141.人手不足と人材紹介
「ソーイチさん、お待たせしました!今回はノア・タイムスさんへの同伴&紹介を請け負ってくださり、本当にありがとうございます!」
「前の転移ポイント探しの時にめっちゃお世話になったし全然かまへんよ。ただ紹介はするけど、コネが作れるかどうかはプロス次第やで」
「それはもちろんです!面通しさえ出来れば、情報屋クランのプライドに賭けて、なんとか【見習い記者】になってみせますよ!」
「そうか。じゃあその勢いのまま行くか」
プロスの意気込みを聞いた俺はプロスの熱が冷めないうちにノア・タイムスまで共に向かった。
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「いらっしゃい、ソーイチ。朝の要約紙の受け渡し以外で、わざわざ出向くなんて珍しいね。何か用事でもあるのか?」
「よぉ、コビー。実はルーカスから【メモ】のスキルレベルが最大になったら、【見習い記者】について色々教えてくれるって聞いててな」
「ああ、なんかそんな事言ってたね。じゃあ社長呼んでくるからちょっと待ってて」
そうしてコビーが席を離れてから待つこと数分、奥の方からヨレっとした雰囲気のルーカスが現れた。
「やぁソーイチ君、【メモ】が無事に育ち切ったんだって?」
「うん。それで【見習い記者】についての情報を教えてくれるって、ルーカスから言われたの思い出して来たんやけど・・・。なんか疲れてる?」
「ははは、バレたか。昨日、領主様がアースの町解放についての公示をしただろう?それに伴い、号外や特集記事の作成の為に、我が社は修羅場の真っ只中だったんだよ」
疲れた笑みを浮かべながら話す。
「あぁ〜。そんなヤバい状況で来てごめんな。忙しいんやったら出直そうか?」
「全然構わないよ!というか、修羅場すぎるから、記者が増えるのは大・大・大歓迎だからね!」
「なるほど・・・。じゃあ丁度ええかもな。実は本題とは別に【見習い記者】志望のプロスを連れてきたんや」
「プロス君?・・・あぁ!確か渡り人の中でも情報系に携わるクランのリーダーだよね?もしかして記者に興味あるのかい!」
「ええ!我々【オモイカネ】は、メンバー全員が【見習い記者】というジョブに興味津々なんですよ!」
「と言う訳や。やる気満々やし、なんとか面倒見てくれへんか?」
プロスを前に押し出しながら、ルーカスへ紹介する。すると、目を爛々と輝かせながら
「だ、大歓迎だよ!この人手が不足してる中、渡り人の中でも有数の情報系クランのメンバー達が記者志望だなんて、感激だよ!」
渡りに船だったのか、全身を使って歓迎の意思をアピールしてきた。
「で、でしたら我々【オモイカネ】も記者系ジョブに就けるんでしょうか?」
「もちろんだよ!ただノア・タイムスは一応この町の情報の管理を担っているからね。一応、最低限の条件とテストを行わせて貰うよ」
「テ、テストですか?」
「うん。まず【見習い記者】に転職を希望するのなら、サブジョブでも良いから【司書】をセットした上で、【メモ】をスキルレベルを9まで上げる事が最低条件だね」
「な、なるほど・・・」
「それに加えて、どんな内容でも良いから、希望者本人の手で記事を1ページ書いてもらう事にしようか」
「なるほど、見習いでも記者を名乗るんやったら、記事の一つや二つ書くくらいの情熱は欲しいってかんじやね?」
「ああ。僕は意欲や情熱が一番大事だと考えてるんでね。それを測るテストにさせて貰ったよ。ただ記事1ページだけだと、数日間に渡り要約紙を出し続けてようやく転職出来たソーイチ君に少し悪い気もするなぁ」
「そこは全然かまへんよ。それより【見習い記者】が増える事で情報の流れがスムーズになる方が、俺的にはありがたいしな」
「それなら良かった。という訳で、どうだい?プロス君やって見るかい?」
「や、やります!【オモイカネ】の総力を上げて、メンバー全員が【見習い記者】になれるように、頑張ります!」
「うんうん。期待しているよ!」
とっかかりが掴めないとはなんだったのか?紹介してからものの数分で【オモイカネ】とルーカス社長の間に熱い友誼が結ばれたのだった。
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「ふぅ。いやー、良い出会いに乾杯だね。紹介してくれてありがとう」
「そこまで喜んでくれたんやったら本望や。ところで、忙しい中時間作ってくれてるんやし、ええ加減本題に入れへん?」
「あっ、忘れてた。今回聞きたいのは【見習い記者】についてだったね」
「そうそう。わざわざ【メモ】上限まで上げてねって話やから、何聞けるのかワクワクしてたんや」
「まあ教えるのは良いんだけど、プロス君も一緒でいいのかい?」
「うん?どういう事?」
「今回はソーイチ君が頑張ったご褒美みたいなものだからね。情報を扱うものとして、独占したくないのかなと」
「ですね。既に紹介もして頂きましたし、私はこれでお暇しましょうか?」
「あぁ〜。そこは大丈夫。俺の本業はあくまで【司書】やしな。【記者】メインになりそうなプロスこそ聞くべき内容やと思うし、一緒に話聞こうや」
「あ、ありがとうございます!では私もお話を聞かせて頂きます。そしてソーイチに無許可で絶対に他所には漏らさない事をここに誓います!」
「そこまで気にせんでええのに。まあ、それでプロスの気が済むんやったらええか」
過剰なまでに恩を着ているプロスに対し、驚きつつも、俺は好きにさせる事にした。
「ははは、良い感じに話がまとまったみたいだね。じゃあ前置きが長くなったが【見習い記者】というか、【記者】系統での役割についてお話ししようか」
そういうと、紅茶で一旦喉を潤したルーカスが説明を始めた。
「説明を始める前に、まず二人の認識の確認から行こうか」
「認識?」
「ああ。基礎的な質問で恐縮なんだが、二人は記者とは何をするジョブだと思う?」
「そりゃ新聞に載せる為に、記事を書く事やろ?」
「それ以外にも、記事を書く為に取材も必要ですよね」
「その通りだね。取材と記事の作成、後は誤字脱字の確認や日常の雑務が記者のお仕事になる。そこで二人にはこれを見てもらいたい」
そう言ってルーカスは数枚の紙を差し出した。
次回は9月20日(土)午前6時に更新予定です。
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