138.設定の再確認と【開拓者】
【ユーザータクティクス】全員が混乱する中、かろうじて理性を残していたユサタクがフワフワに質問を投げかける。
ユサタク:【開拓者】の存在意義から考えて、いずれ村作りクエストが発生するのは予想していた。だが順序としては大討伐の前の砦作りか、【アースの町】解放後にフィールドの奥地との中継地点作成ってのが俺の考えだった。フワフワはどうして大討伐から町解放の間に村作りクエストが発生すると読んだんだ?
フワフワ:あっ、砦造りもあるかもですね〜。って質問から逸れてますね。今回私がアース解放前に村作りクエストが起きると予想したのは、ノア以外の町の設定から逆算したからです〜。
セキライ:設定っすか?確か町全体を結界で覆ってるのは覚えてるっすけど、他にもなにかあったっすかね?
ゼロ:はぁ〜。あんなに印象的な設定、もう忘れたんですか・・・。
メープル:町を覆う結界に全魔力を費やす為に、結界内を真空化して魔素濃度をコントロールする分をカットしてるんだよね。
アマネ:そうそう。で、真空状態でも生き残る為に、住民全員が石化してるんです。いずれ復興できる日の為に・・・。
セキライ:ああ〜!?暗い話だから頭の奥に封印してたっすよ・・・。
ベイクドモチョチョ:私達が助けに来るとわかってても、自ら石化を選ぶのは覚悟決まりすぎですよね。
初めて設定を聞いた時の驚きを思い出したのか、ポツポツと感情を吐き出すメンバー達。
フワフワ:皆さん他の町の現状を思い出したようですね〜。
ソーイチ:せやな。改めてグロい設定なんやって思い知ったわ。
フワフワ:ですよね〜。で、それを踏まえて質問なんですけど、年単位で活動停止していた町に、プレイヤーの大多数が活動するだけのキャパシティがあると思いますか〜?
ユサタク:そりゃ無いな。住居や各ジョブの施設も老朽化やメンテナンス不足などの理由で、点検するまでは使用できないだろう。
ゼロ:それに復興のための資材の置き場所も無さそうですね。
ベイクドモチョチョ:私はプレイヤー側の食糧が気になります!各々が持参するにしても限度がありますし。
ソーイチ:町解放のタイミングって満腹度実装後か。そりゃ料理人のモチョは気になるわな。
それで話をまとめると町を解放してもすぐには活動拠点を移せへんし、復興資材の置き場も別で用意せなあかん。そう考えたら村づくりクエが出るってのは現実的な未来やと俺は思うで。
【アースの町】解放直後に起きる問題が芋づる式に挙がっていく。俺はそれらの意見をまとめつつ、フワフワの理論の正当性に同意する。
フワフワ:えへへ、ありがとうございます〜。要するに中間地点の準備がないと、新マップに行くたびにノアから出発って面倒な事になりそうです〜。転移クリスタルがあるにしても、タイムラグがあるのは面倒ですし〜。
セキライ:そもそも【ノアの町】から転移できるんっすかね?設定的にはここだけ別の次元にあるんすよね?
ソーイチ:魔族の脅威から逃げる為に作られたっぽいし、転移を限定してるってのはありそうやな。
メープル:うわぁ〜、ありそう!
フワフワ:考えれば考えるほど面倒ですよね〜。で、ここまで挙がった問題を解消する為、村作りクエストが発生する確率が高いのは、ご理解いただけたと思います〜。そして【開拓者】を強く推していた理由も。
ゼロ:ええ。膨大な資材やプレイヤー用の拠点作成となると超大規模なクエストになります。そこでメンバー全員が【開拓者】のジョブを解放していれば、村作りクエストに参加や、場合によっては主導権を握るのも夢じゃ無いですね。
セキライ:うんうん。それに運が良ければ村作りの為の先遣隊として、新マップに一番乗り出来るかもっすね!!
ベイクドモチョチョ:それ良いですね!初到達に大規模クエストのクリア実績・・・夢が広がりますよ!
ソーイチ:PPもメッチャ稼げそうやし、小説のネタになりそうな新体験も待ってるかもしれんな!
希望に満ちた展望に、みんなのテンションが天元突破している。かく言う俺自身も見た事のない景色が見れそうですワクワクが止まらない。だが、ユサタクはそんな中でも冷静だった。
ユサタク:妄想する気持ちはわかるがみんな落ち着け。俺自身、フワフワのアイデアが実る可能性は高いと思う。ただ【アースの町】を解放した直後に、『神様がなんとかしてくれました〜』的なイベントでふんわりと解決してくる可能性もゼロじゃない。そうなると村作り計画やPP大量ゲットも絵に描いた餅だぞ。
アマネ:あぁー。確かに普通のゲームなら町を解放した時点で、不思議な力が働いて〜とかありそうね。
セキライ:ありがちっすね〜。じゃあフワフワのアイデアは却下っすか?
ユサタク:そうは言ってない。採用した上で村作りクエストを起こす確率を増やす方法はないか検討する必要があるって事だ。
フワフワ:なるほど〜。果報は寝て待てじゃなくて掴み取るって訳ですね。
ユサタク:その通り!
ソーイチ:要するに、村作りが必要ですよってこの世界に認めさせる必要があるんか・・・。
ベイクドモチョチョ:う〜ん。これはソーイチさんの出番じゃないですか?
ソーイチ:うん?どう言う事や?
ベイクドモチョチョ:今、友好度や信頼度のトップってソーイチさんですよね?だったら村作りクエストが存在するのか?しないのであれば、村作りの有用性を売り込んでクエストを発生させる。そんな役割出来るのソーイチさんだけですよ!
ソーイチ:えらい無茶振りやな!
ゼロ:でも出来るとすればソーイチだけですよ。
メープル:うんうん、ノアタイムスの一面を何度も飾っていますし、知名度的にもソーイチしかいませんよ!
ソーイチ:マジか・・・。
フワフワのアイデアにただ乗りするだけかと思いきや、いつの間にか重要なポジションに置かれた事にびびる俺。だが無理難題こそ作品のネタになる。そう考えた俺は搾り出すような声で、
ソーイチ:もぉ〜、しょうがないな!とりあえず明日にでもアピールしてくるわ。
ギルドへのアピール任務を引き受けた。
セキライ:さすがソーイチさん、思い切りがいいっすね!
ソーイチ:逃げ道塞いどいて、よう言うわ。でも良い経験になりそうやし引き受けるわ。その代わり冒険者ギルドに持ってく手土産のお菓子頼むで。
ベイクドモチョチョ:もちろん!
フワフワ:絶品の差し入れをご用意しますよ〜。
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ユサタク:さて結論が出たな。今後はソーイチが冒険者ギルドなどで村作りの必要性のアピール。更に全員が【見習い開拓者】の解放を目指す。この流れでいいな!
クランメンバー:了解!!
最後にユサタクがまとめて、俺達が次に進む道標は決まったのだった。
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ソーイチ:さてと、ミーティング終わったし議事録を人数分作ってから落ちるわ。リアルでシャワーも朝飯もまだやし。
ユサタク:ああ、ありがとう。手間かけさせて悪いな。
ソーイチ:気にせんといて。こういう作業は【見習い記者】や【メモ】のレベリングも兼ねてるしな。
ユサタク:それなら良いが。っと、俺も仮眠の途中だったし落ちるか。再開予定はゲーム内時間で明日の昼以降になるとおもう。
ベイクドモチョチョ:了解です〜。お二人ともお疲れ様でした!
フワフワ:お疲れ様です。それとソーイチさんが次回ログインしたくらいのタイミングで師弟の経験値が入ると思うので、期待しててくださいね〜。
ソーイチ:マジか!じゃあワクワクしながら飯食ってくるわ。
こうして俺はクランコールを閉じた。その後はワールドクエスト関連の話題や、クランの行動のネタなどを1枚にまとめ、MPを全て使用して【コピー】していく。
(ワールドクエスト開始に開拓者集団へ方向転換、挙句の果てにギルドへのアピールか。朝飯前にしては濃すぎるわ。でもレベリングにジョブチェンジとやりたい事だらけやし、チャチャっと食べてまたINするか)
こうして予定を遥かに超過した朝活に少し驚きつつも、俺は遅めの朝食を取るためログアウトしたのだった。
今回登場する町の設定は64、65話にあります。気になったらそちらも読んでみてくださいね!
次回は8月23日(土)午前6時に更新予定です。
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