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133.朝飯前の一仕事とフワフワの新境地

「ふわぁ〜、おはようございます!」

現在は4月2日の午前10時30分、MJOサービス開始から24時間を少し過ぎたタイミングでパチリと目を覚ます。俺は目がシパシパした状態であったが、起きるという意思表示の為に一人で元気良く目覚めの言葉を声に出す。


「結構昼寝した上で、快眠ポッドまで使ったのに6時間も寝れるとは・・・。昨日はゲームしかしてないのに、俺の身体って結構疲れてたんやな」

軽く肩を回しながら洗面台へと歩き、洗顔と歯磨きをササっと済ませる。通常ならば次の行動はヨガと朝食というのが俺の朝ルーティンなのだが、MJOにハマっている俺は後回しにして早速ログインする。

【陽の月2週目、火の日】【4月2日10:52】

現実からゲームへと切り替わる直前、視界が白く塗りつぶされ目の前にゲームと現実の日付が一瞬浮かび上がった。

「うぉっ、びっくりした!これってシステム変更したやつか」


寝る前にユサタクからのアドバイスを参考に設定した暦の表示設定、その結果の仰々しさに思わず声が出る。ただ、そんなシステム表示なんかよりも驚くべき光景が小屋の外で繰り広げられていた。


カシャッ、カシャッ ジュ〜ジュ〜 ブゥン、ブゥン!

「ふわぁあああああ〜〜〜〜!!」


なんと普段はおっとり&ふんわりのTHEお姉さんというキャラのフワフワが、畑脇にコンロのような魔道具を置き、そこで大きな声をあげ勢いよく中華鍋を振るっていたのだ。

俺はあまりの光景に内心ビクビクしながら、震えた声で呼びかける。


「フ、フワフワちゃん?」

「ふわぁああああ!って、あらソーイチさん、こんにちはです〜」


「こ、こんにちは・・・。それよりフワフワはなんで鬼気迫る感じで鍋振るってるん?」

「そうですね〜。もう少しでお料理が完成しますので、理由をお話しするのは完成後で良いですか〜?」


「ああ、確かに焦げるもんな。作業中に話しかけてすまんかった」

「いえいえ〜。気にしないでください」


そう言うと、再びフワフワは鍋振りに意識を戻す。俺はカシャカシャと具材を混ぜる音をBGMに、ログアウト中に溜まっていたノア・タイムスを2日分流し読みする。読了後は1枚の紙にまとめた上でアーツを放ちコピーしていく。


(うん、1日空いたけど、この要約を合併号的なノリで売れんかな?アマネに後で聞くか)

そんな事を考えていると、


「お待たせしました〜。ソーイチさん、出来立てのお料理の試食いかがですか?」


作業開始から数分後、美味しそうな香りを身に纏ったフワフワがテーブルに2皿分の料理を置きながら、一緒に食べないかと呼びかけてきた。


「おお、美味そうな肉野菜炒めやな!喜んで味見させて貰うわ」

「どうぞ、召し上がれです〜」


香りのインパクトに負けた俺は一瞬で作業を放り出し着席、すぐさま出来立てホヤホヤの料理をガツガツと食べ進める。


「美味ッ!?塩コショウだけの味付けやのに、肉の旨味が野菜をコーティングしてマジで堪らんわ!」

「ありがとうございます〜。実は料理には【ブラウンベアの熟成肉】というレアドロップを使ってるんですよ〜」

「ブラウンベア・・・。って確かフィールドの奥の方に出るやつちゃうん?それのレアドロップとかめっちゃ高いんちゃう?」


「まあ少しお高いですね〜。でも今のトップ層のメイン狩場がそこなので供給はそこそこあるんですよ〜。しかも熟成肉で作った料理は経験値アップ効果も良いので簡単な調理でも店に出せば、あっという間に元が取れちゃうんですよ〜」

そう言って作成した料理の効果が書かれたメモを俺に差し出す。


【ブラウンベアの熟成肉野菜炒め】

満腹度50%回復 ST25回復 食後3時間、獲得経験値20%上昇


「効果ヤバいな!確か前に食ったポトフが経験値10%アップ1時間やったのに、それより簡単に作れそうな肉野菜炒めが20%アップの3時間て・・・。そりゃ攻略組は買うわな」

「ええ〜。それに料理人系のジョブは不人気なので、今は店頭に出せば完売って感じなんですよ〜」

「モグモグ。なるほどなぁ」


世間話を肴に、レア肉を贅沢に使った肉野菜炒めをもぐもぐと食べる。その後も料理人界隈の雑談を交えつつ食べ進めていると、気がつくと目の前の料理を全て食べ尽くしていた。俺はもう少し食べたかったと名残惜しみつつも水を1杯飲み干し、フワフワへ感謝の気持ちを伝える。


「ふぅ、ご馳走様。めっちゃ美味しかった!ほんまにありがとうな」

「いえいえ、お粗末さまです〜」


「それにしても朝飯抜きでMJOにログインしたのに、まさかゲームの方で美味しいご飯を食べる事になるとはビックリや。もう朝めしは抜きにしてプレイし続けても良いかなと思ってしまうわ」


「あっ、いけませんよ〜。こっちで食べたからって現実を疎かにすると、すぐに体調崩してしまします〜。だからスタミナ消費とかの作業が終わったら、すぐにログアウトして食べちゃいましょうね〜。それと・・・」


「じょ、じょ〜だん、もちろん朝メシはこの後食べるって・・・。そ、それよりフワフワが気合い入れて中華鍋振ってた理由、そろそろ聞かせてくれへんかな?」

まるで田舎のオカンのような小言が飛び出そうな気配を感じた俺は、慌てて話を切り上げ軌道修正を行う。


「実は教会のシスターから、前から私がなりたかったジョブへの道筋を教えてもらったんですよ」

「へぇ。その条件の中に【見習い料理人】のレベル上げが必要って訳なんやな」


「そうなんですよ〜。ちなみに他にも条件がありまして、付与と僧侶の見習い卒業と教会での奉仕活動も必要だそうです」

「マジか!3職の見習い卒業だけでも大変やのに、奉仕活動までか。そりゃ大変やな」


「まあ、ジョブの方は料理人以外クリア済みですし、奉仕活動も日頃から行なっている作物と聖水の物々交換が加算されてるようなので大丈夫なんですよ〜」

「おお〜。そりゃええな」


「ええ〜。これもソーイチさんが教会との物々交換のルートを見つけてくれたおかげです〜。本当に感謝ですよ〜」

そう言って頭を下げるフワフワ。


「流れでそうなっただけやし気にせんといて。それより物々交換でOKなんやったら、俺も頑張ればフワフワと同じジョブになれるんかな?」

「どうでしょう?今回私がジョブの紹介をされたのはメインジョブが付与魔術師だからかもしれません。それにソーイチさんは男性ですからね〜」


「えっ、男あかんの?性別限定ジョブとか、一体フワフワはどんなジョブになるつもりなん?」

「それはですね〜・・」


フワフワはそこで深呼吸を1つ入れた後、

「【見習い聖女】です〜」

と、少しはにかんだ表情でそのジョブ名を告げた。


次回は7月19日(土)午前6時に更新予定です。


ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!

今後とも本作をよろしくお願いします。

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