132.はじめての師匠と弟子
Dランク到達と【師弟システム】。睡眠時間を犠牲にして手に入れた成果は、とてつもなくヤバい代物であった。
俺はランクアップの手続きを終えてギルドを出ると、すぐにクランコールを開き、諸々の情報を投下していく。すると、
『【師弟システム】か。またどデカい爆弾を見つけてきたな』
『マジでリーダーの言う通りっすよ。これ使えばクラン内の生産ジョブのレベリングから、スキル育成の効率化まで思いのままっすね』
と、先程別れたばかりのユサタクとセキライが新情報に食いついてきた。
『そうそう。で、せっかく新システム解放されたんやし使ってみたいんやけど、誰かいい人おるか?』
『そうだな・・・、この後ソーイチはログアウトするし師匠枠は適当でいいよな』
『せやな。誰が師匠になっても経験値的に貢献できへんし』
『オーケー、じゃあ師匠は適当に選ぶとして、ログアウト中でもソーイチの獲得経験値に影響のある弟子枠は吟味したいな』
『う〜ん、弟子の稼ぎ次第で、俺がゲット出来る経験値は全然ちゃうもんな。誰がええやろ?』
『それならフワフワさんはどうっすか?ゲーム内で1時間後にINする予定ですし』
『俺は別にかまへんけど、なんでログアウト中のフワフワなん?どうせやったら今居てるメンバーの方がよくない?』
今ログインしていないフワフワが候補に上がり、なぜなのかセキライに尋ねる。
『いやいや。フワフワさんをオススメする理由が2つもあるっす』
『2つもか。一体どんな理由なん?』
『まず1つ目はフワフワさんは現在すやすやタイムでログアウトをしてるっす。逆に言えば再度ログインした場合はしばらくゲームし続けるってことになるっす』
『あぁ。確かにプレイ時間が増えれば増えるほど、経験値の稼ぎも大きい。すでに睡眠休憩をとったフワフワを選ぶ価値があるってことだな』
『そのと〜りっす。で、2つ目は、ジョブの被りが多いって所っす』
『あぁ。鈍い俺にも理解できたわ。要するに【付与魔術師】と【農家】の2つ分の経験値が貰えてお得って訳やな』
『はい!そんな感じなんでフワフワさんのログインを待って弟子にするのが良いと思うんすよね』
セキライの解説は理にかなっており、俺とユサタクは納得する事が出来た。そのお礼ではないが、
『なるほどなぁ。じゃあ弟子枠はセキライの案を採用やな。で、そんなセキライ君には映えある俺の最初の師匠をプレゼントしようと思うんだが如何かね?』
『うぇええ!!俺っすか!?』
と、俺の初師匠の座をプレゼントする事に決めた。
『さっきも話に出たけど、師匠枠はぶっちゃけ誰でもええやん?でも初の師弟の契りを結んだ時、ワールドアナウンス流れる可能性あると思わんか?』
『ま、まあ今まで通りの感じだと流れるっすね・・・」
『じゃあ他のプレイヤーに抜けがけされる前に、手早く師弟関係結べそうなんは、今コール内に反応してるセキライとユサタクくらいしか居らんのよ』
『それはそうかもっすけどリーダーでもいいんじゃ・・・』
『もう諦めろセキライ。天下のソーイチ様がご所望なんだ。謹んで師匠枠になってやってくれ』
『あぁ〜!真面目ぶってるけど、リーダー絶対押し付けてるっすよね!?笑い噛み殺してるっすよね!!』
『そ、そんなことはないぞ?』
『コラコラ、ごちゃごちゃ言ってないで早くするで』
『わ、わかったっす』
こうして俺の初めての師匠はセキライが師匠に決まった。俺は速攻でホームに転移して合流し、苦り切った顔つきのセキライを師匠として3日間の契約を結ぶ。
ープレイヤーで初めて、ソーイチ様とセキライ様の間で師弟関係が結ばれましたー
と予想通り、ワールドアナウンスが鳴り響いた。
「うぅ〜。後でゼロやみんなから、絶対問い詰められるやつっすよ・・・」
「そん時は胸張って『俺が師匠です』って言い張ればええねん」
「そうっすかね・・・」
「そうそう。と言う訳でフワフワがINするまで他の用事を済ませてきますよ、お師匠様?」
「やっぱり揶揄ってるじゃないっすか!」
セキライの叫びを背中に受けながら、ホームから転移で立ち去った。
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「さて、時間もあるし予定通り先に依頼報告に行くか」
弟子予定のフワフワがログインするまでの間の暇つぶしも兼ねて、魔力電池充電の依頼の達成報告とランクアップの為、付与魔術師ギルドへと足を運ぶ。そして、
「おめでとうございます。依頼達成によりソーイチさんの戦闘職ランクがFランクに昇格いたしました」
と、この日2度目となるランクアップを迎えた。
「おお〜。座って電池充電してただけやから実感は薄いけど、やっぱりランクアップは嬉しいもんやな」
「ふふふ。確かにソーイチさんは討伐クエストを1つもこなしてないですし、戦闘ギルドのランクアップはしっくり来ないかもですね」
俺の呟きに対し、微笑みながら俺の特異性について頷く受付嬢。
「ところで戦闘職ランクがFランクに上がったけど、何かやれる事増えたりするん?」
「そうですね・・・。今までご紹介していなかったクエストが新たに貼り出されたり、各ギルドで受講可能なスキル講習は増えたりしますね」
「スキル講習!確かにソレは大事やな。ここでは新しく何か受けれるん?」
「ええ〜と、当ギルドではFランク昇格によって受講できるのは【魔力付与】だったんですが、魔力電池の需要拡大により誰でも受講可能になったんですよね・・・。なので申し訳ないのですが、既にスキルを習得済みのソーイチさんには、新しく受講できる講習はないんですね」
「あぁ。前そんな事説明された記憶あるな・・・。その恩恵受けてスキル覚えた俺には、なんも言われへんな」
今回のランクアップは特にメリットはなさそうだ。俺は落胆する心情を隠しながらも、折角だからと新しく増えたクエストを眺めていく。
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【魔力電池の充電】
1,000MP分の魔力電池を満タンまで充電(魔力電池は貸し出し)
【必要技能】魔力付与
【報酬】 6000ゴール 300BGP 150AGP
【期限】 依頼受注後より3週間
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新しく増えた魔力電池の充電クエストを受注、その後ささっと雑談を切り上げてホームへと転移していった。
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「お、ソーイチ。ナイスタイミングだな」
「あん?どうしたってフワフワINしてたんか」
「ええ、何やら面白そうなシステムが解放されたと耳にしまして〜」
ホームにはユサタク以外に、俺の弟子候補であるフワフワが畑でスタンバイしていた。
「話はユサタクから聞いてるん?」
「ええ。【師弟システム】でしたっけ?面白そうな機能があるそうですね〜」
「ああ。色々とMJO内で革命が起きそうなほどヤバいやろ」
「確かにそうだな。でだ、ソーイチの弟子第1号を誰にしようかと話し合った結果・・・」
「ジョブが2つ被っているフワフワに白羽の矢がたったって訳や」
「なるほど、そのおかげで私がソーイチさんの初めての弟子枠を担えたという訳なんですね」
〜」
「そうそう。で、弟子になってくれるか?」
「もちろん。喜んで。」
「よかった!じゃあ早速契約結ぶで!」
こうして俺とフワフワは3日間だけの師弟関係となり、師匠セキライ・弟子フワフワの文字がステータス欄に記された。
「では、これからソーイチさんに経験値を貢ぐ為、畑仕事してきますね〜」
「ちょい待ち!貢ぐは人聞き悪いから辞めなさい」
「ふふふ。確かにそうですね〜」
俺の情けない突っ込みが響いたのか、フワフワにしては大きく笑いながら別の農地へと転移していった。
「なんか、最後の小悪魔チックなフワフワで少し疲れたわ」
「ははは。普段はクランのお姉さん役が多いがまだまだ若いしな。年上のソーイチにはつい甘えちゃうんだろうな」
「年の話はやめてくれや・・・。それよりも、これで今日のノルマは完全にクリアやな。思い残しもないし最低5時間はMJOには戻らんけど、なんか俺に伝え忘れとかないよな」
「そうだな・・・。前言ってた瞑想レベルアップの実験はリアルで15時半頃にやるつもりだし、それまでにはINしてくれってくらいだな」
「オーケー。ちなみにゲーム内の暦ではいつかわかる?間違えそうで怖いんやけど」
「それならシステム設定でログイン時や時計確認時に現実とゲーム両方の暦を表示させる方法あるぞ」
「マジで?・・・ホンマにあるな。じゃあ全部ONにするわ。教えてくれてありがとうな」
「気にするな。それより湯冷めするし早く寝た方が良いぞ」
「それもそうやな。じゃあ俺はもう寝る!みんな、おやすみ」
俺はユサタクに挨拶しログアウト、そのまま快眠ポッドへダイブし眠りについたのだった。
これにて正真正銘、ソーイチのゲームプレイ1日目が終了です。
次回は7月5日(土)午前6時に更新予定です。
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今後とも本作をよろしくお願いします。