス掛けてるよ!カッコいいよね!」
「そうそう。こんな感じで褒めてくれてな。嬉しくて思わずな撫でちゃったわ」
「あらあら。確かに似合ってますね。素敵ですよ」
「あはは。クリスからも褒められるとか、イメチェン大成功やな。これサービス」
素直な子どもと嘘をつかない聖職者の両方から褒められ、自分のファッションに自信を持つ。
そしてテンションが上がった俺はサービスで追加の果実を渡す。
「もう。ご褒美を貰うつもりで言った訳じゃないのに……」
「わかってるって。純粋に嬉しかったから追加したんや。また子供達に振る舞ってあげて」
「ふぅ。わかりました。ありがたく頂戴しますね」
「わ〜い。お兄ちゃんありがとう!」
「はは、どういたしまして。じゃあ転職も出来たし、もう行くわ」
「ええ、いってらっしゃい。ソーイチさん、また遊びに来てくださいね!」
「お兄ちゃん、またね〜」
嬉しそうに手を振る2人を背に俺は教会を後にした。
・
・
・
(ノア・タイムスに到着。今回は【記者】にチェンジとかグラサン装備と俺はパワーアップしまくりやし、みんなオモロい反応してくれるかな)
ルーカス達のリアクションに内心ワクワクしながら、俺はノア・タイムスの扉を開く。
「増刷早く!もうギリよ」
「ポーション品切れ!ジャンジャン持ってきて!」
「うぷっ。も、もう飲みきれません……」
ウキウキで開いたその先では、なぜか怒号が飛び交っていた。
「……忙しそうやね。また出直すわ。って、うぉっ!?」
あまりの喧騒に反射的に回れ右したのだが、外へ出る前にグイッと肩を掴まれる。
嫌な予感を感じながらも、恐る恐る振り返るとそこには、
「やぁ、ソーイチ君。とても良いタイミングで来てくれたね!ささっ、こちらに来てくれたまえ」
凄くいい笑顔をしたルーカスがそこに立っていた。
次回は多分11月11日(火)午前6時に更新予定です。
ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。




