134.主役のジョブと残念なジョブ
「【見習い聖女】!?聖女ってこんな序盤に転職出来て良いやつなん?」
「ですよね〜。聖女って作品によっては、ユニークジョブだったり、サービス後半に追加されるようなジョブですしね〜。なので憧れてたとはいえ、こんなに早く転職の目処がつくなんて想像すらしてませんでしたよ〜」
言われてみれば聖女といえば、勇者や賢者と並んでラノベ系作品の主人公ポジになるポテンシャルがある。そんなジョブがMJOのサービス開始から2日目に転職の道筋がわかるとは予想外にも程があるだろう。
「こんなに聖女が来るの早いってことは、勇者とか賢者みたいな主役ジョブ早めに見つかりそうやな」
「かもしれませんね〜。でも、よくよく考えてみればMJOの世界には神や魔王も存在しますよね?聖女がこんなに早いなら、更に上のポジションにそれらが用意されてるかもしれまんよ〜」
「うわっ、確かに種族チェンジとかも含めて将来ありそうや。それに友好度的な感じで、カルマ値とか隠しステータスもあるかもやしな」
フワフワの考えは世界観にマッチしているし、実際に解放された場合のインパクトもデカそうで考察が当たっているかも?
「さてと、お話もいいですけど、せっかく経験値アップの効果ついた事ですし、続きのお話は畑仕事しながらにしましょうよ〜」
「ああ。確かに効果勿体無いな。それにリアルでも朝飯の為のログアウトせなあかんしテキパキせんとな。という訳でアーツ放ちながらの畑仕事デートと洒落込もうか」
こうして俺とフワフワは隣り合った農地をアーツを使い耕し、水を撒き、種を蒔く。そんな中フワフワは、ログアウト中に起きた出来事を俺に語ってくれた。
例えば大収穫クエが前倒しでクリアできた事。繰り上がりクリアのご褒美で、現在はフワフワ以外のメンバーが現在スキル講習に参加している事(フワフワは少し後で受けるらしい)。クラン内で師弟システムを開放したメンバーが5人増えた事。モチョが【大食い】の称号をGetし恥ずかしがっていた事。そして最後には、
「リーダーが新しい派生ジョブを2つも発見したんです!まぁ能力はスゴイけど少し残念って感じですけど・・・」
我らがリーダーの活躍についてだった。
「2つも!?スゴイけど残念って意味わからんし。後新ジョブの条件も気になるなぁ・・・ってユサタクって確か称号ゲットの為に引きこもってたよな?という事はジョブが発現したんは【見習い農家】卒業が原因やろ?」
「大正解!さすがソーイチさん鋭いですね〜。確かに今回の新ジョブ発見の第一歩は農家へのランクアップによるものでした」
「おっ、当たったか。じゃあ次のクイズはどんなジョブになったかやな。確かユサタクのジョブ構成って【斧戦士】【木こり】【農家】の3つ、その組み合わせで生まれるジョブってあるか?」
「1つは結構簡単ですよ〜」
「う〜ん・・・。全然思いつかへんな〜。残念やけどここでギブアップや。フワフワちゃん答えプリーズ」
いくら頭を悩ませても、フワフワの言うような驚き&残念な能力を持つジョブなど全く思いつかない。俺は降参を宣言し、フワフワに解答を求める。
「では、説明しましょう。1つ目のジョブは【戦闘系ジョブ】と【農家】の見習い卒業で出現する【見習い屯田兵】です〜」
「屯田兵!言われてみれば荒れ果てた土地を開墾する兵やし、その組み合わせで屯田兵は納得やな。というか逆に思いつかんかったん悔しすぎる!」
「ははは、すぐ思いつきそうなのに盲点ですよね〜。ちなみに【見習い屯田兵】のジョブ効果なんですが、なんと・・・」
「ゴクリ」
「フィールドに畑を作ることが出来るんですよ!」
「フィールドに畑って・・・マジか!?残念性能どころかめっちゃスゴイやん!ジョブ名的に納得の効果やわ。しかもフィールドの農地化って俺達含めた上位層による農地独占問題がパァ〜っと解決出来るんとちゃう?」
残念なジョブとの事前情報から、意味不明な性能なのかと思っていたのだが、フィールド開墾というヤバすぎる性能に驚きを隠せない。
「性能だけならソーイチさんの言う通り、農地を増やし続けることで全プレイヤーに【地主系】称号を取得させることも可能だと思います〜。ただ、現実には問題も沢山あって〜」
「問題?あぁ、フィールドの土地を開墾したら魔物たちに荒らされるかもってことか?」
「それもありますね〜。ただ一番の問題はフィールドの開墾には、付近の町の許可がないとダメなんですよ〜」
「あ、MJOって土地の権利云々ってしっかりしてるんやね・・・」
確かにMJOの世界はリアル志向ではあるが、土地の権利関係までしっかりしてるとは驚きである。
「もし許可なくフィールドを開墾した場合、初回は厳重注意の上で開墾した農地の没収。2度目からは罪人となってしまうそうですよ〜」
「うわぁ〜。せっかくの能力が犯罪者への入り口って罠すぎるやろ」
「罠ですよね〜。ちなみにリーダーが冒険者ギルドに聞き出した【見習い屯田兵】などのフィールドに影響を及ぼすタイプのジョブって、ギルドで依頼が出て、初めて能力を活かす事が出来るそうなんですよ〜」
「なるほど・・・。確かに凄いけど勿体無いって評価もわかるわな。ところで残念ジョブってもう1つ残ってるんやろ?そっちの方も気になるし教えてくれへん?」
評価の難しいジョブだというのは理解できたので、更なる残念なジョブについて質問する。
「はい。2つ目が【木こり】【戦闘系】【生産系】の3つの見習い卒業で解放される【見習い開拓者】ですね〜。こちらもフィールドに拠点作成という驚きの性能ですが、やっぱり許可制です〜」
「マジか。拠点作成って事は、自分の町も作れそうやのに、こっちも許可制なんか・・・」
「クラン独自に色を出した町とか憧れるんですけどね〜。世知辛いです〜」
「辛いな。でも実際に開墾・開拓を自由にしたら、ゲームのジャンルが復興系からプレイヤー同士の陣取り合戦メインに変わりそうやし、制限は仕方ないか」
「確かにこの世界を救いにきたのに、住民そっちのけで土地争いしそうですしね〜」
本当にロマンたっぷりなジョブではあるんだが、権利関係といい、ゲームジャンルへの影響といい、色んな意味で凄いけど・・・という評価に落ち着いてしまう。
「はぁ〜。これ系のジョブって、他の町解放の際に前線基地とか中継村を作る時に、冒険者ギルドとかから依頼が出るんやろうなぁ」
「ですね〜。その時は大規模クエストが出るでしょうし、初めての開拓系のワールドアナウンスは依頼受注者の連名になりそうです〜」
「うわぁ、せっかく一番乗りしたのに、PP獲得は足並み揃えなあかんって、ユサタク凹んでたんとちゃう?」
「ソーイチさんの予想通り、話を聞いたリーダーは膝から崩れ落ちてましたね〜」
「やっぱりか。イメージ通りすぎて逆にビックリや」
「ははは、流石親友ですね〜。・・・ってあら〜」
「うん?どないしたん?」
ユサタクの残念話にオチが付いたタイミングで、突如何かに気付く素振りをみせるフワフワ。
「すいません、スキル講習用にセットしてたアラームが鳴りまして〜」
「もうそんな時間か。遅刻はまずいし、俺に構わずすぐに向かった方がええで」
「お気遣いありがとうございます〜。では行きます〜。ただソーイチさんもゲームだけじゃなくて、現実でもご飯食べないとダメですよ〜」
「ははは、わかってるって。じゃあ頑張っておいでや〜」
「は〜い」
こうして、フワフワはスキル講習の為、話を切り上げ転移していった。
俺はその姿を見守った後、残りのSTとMPの全てを使い畑仕事と要約のコピーの為、アーツを放ち続ける。
全てのMP・STを使い切った頃には、いくつかのレベル・スキルが上がり、俺の中で確かな満足感を覚えた。
「さてと、ひと段落ついたし朝ごはん食べに戻るかね・・・ってなんや!?」
キリもいいしログアウトをしよう、そう思ったタイミングで突如、
『『渡り人の皆様、念話が届いてますでしょうか?私はノアの町の代表をしておりますセイラと申します』』
なんと、この町の代表からのコールが届いたのだった。
tips
【大食い】
獲得条件
プレイヤー作の料理を100種類食べる
効果
セット時、満腹度を200%まで貯める事ができる。ただし、その後称号を付け替えた場合、100%を超える満腹度は切り捨てになる。
余談:本来ならば満腹度が解放される4月3日以降に発見される予定であったのだが、予想以上の農業の発展による材料の供給やレパートリーの充実、そしてモチョの食への執念によって想定よりかなり早く発見された。
次回は7月26日(土)午前6時に更新予定です。
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